ニップンではパスタ以外の取り組みとして、強みのトレー入り商品と共に、米飯類の強化を進めている。
2020年に稼働した伊勢崎工場冷凍食品第2工場(群馬県伊勢崎市)の稼働から商品の充実をより進めて、売上は大幅に伸長したという。今秋には「よくばり」シリーズで新CMの放映を予定している。冷凍食品事業本部冷食営業部の篠山康司部長に聞いた。
――トレー入り商品や、米飯の動向は。
当社の場合、家庭用の商品の大半がトレー入り。コロナ禍で「孤食化」が進み、家庭内で別々のモノを食べることは増えてきた。コロナ以前でも共働き世帯は家庭内で違う食事を食べることはあったが、それをコロナは加速させたと思う。そのため、トレー入り商品へのニーズも高まっているように感じている。
2021年度の推移としては、個食米飯は2020年度比で2倍、ワンプレートは50%以上伸長した。2022年度も勢いは止まらず、4~8月までの推移で、個食米飯は50%近く伸びワンプレート商品は2ケタ増となっている。
伸長の要因としては、2020年度はコロナで急激に伸びた需要に対応するために、既存商品の安定供給に力を注いだため、新商品をあまり投入できなかった。一部商品は休売せざるを得ないという状況でもあった。しかし、2021年度は伊勢崎の新工場の稼働もあり、商品数をより充実させられたため大きく伸長した。2022年度も積極的に商品を投入しており、さらに伸長させられればと思う。
――今秋発売の新商品の配荷状況は。
個食米飯やワンプレート商品は、「いまどきごはん」シリーズと、「よくばり」シリーズを展開している。「いまどきごはん」シリーズは、流行のメニューを家庭で気軽に食べてもらうことをコンセプトにしており、新商品は「参鶏湯」と「2種盛りキーマ&トマトカレー」の2品を追加した。どちらも順調に推移している。
「参鶏湯」は、以前にも販売していたが、コロナ禍に需要の急増で供給が不安定になり、一時的に休売した。しかし、復活させてほしいという声が多かったため、リニューアルして今回の発売となった。発売からまだ1カ月ほどだが計画よりも良い動きを見せている。
――「よくばり」シリーズは。
これまで洋風の「よくばりプレート」シリーズと、和風の「よくばり御膳」シリーズを展開してきた。今回新たに、男性や若年層をターゲットにした、がっつりメニューの「よくばりメシ」シリーズを追加し、「トルコライス」と「四川風中華プレート」、「スタミナ肉コンボ」の3品を投入した。
この3品は、「魅惑のプレート」シリーズとして販売してきたが、メニューを継承したまま「よくばり」シリーズの仲間としてリニューアルし販売を始めた。トレーもプラスチックから紙へと変更している。また、シリーズの中で最も売り上げの良い「よくばり御膳」シリーズからは「五穀梅ご飯と彩り野菜とバジルチキン」を発売した。このシリーズでは、それぞれ異なるターゲットを対象としており、幅広く支持を得られればと思う。
米飯の主力商品はやはり袋入りの商品だ。当社の場合、袋入りの商品ではできない具材の多い商品や、トレー入りという部分で勝負できればと思う。また、参鶏湯のような袋入りではできないメニューも差別化になると思う。他社でもトレー入りの商品を発売することは増えており、それが市場の活性に繋がれば売場にとってもプラスだと思う。もっと販売スペースを割いてもらえるよう取り組みたい。
――期待の新商品は。
一番期待している商品は、選ぶと難しいが、「五穀梅ご飯と彩り野菜とバジルチキン」だ。「よくばり御膳」シリーズはシニア層からの支持が厚いため、この商品を挙げた。コロナ禍以降、これまでの利用の中心だった女性だけでなく、男性や若年層の利用が増えた。「よくばりメシ」は男性や若年層をメインターゲットとしており、このシリーズを通じて幅広い方に訴求したいと思う。
――飲食店などで冷凍品の販売が増えている。どう見ているか。
個人的には売場に来てもらえるため、良いことだと考えている。外食企業の冷凍食品の発売に加え、高単価な商品を販売する百貨店も出てきた。こうした商品は気分やシチュエーションに応じて使い分けられるが、決して安くはない。そのため、私たちのように日常的に使ってもらう商品とは競合しないのではと考えている。話題性のある商品ならば売り場の活性化にもなるので、注目したい。
――今後については。
家庭用冷凍食品の主力は、パスタの「オーマイプレミアム」シリーズ、「Big」シリーズ、個食米飯の「いまどきごはん」シリーズ、ワンプレート商品、「よくばり」シリーズの4種だ。ただ、やはりパスタの売上が大きく、個食米飯とプレート商品を合わせても、当社の家庭用冷凍食品全体の3割ほどの売上だ。
しかし、個食米飯類は順調に推移しており、今後の伸びしろも大きいと見ており、将来的にはパスタに匹敵する売り上げまで育てていければと思う。そのためにも売場での認知度を高めるための施策として販促物の設置などを進めると共に、新CMの放映で商品をより多くの方に知ってもらえればと思う。
〈冷食日報2022年10月12日付〉