注目のオークション情報から、NFTのトピックまで。先週1週間のアートトピックを振り返ります。(1ドル=127円で換算)
オークション
▍クリスティーズ香港オークション、11の新記録を樹立し 計約234億円の売上に 5月26日、香港で開催されたクリスティーズオークションのイブニングセールは世界中にライブ中継され、オンラインや電話でも入札が行われた。落札総額は1億8,400万ドル(約234億円)。注目作品は、ショーン・コネリーの遺品として出品されたパブロ・ピカソの≪uste d’homme dans un cadre≫で、この日2番目に高額となる2,230万ドル(約28.3億円)で落札された。この結果に続き、奈良美智の特徴的な大きな目をした少女の肖像画≪Wish World Peace≫は、1,240万ドル(約15.7億円)でこの日3位の価格で落札された。(artnet news)
▍ピカソのミューズでシュルレアリスム作家ドラ・マールの未公開写真集がオークションへ パブロ・ピカソの主要なミューズの一人として知られるフランスの写真家ドラ・マールによる750点の写真が、今年6月、オークションに出品される。1920年代から1940年代にかけて撮影されたこの写真群は、これまで一般に公開されることはなかった。マールはピカソの「泣く女」のモデルであったことで多くの人に認知されているものの、彼女自身の芸術についてはほとんど一般には知られていなかった。今回の売却は、シュルレアリスム芸術運動において過小評価されている人物への関心が高まる中で行われる。(ARTnews)
アートマーケット
▍2022年に美術品市場が活況である理由は? 2022年、主要オークション会社が相次いで高額なオークションを開催。これまでに25億ドル(約3,175億円)以上の利益を上げており、アート市場は熱気を帯びている。この販売急増の理由として、美術史家で元ディーラーのベンダー・グロスヴェナーは、金融市場が混乱する中、富裕層の購入者は美術品を「資産としての長期的ヘッジ」として見ていると考察している。また、元クリスティーズの専門家ロイック・グーザーはニューヨーク・タイムズ紙に「美術品は不況に対する免疫力が高いと思われる数少ない資産の一つであるか、インフレが我々が考えるよりはるかに強いかのどちらかだ」と語っている。こうした市場のブームは美術品以外に、自動車や宝飾品にも及んでいるという。(SURFACE)
NFT
▍略奪されたアフリカの美術品からNFTを作成し、アフリカの若いアーティストに資金を提供するプロジェクト「Looty」が始動 欧米の博物館が戦争や植民地化によって入手した美術品を祖国に返却することについて議論がなされている。一方、自分たちの手でその問題を解決しようとしているデジタル起業家たちがいる。ヴァーチャル返還プロジェクト「Looty」は、欧米の主要な施設にある略奪品のNFTを制作して販売し、その収益の20パーセントをアフリカの若手アーティストへの助成金として提供する。さらに、次の段階では、メタバースに仮想博物館を建設し、再生された芸術品を収蔵する予定だという。(artnet news)
▍BeepleのTwitterアカウントが乗っ取りられ、フォロワーの5,000万円以上のNFTと暗号通貨が盗まれる デジタルアーティスト BeepleのTwitterアカウントを狙ったフィッシング詐欺で、40万ドル(約5,080万円)以上の暗号通貨とNFTが盗まれた。ハッカーはBeepleのTwitterアカウントをのっとり、ルイ・ヴィトンとのコラボレーションの抽選とうたった悪意あるウェブサイトへのリンクをツイート。被害者のMetaMaskウォレットからイーサリアムとMutant Ape Yacht Club、VeeFriendsなどの高額NFTを流出させたという。Beepleを狙った大規模な詐欺は今回で2回目となる。(artnet news)
▍ビートルズのリンゴスターがNFTデジタルアートワークをオークションに出品 ビートルズのリンゴ・スターは、自身の制作した一点もののデジタルアート作品と、それに付随するサイン入りキャンバスプリントを提供する独占オークションを開始することを発表した。81歳の彼は「新しいテクノロジーに触発され、私は自分のアートと音楽を組み合わせたNFTを作るのが大好きになりました。」と声明を出している。オークションは6月13日に開催され、収益の一部は、チャリティ・プロジェクトを支援するロータス財団に寄付される予定だという。(FOX Business)
アートフェア
▍アート・バーゼル香港、地元に密着した厳しいルールで開幕。好調な売上を記録 アートバーゼル香港は、Covid-19による規制が続き観客の数は明らかに少ないものの、満足のいく売上を記録しているという。テクノロジーと5Gインターネット接続を広範に活用するほか、国際的な展開が難しい中で地元・香港に焦点を当てている。地元出身のギャラリーやアーティストを主役とし、世界のアートハブとしての香港の地位を高めるだけでなく、香港の人々のアートに対する姿勢にも重要な役割を果たしているようだ。(artnet news)
コラボレーション
▍ルイス・ハミルトンとダニエル・アーシャムのコラボ。モナコGPを前にヘルメットの彫刻を制作 ダニエル・アーシャムと、7度のF1世界チャンピオンに輝いたルイス・ハミルトンは、初のコラボレーションを発表。モナコGPにインスピレーションを得た、クリスタルで侵食されたレーシングヘルメットの彫刻を制作した。このアートピースの販売収益は、すべてハミルトンの基金「ミッション44」に寄付される。さらに、アーシャムは、今週末のモナコGPでハミルトンが着用する本物のレース用ヘルメットもデザインしている。 (HYPEART)
展覧会
▍「データでみる美術展 by ANDART-アートの新たな楽しみ方-」6/1(水)~ b8ta有楽町店にて開催 アート作品を取り巻く様々なデータにフォーカスを当てた展覧会「データでみる美術展 by ANDART-アートの新たな楽しみ方-」が、東京のb8ta有楽町店で海佐入れる。オークションでの価格成長率や落札率、最高取引額などから、アーティスト自身にまつわる数字等に注目。現代アートの巨匠アンディ・ウォーホルの名作《Campbell’s Soup I (Pepper Pot)》をはじめ、KAWS、バンクシーなどANDARTが保有する名作の実物もあわせて展示される。
「データでみる美術展 by ANDART-アートの新しい楽しみ方-」
会期:2022年6月1日~2022年6月30日
時間:11:00~19:30
入場料無料
会場:b8ta 有楽町店 エクスペリエンスルームB(東京都有楽町1丁目7-1 有楽町電気ビル1階)
主催:株式会社ANDART
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文:ANDART編集部