自治体向けソリューション市場,2019
(写真=StreetVJ/Shutterstock.com)

2018年度の自治体向けソリューション市場規模は前年度比0.5%減の6,385億円、今後は横這い・微減推移の見通し

~国の方針もあり、自治体クラウド関連ビジネスは好調推移の見込~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内の自治体向けソリューション市場を調査し、市場概況や市場規模推移、将来展望、自治体クラウドビジネスや主要ベンダーの動向などを明らかにした。

自治体向けソリューション市場規模推移・予測

自治体向けソリューション市場規模推移・予測

1.市場概況

2018年度の国内自治体向けソリューション市場規模(事業者売上高ベース)は6,385億円で、前年度比0.5%減となった。
2018年度の市場は、通常のシステム更新サイクルに沿った更新需要が主体で、ここ数年、当該マーケットを牽引してきたマイナンバー対応や新公会計制度、ネットワーク強靭化、セキュリティクラウドなどの大型案件はほぼ収束した。そのため、これまで保留となっていた基幹系システムや内部情報系システムなどの更新需要や、法制度の変化に対応したシステム改修案件に軸足が移っている。また、総務省が進める自治体クラウドへの移行団体も見られるが、これが本格化するのは2021年度から2023年度頃になる見通しである。

市場を見ると、クラウド活用の拡大に加えて、ここ1~2年では自治体システムへのAIやRPA活用も始まっている。但し、現状ではほとんどのケースがPoC(概念実証)段階であるが、実効性が明らかになったような業務では、実装を検討する自治体も現れている。尚、同時期に実施した地方自治体へのアンケート調査結果をみると、現時点でのRPA導入率は数%に止まっている。

2.注目トピック

自治体クラウド市場の概況

政府では、財政再建の一環として中央省庁や地方自治体、各種外郭団体を含めた行政システムの効率化、行政コストの抑制を目指している。自治体クラウドも、この施策の一環として導入が図られており、導入団体ではコスト削減に主眼をおいた取り組みが求められている。加えて政府情報システムでは、「クラウド・バイ・デフォルト原則」のもと、クラウドファーストでシステム導入検討を行うことになっているが、この方針は地方自治体においても同様で、この点も自治体クラウド拡大のバックボーンとなっている。

自治体クラウドは、現状では人口規模2万人未満の小規模自治体を中心に導入が進んでおり、同20万人以上の中核市以上の規模での自治体クラウドの導入は限定的である。また自治体クラウドの普及に合わせて、自治体向けBPOサービスが普及している。特に、印刷周辺業務を中心にクラウドサービスとBPOをセット導入するケースが一般的になっている。このように、行政機関においても深刻化する人手不足や改正労働契約法の施行などを背景に、BPOニーズが顕著になっている。

3.将来展望

今後、市場ではGISやドローン、IoT/センサーネットワークを活用した現場向け情報システムの普及、防災・災害対策関連システムでのICT活用が進む見通しであり、加えて東京オリンピック・パラリンピックや訪日外国人客の増加を背景にしたシステム投資が見込まれる。一方で、クラウド化の進展やベンダ間での価格を含めた競争の激化、行政コスト削減志向の定着といった傾向も強まる見込みである。以上のような奏功要因と阻害要因が相まって、2020年度以降も横ばい・微減トレンドが継続する見込みである。
このような市場環境の中で、従来のSIやシステム開発主導型から、サービスビジネスやBPOサービスにシフトしており、当該マーケットがサービス型のビジネス構造に転換しつつあると考える。2023年度国内自治体向けソリューション市場規模(事業者売上高ベース)は、2018年度比で4.5%減の6,100億円を予測する。