ハウス食品グループは、ハウス食品静岡工場に都市ガス等を利用して発電し、その排熱を活用する大型のガスコージェネレーションシステムを設置し、発電した電力を国内のグループ8社17拠点へ融通する。
JFEエンジニアリングが提供する「多拠点一括エネルギーネットワークサービス」(サービス名=JFE-METS)を使って実施するもの。同サービスでは国内最多拠点への電力融通となる。2024年4月から契約期間15年で運用を開始する。
今回、ハウス食品グループが導入するのは2019年度省エネ大賞を受賞したJFEエンジニアリングの電力融通サービス「JFE-METS」だ。発電拠点となるハウス食品静岡工場で発電した余剰電力に、JFEエンジニアリングが保有する電力を加え、送電ネットワークを活用して各拠点に電力を供給する。対象拠点で使用する電力の100%をまかなえる見込み。
ハウス食品グループ本社コーポレートコミュニケーション本部CSR部環境推進課長の平田真介氏は、「ハウス食品グループの中で最大規模の生産拠点となる静岡工場に、大型のガスコージェネレーションシステムを置き、送電ロスを抑え、効率的に運用していく。システムは平日の昼間のみ稼働させる。発電に際して発生する熱は、蒸気や温水にして工場内で活用する」と語る。同システムは幅28m、奥行38m、高さ15mで静岡工場屋内に設置する予定。最大5500キロワット、1万2000世帯相当の発電能力を持つ。
これにより、発電拠点と融通先のグループ8社17拠点でCO2排出量約12%、エネルギー使用量約17%削減(各2020年度比)、CO2削減量(調整後)は年間約4200tCO2、エネルギー削減量(原油換算)は年間約1000キロリットルを見込む。
「JFE-METS」導入の経緯について平田氏は、「拠点それぞれで電力会社と契約しているなか、このサービスが15年の長期契約を前提としているため、各社とも経営で検討する議題となった。交渉は難航し、融通先の説得に50回以上の交渉を要した」とする。振り返れば2020年当時、菅首相の2050年カーボンニュートラル宣言で潮目が変わり、グループの中期経営計画にCO2削減を織り込むことが理解されはじめてから徐々に変化が出てきた。
その後、ウクライナ危機によるガスや資材の高騰でサービス導入のコストメリットは当初想定の3分の1程度まで減ったが、電力逼迫リスクが明らかになったことにより、各社で電力の長期安定供給へのニーズが高まったという。対象となり得る拠点は融通元を含む国内の生産工場、本社、研究所など25カ所あり、このうち現時点でガスコージェネレーションシステムや低CO2メニュー、カーボンフリーメニューの導入等を行っていない17拠点を選定したという。
この取り組みについて、ハウス食品グループ本社コーポレートコミュニケーション本部CSR部環境企画課長の出口昌義氏は、「環境負荷低減に向けて、長期的な視点で行うもの」と強調。ハウス食品グループでは、第7次中期計画(22年3月期~24年3月期)の重要テーマとして廃棄物削減とともにCO2削減を定めており、2050年カーボンニュートラル(Scope1、2)の目標に向け、グループ全体でCO2削減の取り組みを加速させていくという。Scope3では、レトルトパウチ製品のレンジ対応を進め、2023年3月期中に当初予定していた切り替えを完了する予定だ。