食品産業新聞社
(画像=食品産業新聞社)

〈輸入品は国産品へ切り替えの動き、需給バランスを注視〉
4月の鶏肉需給は、世界的な飼料価格の高騰、輸入食肉の高騰・輸送不安定さから、価格優位性の高い鶏肉の需要拡大が期待された。

とくに国産品は輸入品の急騰もあり、期待が大きかった。国産の生産面では産地により増体が進まなかったが、全体的には安定していた。一方、実需では大きな盛り上がりは見せず、生鮮モモは今後ジリ下げ展開と予測される。ムネ・ササミは加工筋からの引き合いが強く、相場はもちあい推移か。加工筋では輸入品から、安定価格・調達が可能な国産品に切り替える動きもみられている。

手羽アイテムも、産地では人手不足を背景に生産が限定的にならざるを得ないが、加工原料向けに安定した需要を確保している。今後は夏場の手羽先需要を合わせて、それなりに需要が期待される。

一方で輸入品は、国際情勢により世界的に需要が高まり、価格が高騰。為替円安も影響し調達コストが上昇している。一部では500円を超える玉もあるようだが、実需が盛り上がったことによる高騰ではないため、ユーザーは最低限の調達に抑えているようで、荷動きが活性化しているわけではない。今後の輸入量・価格を注視をしつつ、国産品への代替が進むことも考えられ、需給バランスを勘案した落ち着いた調達が求められそうだ。

4月の平均相場は、日経加重平均でモモが622円(前月630円)、ムネが315円(316円)と正肉合計937円、前月比9円安となった。前年同月比ではモモが55円安、ムネは10円高となり、正肉合計では45円安となった。

〈供給見通し〉
日本食鳥協会がまとめているブロイラーの生産・処理動向調査によると、5月の生体処理羽数は前年同月比0.6%増を見込むが、処理重量は1.3%減を見通している。4月も羽数は昨対増も、重量は減少を見せている。産地によっては今春から体重が乗りづらく、飼料価格が世界的に高騰する状況のなか、歩留まりが懸念される。

6月も羽数は前年実績を超える見込みだが、重量はわずかに届かない見通しとなっている。5月の産地別では、北海道・東北地区は羽数が0.6%減、重量は1.8%減を見込み、南九州地区では羽数は1.7%増、重量は0.3%増を見込む。南九州では6月も羽数・重量ともに昨対増を見込んでいる。

農畜産業振興機構の鶏肉需給予測によれば、5月の国産生産量は14.3万t と前年同月比4.0%増と予測している。盤石な生産基盤に支えられ、前年比微増での生産量を維持する見込みだ。一方で輸入品は、買い付け時点における国内輸入品の好調な出回りを受け、ブラジル産の増加が見込まれるため、3.2%増の4.8万tを見込む。3、4月は約2割下回る輸入量となったため、3カ月平均で前年同期を15%程度下回る予測となっている。

〈需要見通し〉
国産品はモモの販売が芳しくなく、食肉全体の価格が上昇するなか、量販店では売り上げを作るために、生鮮モモの特売回数が増加するとの声も聞かれる。輸入品動向次第ではあるが、凍結に回すよりも生鮮での販売を優先したいようだ。ムネ・ササミは今後も安定需要に支えられるものとみられる。

輸入品の調達は今後の動向が予測しづらく難しいが、一定需要が予想される。外食需要のさらなる回復に期待したいが、国産品への切り替えなど需給バランスの見極めがポイントとなりそうだ。

〈価格見通し〉
国産生鮮品相場は輸入品動向に左右されそうだ。それでも、生鮮モモは季節的に需要が弱まるものとみられ、ムネ・ササミは安定需要に支えられる。日経加重平均ではモモが620円前後、ムネは315円前後と見込まれる。農水省市況ではモモが630円前後、ムネは325円前後と予測する。

〈畜産日報2022年5月13日付〉