川西・大賀美夏子社長
(画像=川西・大賀美夏子社長)

食品エンジニアリング企業の川西(東京都武蔵野市)は、豆腐工場のトータルプランニングを強みとしている。

大豆サイロから出荷のコンテナ詰め工程、排水処理までトータルで、個々のユーザーの工場や作りたい豆腐に適した機械を提案する。同社の大賀美夏子社長は、「工場の『ムダ』を削減し、『もったいない』を無くすことに貢献していきたい」との思いから、食品工場の排水処理工程で発生する汚泥の肥料化の提案にも力を入れている。

大賀社長は9年前に、父親である川西聡一郎氏(現会長)が経営する同社に入社。2021年8月に社長に就任した。「我が家では、週に1回『お豆腐屋さんありがとうの日』があり、豆腐料理を囲む習慣があった。父の一生懸命な姿を見て育ち、実際に入社してみて感じたのが、すごく必要とされている会社だということ。継続していかなくてはならないと思い、後を継ぐことを決めた」と、豆腐業界への思いを語る。

同社の一番の強みである工場のトータルプランニング提案では、「お客様にとって理想の工場を実現するには、特定のメーカー1社の機械だけでは難しい部分がある。当社は、絞り機や成型機などさまざまなメーカーの製品を提案することができる。当社に頼んで良かったと思ってもらえるような、お客様が儲かる提案を常に考えている」という。

〈豆腐さいの目カッターが好評、ナゲット開発など豆腐の新たな可能性模索〉
近年、好評な機械のひとつが豆腐さいの目カッターだ。総菜工場やセントラルキッチンなどで採用され、引き合いが増えている。

「豆腐が嫌いだという人はいない。しかし、ひと手間かける必要があり、もっと簡単に食べられる形にすれば消費拡大に繋がるのではないか。給食の栄養士の方は、重要なたん白源で栄養価に優れる豆腐をメニューに採用したいが、現場の調理師の方はカットする手間がかかるため使いにくいようだ。カットされた状態で納品できれば、現場は楽になり人手不足対策にも貢献できる」と、今後さらにニーズが高まりそうだ。

これら事業の柱である豆腐製造工程に係るサービスのみならず、新たな豆腐の可能性を生み出す活動にも取り組んでいる。同社は、豆腐事業者と共に、肉様食感が特徴の「豆腐のナゲット」を開発した。以前から開発に着手していた「豆腐ウインナー」を応用し、製造時に崩れてしまった豆腐などを使って、大豆粉や調味料を配合し試作したところ、おいしい「豆腐のナゲット」が出来上がったという。

「最近では豆腐をバーにした商品が話題だ。ナゲットもあらかじめ味が付いており、手軽に食べられる点が良いのではないか。大豆ミートが流行っているが、がんもどきや油揚げは昔から、(精進料理などで)肉の替わりとして食べられてきた。アピールの仕方の工夫により、まだまだ可能性があるのではないか」と話す。今後は、豆腐ナゲットを作るための製造工程を、パッケージで提案していきたいという。

さらに、食品工場の排水処理工程で発生する汚泥を肥料に転用できる取り組みにも注力する。「食品工場から出る汚泥は実は栄養がたっぷり。肥料として活用することが可能だ。産業廃棄物としてお金を払って引き取ってもらう工場が多いが、乾燥機を導入し汚泥を乾燥させることで、肥料関係業者に有価で引き取ってもらえる提案を行っていきたい。ロシア・ウクライナ情勢で肥料が高騰する中、お金をかけて捨ててしまっている部分の有効活用を進めていきたい」と話す。

成分など汚泥の質を事前に調査する必要はあるが、豆腐に限らずさまざまな食品企業に適用できるという。実際に、汚泥の乾燥機の導入が1カ所で決まると、横展開で他の工場にも採用を希望する好循環が生まれているという。

そのほか同社は、ハサップ支援や、海外での豆腐店開店など、工場に係ることなら何でも相談に乗っている。今後の会社の展望について大賀社長は、「社員一人ひとりが、お客様に必要とされ役に立っていると実感できるような、働きがいを持てる会社にしていきたい」と話す。

〈大豆油糧日報2022年8月29日付〉