相続税の節税は亡くなる前でないとできないと一般的には言われています。
しかし、相続税を年間100件以上扱っている私(税理士)からすると決してそんなことはありません。
もちろん、相続税の節税は生前に長い期間かけてやる方法が本筋です。
ただし、亡くなった後では相続税の節税が一切できないというわけではないのです。
ちゃんと知識とノウハウのある税理士に頼めば亡くなった後にできる相続税の節税を提案してくれるのです。
今回は亡くなった後でもできる相続税の節税について説明します。
なお、財産評価基本通達に定める土地評価等の減額手法については税理士が当然実施すべき事柄ですので下記には含めていません。
分筆相続
複数の人が一つの土地を相続する場合、共有相続と分筆相続の2つの方法があります。
実務をやっていて一番多い方法は一つの土地を一人の人が相続する単有相続ですが、単有相続できない事案も中にはあります。
その場合、共有相続にするか、分筆相続にするかによって相続税の金額が大きく異なることがあるのです。
様々なケースを見てきましたが、下記のような理由から分筆相続としたほうが相続税を抑えられるケースが多いです。
・側方路線影響加算がなくなる
・旗竿地評価が可能となる
・市街地農地の宅地造成費が増額される
・都市計画道路予定地への影響
詳細は別ページで説明します。
なお、分筆相続にも注意点があります。
それは、誤った分筆をしてしまうと不合理分割と認定される可能性があるためです。不合理分割については、不合理分割を徹底解説をご参照ください。
また、分筆相続はスケジュール管理が重要です。分筆線を引くには測量が必要となり、隣地との境界確定など時間を要するためです。
通達以外の評価
不動産の相続税の評価は、財産評価基本通達に基づいて計算されます。
ただし、土地によっては財産評価基本通達によらないほうがよりその土地の評価を適切に反映するということもありえます。
そのような場合には財産評価基本通達以外の評価を税理士として提案すべきなのです。
例えば、不動産鑑定士による鑑定評価や売却価額を採用する方法です。
あまり相続税申告に慣れていない税理士は通達以外の評価を採用することを嫌がります。私たちはお客様の要望があり、通達以外の評価に合理性がある場合には通達に縛られることなく評価方法を選択しています。
詳細は別ページで説明します。
小規模宅地等の特例
小規模宅地等の特例は、税理士が相続税申告を作成するならば当然適用して申告しなければならない特例ですが、その適用方法を誤っているケースが散見されています。
相続税申告に慣れていない税理士は、相続税の課税価格を最低にすることしか考えていません。
しかし、お客様のニーズは相続税の課税価格ではなく相続税の納税額を一番低くしてもらいたいのです。
例えば、配偶者と子が両方小規模宅地等の特例が適用可能な場合に、配偶者が適用できる土地のほうが単価も高く特例適用額が大きいとそれを選択してしまいがちなのですが、配偶者には配偶者軽減という税額控除が待っていますので、特例適用額が小さくなったとしても子の取得した土地を特例適用対象とすべきなのです。
また、それ以外にも2割加算の対象となり人の取得した土地を優先するなど、相続税額を一番小さくするためには様々な角度から検討が必要ですが、それをできていない税理士も多いというのが実情でしょう。
詳細は別ページで説明します。
複数の証券市場の検討
上場株式については、下記のいずれか低い株価を採用することができます。
・相続開始日の終値
・相続開始日の月の終値の平均額
・相続開始日の前月の終値の平均額
・相続開始日の前々月の終値の平均額
上記の終値は、その上場株式が上場している証券市場のうち一番低いものを選択できるのですが、東証のみで検討している場合が多いです。
弊社では、その上場会社が上場しているすべての証券市場の上記4つの終値を調べてそこから最安な終値を選択して評価しています。
1点注意点がありまして、相続開始日の終値が存在しない証券市場の終値は採用できないという点です。
死亡退職金の支給
被相続人が同族会社の現役の役員等であった場合に、死亡退職金を支給することとなると思いますが、この支給額も簡単には決められません。
死亡退職金は、受取人にて相続税が課税されます。(500万円×法定相続人の数の非課税枠はあり)
また、死亡退職金を支給した会社の株価評価において、死亡退職金を純資産価額からマイナスできます。
さらに、死亡退職金を支給した会社はその退職金を費用に計上できます。(過大な部分は除く)
上記のことから、死亡退職金非課税枠(相続税)、同族会社の株価(相続税)、同族会社の法人税の3つの観点からシミュレーションして、税負担が一番少ない死亡退職金額を提案することが望まれます。
配当還元方式となるような分割提案
親族が多いオーナー会社の株主が死亡したときなどは、その同族会社の株式の遺産分割の割合を調整すると配当還元方式を採用できる可能性があります。
配当還元方式は原則的評価(類似業種比準方式、純資産価額方式)に比べ株価が1/10やそれ以下になることも多々あります。
このような提案も忘れずにしなければなりません。
詳細は別ページで説明します。
純資産価額方式(仮決算・直後期末)
同族会社の株式が相続財産にある場合において、その株式の純資産価額を評価するときは、一般的には直前期末の数値を採用して評価することが多いです。
しかし、死亡日によっては、仮決算(死亡日で決算を組む)や直後期末(死亡日直後の期末決算の数値を使用)を採用する方法も検討しなければなりません。弊社では、必ず、どの決算数値を使えば相続税が低くなるかを検討した上で純資産価額を評価します。
生命保険契約に関する権利の取得者
被相続人が保険料を負担していて被相続人以外が被保険者の保険契約は、生命保険契約に関する権利と呼ばれ、死亡日の解約返戻金額で相続財産に計上する必要があります。
この生命保険契約に関する権利で契約者が被相続人以外の契約については、遺産分割の余地がなくその契約者の固有財産となるのですが、契約者が被相続人の場合には、遺産分割の対象となり、その生命保険契約を誰が相続するかによってその後の税金が変わってきます。
被保険者が相続すれば被保険者の死亡時に相続税、満期のときに所得税(一時所得)の対象となり、被保険者以外の相続人が相続すれば、受取人によっては贈与税や所得税の対象となります。
契約内容や金額に応じて誰が相続するかを将来を見据えて検討し、お客様に最有利となるような提案をしなければなりません。
二次相続を踏まえた分割提案
相続専門の税理士であれば当然の提案ですが、被相続人の配偶者が相続人にいる場合には、その配偶者死亡時(二次相続)の相続税も試算して、一次相続と二次相続の相続税の合計が一番抑えられる割合で遺産分割を提案すべきです。
弊社では、二次相続の相続税試算を二次相続対策後にて試算するため、より有利な方法を提案できています。
詳細は別ページで説明します。
相続財産を譲渡する場合の留意点
相続により取得した財産を売却する場合が多々あります。
売却することが決まっているときには、その遺産分割の方法に相当な神経を使います。
例えば上場株式を売却することが決まっているケースでは、それぞれの取得費を確認し、譲渡益が出ている銘柄は配偶者に寄せません。
なぜかというと配偶者は配偶者控除により相続税が出ないことが多いため譲渡所得の計算で適用できる相続税の取得費加算を最大限適用できないためです。
また、不動産を売却する場合には、各種特例(空き家特例、居住用財産の特例等)を最大限活用するため特例が適用できる人に相続してもらって、代償金を他の相続人に支払う方法を提案したりする必要があります。
それ以外にも取得加算を最大限活用するために債務の負担者を決めたり、総合課税となる金地金を売却するときに複数年に分けて売却してもらったりと税理士が提案する場面は非常に多いのです。
詳細は別ページで説明します。
数次相続では配偶者控除を適用しない?
数次相続とは一次相続の遺産分割前に二次相続が開始してしまうことです。
このときに、一次相続の配偶者取得割合は自由に決められますので、税理士にて一次相続と二次相続の合計の相続税が一番少なくなる割合を算定する必要があります。
ここで注意が必要なのが、一次相続において配偶者控除を適用しないほうが、一次相続と二次相続のトータルの相続税を抑えられる可能性があるということです。
詳しくは、相続税の配偶者控除(配偶者の税額軽減)で税額を抑える方法【注意点も合わせて解説】を参照してください。
その他
上記以外にも下記のような亡くなった後にでもできる節税は無数にあります。
・配偶者居住権の活用
・直系尊属には敢えて相続放棄をしてもらう
・障害者、未成年者には必ず財産を取得させる
・未成年者は成人になってから遺産分割をする
・遺産分割割合の調整(2桁~10桁の切り捨て、切り上げが可能なため)
いままで説明したように亡くなった後でも相続税の節税はいくらでも可能です。
亡くなった後の相続税等の節税を漏れなく提案してもらえる税理士を選びましょう!
相続税の申告手続き、トゥモローズにお任せください
相続税の手続きは慣れない作業が多く、日々の仕事や家事をこなしながら進めるのはとても大変な手続きです。
また、適切な申告をしないと、後の税務調査で本来払わなくても良い税金を支払うことにもなります。
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