「サントリー天然水 きりっと果実 オレンジ&マンゴー」
(画像=「サントリー天然水 きりっと果実 オレンジ&マンゴー」)

サントリー食品インターナショナルが2022年5月に発売した「サントリー天然水 きりっと果実 オレンジ&マンゴー」(600mlペットボトル)は、同社の新商品の中で今年最大のヒット商品となっている(2022年8月末時点)。「サントリー天然水」ブランドから初の果汁飲料の提案だが、年々市場が縮小し低迷の続く果汁飲料からヒット商品が生まれるのは異例だ。

「サントリー天然水 きりっと果実 オレンジ&マンゴー」は、オレンジとマンゴーの果汁を15%配合し、果実の満足感とすっきり飲める味わい。さらに、1本あたり1日分以上のビタミンC、ビタミンB6、ナイアシンを栄養素等表示基準値を目安に配合している。

サントリー食品インターナショナルでは、ヒットの理由をどう見ているのか。「天然水」ブランドを担当する同社ブランド開発事業部の平岡雅文さんにきいた。

サントリー食品インターナショナルブランド開発事業部 平岡雅文氏
(画像=サントリー食品インターナショナルブランド開発事業部 平岡雅文氏)

――「サントリー天然水」ブランドから果汁飲料を発売しようと思ったのはなぜですか。

世の中で水を飲むことや、水に価値を感じることが増えてきていると捉えている。水がもたらす心身の清らかさや、心地よい気分になれるといった浄化的なニュアンスがある。その中で「サントリー天然水」というブランドが、これまで培ってきたものがしっかりお客様に浸透してきていると感じている。

これまでは、あくまで水という文脈の中で価値づくりを考えていたので透明なものということでやってきた。だが、もう少し広く捉えて、物質として“透明な水”というところに閉じずに、よりいろいろな価値と掛け合わせることで、お客様への新たな価値提案ができるのではないかと考えた。

――水のブランドなので、色付きや有糖の設計が意外でした。

「サントリー天然水」の持つ清らかさや清々しさを、いかに新しい価値に変えていくかという時に、注目したのが“リフレッシュ”だ。これまでもずっと精神的なリフレッシュを意識し、炭酸水などを展開していたが、コロナを経ていっそう注目していた。

それに加えて、生活者のみなさんから、よりフィジカル(身体)面で疲れやすくなったという声をよく聞くようになった。ずっと家にいて運動しなくなったことで、コロナ禍でたまに出社するようになると、会社に行くだけで疲れてしまうという声が出るようになっている。

そこで、気持ちだけでなく、フィジカルな部分も含めて両方を元気にしていくところに、天然水の清々しさ、気持ちよさといった価値がはまるのではないかと考え、開発をスタートさせた。

そして、着目したのが果実だ。果汁のオレンジを真ん中に置いて、身も心も元気になってもらうことを目指した。無理やりではなく、自然の力で清々しく心地よい状態に持っていくことをねらった。透明にせずに果汁の色をしっかり出して、果実のおいしさが感じられる仕上げ方をすると、マッチするのではないかと考えた。

――サントリーには「なっちゃん」ブランドもありますが。

やはり、「なっちゃん」は子ども向け、ファミリー向けのイメージが強い。心身の疲れをリフレッシュしたい時に大人の方が手にしてリフレッシュできるシーンにどうマッチさせるかということで、「サントリー天然水」ブランドから発売した。それはお客様の行動にも出ている。一般的に果汁飲料は午後のおやつタイムを中心に販売量が多いが、「きりっと果実」に関しては朝の購買が多いことが特徴となっている。

――1日分のビタミンが入っている点を強く訴求しない理由は。

「ビタミンを摂る」というのは、目的飲用になってしまい、そういった商品は他にもたくさんある。今回の新商品では、どちらかというと直感的・本能的に心身をリフレッシュしたいというニーズに、どう価値提供していくかという点に取り組んだ。

――売れ行きについて。

2022年8月までの実績では、当社で最も売れている新商品となっている。コンビニエンスストアやスーパーマーケットなど、さまざまな売り場で販売実績を伸ばしている。ほとんどの新商品は、発売後約2カ月で売り上げが下落してしまうが、この商品は最初から安定した売れ行きがずっと続いている不思議な商品だ。リピート購入率の高さが底支えしている。

お客様からは飲んだ感想として、“果実感があるのに、すっきり飲める”“思ったよりマンゴーを感じておいしい”などの声が多く、味わい評価が比較的高い。オレンジだけにせず、マンゴー入りにこだわったことがポイントだ。リピーターの方からは、ただのオレンジジュースではない価値が認められている。

また、売り場としてはミネラルウォーター棚に置かれることが多く、透明な商品の中に明らかに違和感のあるこのオレンジがあることは、結果的に無糖ユーザーの方にも手に取りやすい環境になった。

――今後に向けて。

認知・飲用経験率がまだまだなので、売り場をさらに広げていきたい。まずはしっかりとお客様の目の触れるところに商品をお届けする活動を行い、市場浸透を進めていきたい。