「米歴代で2番目に人気のない大統領」 バイデン大統領の支持率低下が止まらない
(画像=RafaelHenrique/stock.adobe.com)

米バイデン大統領の支持率低下が止まらない。オミクロン株のまん延やインフレを背景に、7月下旬の支持率は過去最低水準を更新した。11月の中間選挙を目前に控え、「米歴代で2番目に人気のない歴代米大統領」という汚名を返上できるのだろうか。

国民の約9割が「国の方向性に不満」

世論調査企業ファイブサーティエイトが複数の調査から集計したデータによると、バイデン大統領の支持率が最も高かったのは就任当初の2021年1月(55.0%)だった。同年8月下旬には不支持派が支持派を上回った。2022年7月20日現在は支持派38.0%に対し、不支持派は56.0%を超えている。

ブルームバーグ紙はこの散々な結果について、就任期間526日の平均支持率は38.0%と、ハリー・トルーマン第33代米大統領に次いで人気のない米大統領だと報じた。

低下しているのは支持率だけではない。3月以降は国の方向性に対する国民の満足度も低下傾向にある。世論調査企業ギャロップが6月に実施した世論調査では87.0%が不満を抱いており、「満足している」と答えたのはわずか13.0%だった。この数字は、トランプ政権下で起きたホワイトハウス襲撃事件やコロナ感染死亡者がピークに達した2021年1月の満足度(11.0%)に近い。

新型コロナ、高インフレが支持率低下の2大要因?

トルーマンの不人気は朝鮮戦争の際に議会に諮らず米軍による介入を決定したことや政権の腐敗、共和党マッカーシー上院議員による反共産主義者への圧力など政治的、軍事的要因に起因するものだった。これに対してバイデン大統領の立場を不安定にしているのは、主に新型コロナと高インフレと見られている。

統計サイト、ワールドメーターズのデータによると、米国における7月21日現在の感染死亡者数は、インドのほぼ2倍に当たる105万人以上と世界最多だった。感染も拡大し続けており、9,000万人を突破した。

その一方で、インフレ率は5月に40年ぶりの高水準に達し、消費者物価指数(CPI)は過去1年間で8.6%上昇、6月には+9.1%に達した。

2020年の大統領選でバイデン大統領に一票を投じた民主党員のファリエ氏は、物価上昇による家計の圧迫にさらされている消費者の一人だ。「快適な生活から何も買う余裕がない状況へ転落した」という。しかし一部では、「バイデン大統領の支持率を押し下げているクライシス(危機)の多くは、大統領のせいではない」という反論もある。

米国の高インフレの責任がバイデン大統領にあるのであれば、それを上回る高インフレに直面している英国(5月+9.1%、6月+9.4%)や米国に迫る勢いのドイツ(5月+7.9%、6月+7.6%)もバイデン大統領が原因なのか、というのだ。

若い民主党支持者の9割以上が「別の大統領候補を選ぶ」

もう1つ、バイデン大統領の先行きに暗影を落としているのが「年齢の壁」だ。民主党支持者がバイデン大統領に代わる新たな候補者を求めている、最大の理由となっている。 

同大統領は現在79歳と、すでに米歴代大統領の中で最年長だ。かつて「最年長大統領」として選出されたロナルド・レーガン氏(任期:1981~89年)は就任当時69歳、ドナルド・トランプ氏(2017~21年)は70歳だった。

特に若年層間で大統領交代を望む声が高まっており、ニューヨークタイムズ紙とシエナカレッジの世論調査では30歳以下の民主党支持者の94%が、全体の64%が「(次期大統領選では)別の大統領候補を選ぶ」と回答した。

全盛期の鋭敏失った「遅すぎた大統領」

「(バイデン大統領は)あまりにも疲弊していて集中力に欠けているように見えた」と前回の選挙戦を振り返るのは、ニューヨークタイムズ紙のコラムニスト、ミシェル・ゴールドバーグ氏だ。米国を含む多数の問題を抱えている国は「自信を刺激するのに十分な能力を持ったリーダーを必要としている」と指摘する。

誤解してはならないのは、「高齢だから指導者にはなれない」という意味ではないことだ。

この点については英歴史家のティム・スタンレー氏がテレグラフ紙で、「バイデン大統領はかつて恐れられた才能や精力を(大統領になる前に)使い果たしてしまった」と解説している。

スタンレー氏は、ローマ教皇フランシスコの名を挙げ、バイデン大統領より6つ年上であるにもかかわらず今尚絶大な支持を誇っていると言及した。要するに、バイデン大統領は全盛期の鋭敏さやカリスマ性を失ってしまった「遅すぎた大統領」という見方が広がっているということだ。

懸念される中間選挙の行方

支持率の低下に、党内からは深い懸念の声が上がっている。中間選挙に向けて強力なコテ入れが必要となるのは間違いない。

11月の中間選挙では、連邦議会上院議席の3分の1に値する34席、下院の全席435席が改選される。しかし、バイデン大統領の支持率と共に、民主党に対する国民の期待感もピーク時(2021年5月、63.0%)の半分以下(24.0%)へ低下していることから、苦戦が予想される。

現在、民主党は下院の過半数(221席)を保持しているが、上院は二分している。記憶に新しいところでは、民主党はオバマ政権下で、共和党はトランプ政権下で下院議席を失った。

銃規制のジレンマも 再出馬なるか?

バイデン米大統領が支持率回復に向けて取り組むべき問題は山とある。

6月下旬には30年ぶりに銃規制を強化する法案に署名した。しかし、大多数の国民は規制強化を支持する一方で、共和党議員が銃の所有を支持する住民の多い選挙区から選出される傾向が強いという複雑な背景もある。

さらに、総額60億ドル(約8,172億201万円)相当の連邦学費ローンの債務取り消しを求め債務者20万人が教育省を起訴していた問題を巡り、帳消しする意向を表明したが、米国の公的債務残高は6月時点で30兆5,685億ドル(約4,163兆4,522億円)と過去最高記録を更新し続けている。

次期大統領選への再出馬の意欲を繰り返し表明してきたバイデン大統領だが、どうやら茨の道のりとなりそうだ。

文・アレン琴子(英国在住のフリーライター)

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