需要変動、原燃料価格高騰に翻弄される特殊紙市場
~品種間における成長力の差が拡大しコロナ禍で厳しさ増す品種も。産業・工業用途の産業機能紙の出荷量は拡大基調で推移する見通し~
株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内の特殊紙市場を調査し、各品種別の市場動向や参入企業動向、将来展望を明らかにした。ここでは、産業・工業用途の特殊紙である産業機能紙市場について公表する。
産業機能紙の市場規模推移・予測
1.市場概況
特殊紙はその付加価値性によって、固定されたユーザー企業向けに安定した需要があり、用途も印刷用途から産業・工業用、各種機能紙と幅広く、需要の変動に対してもその用途の広さからある程度対応が可能な底堅い市場であった。
一方で、新聞用紙や印刷用紙などの一般紙は需要構造の根本的な変化により減少し続けており、印刷用途で活用されている特殊紙についても同様の影響が出ている。また、産業・工業用途である産業機能紙についても、生産拠点の海外移転による空洞化や大幅な需要環境の変動、価格競争力のある海外輸入品の定着、ユーザーの海外進出先や製品輸出先での海外メーカーとの競争などにより、市場環境の厳しさが増している。
このように特殊紙市場では、需要構造の変化やグローバル化による世界規模での競争などによって、その付加価値に対するニーズの変化も加速している。これにより、需要の回復が見込めない、または回復が遅れている品種の特殊紙が出てきていることに加え、2020年からの世界的規模での新型コロナウイルス感染拡大の影響によって、品種間の需要回復の差が一段と色濃くなってきている。
2021年度の産業機能紙市場規模(国内メーカー出荷数量ベース)を前年度比105.0%の14万5,410tと推計した。内訳を見ると、最も構成比率が高いキャリアテープ原紙は、スマートフォンやタブレット端末、PC向けや車載向けで電子部品の需要が拡大していることから、2020~2021年度は好調に推移している。次いで出荷量の多い合成紙については、コロナ禍の影響により2020年度は大幅減となったものの、2021年度は回復基調で推移している。
2.注目トピック
特殊紙においても環境配慮への対応がカギに
環境問題に対する社会的な意識の高まりを背景に、ここ数年、特殊紙のユーザー企業においても環境配慮に対するニーズが高まっていることから、各品種では顧客のSDGsに貢献する環境配慮型製品の開発も目立ってきている。
環境問題の1つである脱プラスチックに対する需要(石油由来プラスチックの代替需要)の取り込みに向けて、耐油紙など既存の特殊紙による紙化(紙による代替)提案も一部実績が出てきている。紙化需要は、主に製品のパッケージやそれに付随するラベルなどがターゲットとなっている。また、こうした市場環境の変化を追い風にすべく、大手製紙メーカーを中心にプラスチックの代替となり得る脱プラスチック素材の開発も進展している。
3.将来展望
特殊紙市場では需要構造が変化し、コロナ禍で品種間の需要に差が出て、総体的に成長が望みにくくなっており、ユーザーニーズの多様化も進んでいる。
産業機能紙の主な用途である電子部品関連や自動車関連の部品については需要自体は高水準にあるため、現状の半導体不足が解消されれば、これらに係わる産業機能紙は再び増加する見込みである。
電子部品関連は、5G(第5世代移動体通信システム)関連需要拡大やデジタル化の加速、カーエレクトロニクスの進展などにより数年は拡大基調が続き、自動車関連についても、電装化需要が引き続き伸びることに加え、中長期的にはHEV・PHEVに続きBEVやFCEV(燃料電池自動車)のグローバル規模での本格的な普及拡大によって、更なる需要拡大が見込まれる。その他、新興国向けの社会インフラ関連や環境エネルギー分野関連の需要拡大も期待できる他、家電向けの省エネ化や換気需要の拡大、EC市場に関連した需要は更に拡大する見通しである。
こうした状況下において、2022年度の産業機能紙の市場規模は前年度比103.1%の14万9,950tを見込み、2023年度には15万4,930t(同103.3%)と拡大基調で推移すると予測する。
調査要綱
1.調査期間: 2022年4月~6月 2.調査対象: 特殊紙メーカー、総合製紙メーカー、紙代理店・商社及びその他関連企業 3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話によるヒアリング調査、郵送アンケート調査、ならびに文献調査併用 |
<特殊紙市場とは、産業機能紙市場とは> 特殊紙の定義は必ずしも明確なものがあるわけではなく、その付加価値性、市場価値から特殊紙を捉えている。本調査における特殊紙市場とは、情報用紙や衛生用紙、偽造防止用紙、クリーンペーパー、耐油紙、滅菌紙、色上質紙、ファンシーペーパー、色クラフト・ケント紙、インディアペーパー、ライスペーパー、合成紙、ステンレス合紙、電気絶縁紙、コンデンサペーパー・フィルム、ガラスペーパー、キャリアテープ原紙、フィルター濾紙、ラベル用粘着紙、剥離紙他約30品種の特殊紙を対象とした。 また、本調査における産業機能紙市場とは産業・工業用途の特殊紙である、合成紙、ステンレス合紙、電気絶縁紙(コイル絶縁紙・プレスボード・バルカナイズドファイバー)、コンデンサーペーパー・フィルム、ガラスペーパー、キャリアテープ原紙を対象として、国内メーカー出荷数量ベースで算出した。 |
<市場に含まれる商品・サービス> 情報用紙、衛生用紙、偽造防止用紙、クリーンペーパー、耐油紙、滅菌紙、色上質紙、ファンシーペーパー、色クラフト・ケント紙、インディアペーパー、ライスペーパー、 合成紙、ステンレス合紙、電気絶縁紙、コンデンサペーパー・フィルム、ガラスペーパー、キャリアテープ原紙、フィルター濾紙、ラベル用粘着紙、剥離紙他 |
出典資料について
資料名 | 2022年版 特殊紙市場の展望と戦略 |
発刊日 | 2022年07月07日 |
体裁 | A4 449ページ |
価格(税込) | 132,000円 (本体価格 120,000円) |
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