食品産業新聞社
(画像=食品産業新聞社)

今期ここまでのマーガリン市場は、原料高騰による価格改定の影響を受け、購入数量(総務省・家計調査、2022年1月~8月累計)は8.1%減まで落ち込んだものの、支出金額は前年比1.4%減に留まった。

この一年で4回値上げしたパーム油の高騰は落ち着いてきたが、直近では為替も円安に動き、実質的に原料調達コストが上昇している。原油の価格高騰により工場でのエネルギーコストや生産コストも上がり、採算面が厳しい状況だ。ウクライナ情勢により、供給面の不安もある。

家庭用マーガリンは、インテージSRI+(2022年4月~9月)によると、容量ベースで前年比12%減だった。カテゴリ別で見ると、プレーン12%減、ヘルシータイプ12%減、グルメタイプ(バター風味・バター入り)10%減、ケーキ用が25%減といずれも苦戦した。要因として、コロナ禍による行動制限が解除され家庭内需要が減ったこと、マーガリン自体の値上げ、消費者の生活防衛意識の上昇が考えられる。

コンパウンドマーガリン(グルメタイプ)については、生乳の供給量が戻ってきた一方で、牛乳の需要が前年を下回ったのを背景に、国産バターや脱脂粉乳の生産量が増え、バターが店頭に供給されるようになった。そのため、バターの代替品として需要があったコンパウンドマーガリンが逆風になっている。ケーキ用は2019年比でも下回っており、家庭内での製菓需要が以前ほど見込めない状況だ。

業務用マーガリンでは、原料高騰により安価な製品に流れていく一方で、少量でパンのボリュームアップに寄与する、あるいは賞味期限延長に貢献する高付加価値品が伸長した。

機能性油脂については、コスト抑制に貢献する製品と、品質を向上させる製品にニーズの二極化が見られた。品質を向上させる製品としては、パンの老化を抑制する製パン用機能性油脂や、プラントベース(PB)フードに動物性のうま味を付与するPBラードなどが好評を得ている。一方で、コストを下げるために汎用品に替える製菓・製パンメーカーも出てきている。

現在、各社は植物性のバターやチーズ、ホイップクリーム、大豆ミート、ラードなどを発売している。PB市場の規模はまだ小さいものの、「PB製品は今後市場で確立されるだろう」という期待の声も複数聞かれる。なお、大豆ミート、植物性ミルクに続き、パンや菓子が市場で台頭すると推測するメーカーもある。

別のメーカーは、「マーガリン市場縮小の挽回、およびPB市場のさらなる拡大」を課題に挙げ、近年、PBの乳製品が国内で増え、PB市場も伸長していることから、PBに関する情報発信の必要性を感じているという。

〈大豆油糧日報2022年11月17日付〉