2022年4月19〜21日、フィリップスオークション「Editions & Works on Paper」がニューヨークで開催された。
イブニングセール、デイセール合計373点が出品された本オークション。目玉とされていたアンディ・ウォーホル《Flowers》の貴重な10点コンプリートセットが、予想最高落札価格に迫る勢いでダントツのトップに。 落札価格トップ10のうちウォーホル作品が5作を占め、さらにキース・ヘリングやロイ・リキテンスタインがランクインするなど、ポップアートが好調だった。
この記事では、落札価格TOP5の作品とANDART関連アーティストの落札情報を紹介。落札価格は手数料込み、1USD=128.42円(2022年4月21日終値)で計算。
5)アンディ・ウォーホル《Marilyn (F. & S. 24)》(1967)
落札価格:約4,854万円($378,000)
「ポップアートの巨匠」と呼ばれるアンディ・ウォーホルの中でも、キャンベルスープ缶と並んで有名なモチーフがマリリン・モンローだ。ハリウッド映画を好んだウォーホルは、スター女優であるマリリンの大ファンだったという。本オークションにはこのモノクロのマリリンと、明るいグリーンをベースにしたカラーのマリリンの2点が出品され、ほぼ同額で落札価格5位と6位に並んでランクインした。(予想落札価格:約1,926万〜2,568万円 / $150,000 – 200,000)
4)アンディ・ウォーホル《Siberian Tiger, from Endangered Species (F. & S. 297)》(1983)
落札価格:約5,178万円($403,200)
「絶滅危惧種」シリーズのひとつ、アムールトラを描いたスクリーンプリント。アメリカでは本作が制作される10年前の1973年、絶滅の危機に瀕する種の保存に関する法律が制定されており、環境保護活動家として知られるアートディーラーのフェルドマン夫妻がウォーホルに制作を依頼した。手描きの輪郭線は、この時期のウォーホル作品の特徴。このシリーズの作品には、蝶(San Francisco Silverspot)やアフリカゾウ(African Elephant)などがあり、2021年から人気が高まっている。(予想落札価格:約1,284万〜1,926万円 / $100,000 – 150,000)
3)奈良美智《Untitled (M. & S. E-2010-003 – E-2010-012)》(2010)
落札価格:約6,472万円($504,000)
本作は10点セットの浮世絵で、手間のかかる伝統的な技法で制作された木版画。厚紙に描かれたドローイング作品のような軽快さを残しながら、より洗練されたエネルギッシュな仕上がりとなっている。描かれているのは、奈良の作品によく登場するやや目のつり上がった子どもたち。楽器を構えたり机に向かったり、生き生きとした子供たちに、シンプルな英語のメッセージが添えられている。(予想落札価格:約5,137万〜7,705万円 / $400,000 – 600,000)
2)キース・ヘリング《The Blueprint Drawings (L. pp. 174-183)》(1990)
落札価格:約7,119万円($554,400)
1980年12月から1981年1月にかけて、ヘリングはベラム(動物の皮をなめして作った紙)に墨で17枚のドローイングを描いた。コマ割りがされているものもあり、コミックのような表現のゆかいな作品となっている。1981年2月には小さなギャラリースペースに展示し、それがニューヨークでの初個展となった。原画の多くが販売後に行方知れずになったが、ヘリングは事前に全てのドローイングの複製をつくっており、今回出品されたのは複製を用いたプリント。(予想落札価格:約3,531万〜4,495万円 / $275,000 – 350,000)
1)アンディ・ウォーホル《Flowers (F. & S. 64-73)》(1970)
落札価格:約1億9,031万円($1,482,000)
《Flowers》は10点セットの作品だが、全てそろった状態で出品されることは非常に珍しい。本オークション開催前の期待を裏切らず、ほぼ予想最高落札価格に届く結果となった。
本作もととなったイメージは、1964年に発行された雑誌に掲載されていた7輪のハイビスカス。ウォーホルは写真を切り抜き、回転させ、加工したうえ、アシスタントに少なくとも12回複製機にかけさせたため、極端に平坦でぼやけたイメージとなった。撮影者に無断で写真を使用したため、著作権侵害で訴訟となり、ウォーホルが敗訴。しかしながら、自然の代表である「花」を不自然で人工的なイメージに変換した本作は、1960〜70年代にウォーホルが制作した最も抽象的で重要な作品となった。(予想落札価格:約1億2,842万〜1億9,262万円 / $1,000,000 – 1,500,000)
【ANDART取り扱いアーティスト落札情報】
アンディ・ウォーホル《Liz》(1965)
落札価格:約728万円($56,700)
数々の有名人のポートレートを手がけてきたウォーホルが、女優エリザベス・テイラーを描いたシリーズの一作。彼女が主演を務める『バターフィールド8』の宣材写真に基づいて制作された。本作は限定300エディションのプリントだが、原画のキャンヴァスは非常に高額で取り引きされている。2022年3月、羽田空港で開催されたシンワオークションに出品された同モチーフの《Silver Liz》が国内オークションの史上最高額で落札されたことにより、国内の認知度がさらに高まった。(予想落札価格:約385万〜642万円 / $30,000-50,000)
ANDARTで取り扱っている本作と同エディションの《Liz》も、好評により早々に完売。現在は会員間での売買が可能となっている。
ダミアン・ハースト《Methamphetamine (P. pp. 138-139)》(2004)
落札価格:約1,214万円($94,500)
ダミアン・ハーストの代表的なシリーズ「スポット・ペインティング」に属する本作は、予想最高落札価格の3倍を超える高額で落札された。錠剤をイメージした全て違う色のドットで構成されており、本作のタイトル「メタンフェタミン」は中枢興奮作用と精神依存性を持つ有機化合物の名称。生と死を主なテーマとするハーストは、薬局を模したインスタレーション《Pharmacy》など、医療や薬品をモチーフとした作品を多数制作している。(予想落札価格:約257万〜385万円 / $20,000-30,000)
ANDARTでは同じく「スポット・ペインティング」シリーズの一作《M-Fluorobenzylamine》を取り扱い中。
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