BIGBOSS率いる日本ハム、2023年に本拠地を札幌から移転 「札幌市、何やってんだ……」
(画像=SergeyNivens/stock.adobe.com)

プロ野球の日本ハムに関し、「札幌市、何やってんだ……」と札幌市民からは市政を批判するこんな声が聞かれる。札幌市に多大な経済効果をもたらしてくれた日本ハムが、2023年に本拠地を移転してしまうからだ。なぜ日本ハムは札幌を去るのか。その理由を整理する。

日本ハムの移転に関する発表をおさらい

最近何かと話題を集めているBIGBOSS(新庄剛志監督)が率いる北海道日本ハムファイターズは2023年、本拠地を札幌市から札幌市の隣町である北広島市に移転する。日本ハムは現在、札幌市の「札幌ドーム」を本拠地としているが、北広島市で現在建設中の新球場が本拠地となる。

日本ハムがこのことを正式に発表したのは、2018年11月5日のことだ。

▼北海道北広島市における新球場建設を正式発表
https://www.fighters.co.jp/news/detail/00001446.html
▼北海道、北広島市、ファイターズ、HBPが協定締結
https://www.fighters.co.jp/news/detail/00001448.html

内容を改めて振り返っておこう。まず1本目のプレスリリースで、「2023年3月開業に向けて正式に新球場を建設することを決定いたしました」としている。新球場の名称は「北海道ボールパーク」(HBP)で、建設費用は約600億円という。開閉式屋根と天然芝フィールドが特徴の球場だ。

球場以外にも商業施設や宿泊施設、キャンプ場なども併設され、地元・北広島市も北海道ボールパークを核にした地域振興プロジェクトを強力に推し進める計画らしい。

日本ハムファイターズの運営会社の竹田憲宗社長は当時、「道民球団として、球団の企業理念である『スポーツと生活が近くにある社会、Sports Community』の実現、について新球場を介して、より一層注力して参りたいと考えています」とコメントしている。

なぜ日本ハムは札幌を去るのか

このように、日本ハムファイターズ、そして移転先の北広島市は、本拠地移転に向けて意気揚々といった感じだが、日本ハムが去ることになる札幌市の市民からは、ため息混じりの声が聞こえる。

これまで、日本ハムが本拠地を構えていたおかげで、多くの野球ファンが札幌を訪れてくれた。その経済効果は非常に大きく、札幌市民、そして札幌の経済にとって日本ハムは大歓迎されていた存在だった。

重い賃料負担、札幌市は値下げ要請に応じず

しかし、日本ハムは隣町の北広島市に移転することが決まった。その理由のひとつとなったのが、札幌市が所有する札幌ドームに支払う賃料の負担が大きかったことだ。日本ハム側は札幌市に値下げの要請をしたが、札幌市側は値下げに応じることはなかった。

球場内で販売される選手グッズの売上に関しても、日本ハム側には不利な契約となっていた。本来、グッズ販売における収入は球団にとって重要なものだが、販売が好調でもその利益がしっかりと日本ハム側に残る仕組みにはなっていなかったようだ。

施設の使い勝手の悪さも新球場建設の引き金に?

球場の使い勝手の悪さも新球場建設の引き金となったと指摘する声もある。例えば、札幌ドームはベンチからホームベースまでの距離が長めだ。また、札幌ドームは床が固い。コンクリートの床に人工芝のロールを広げただけのフィールドだからだ。このような固いフィールドでは、選手はむやみにスライディングができない。ケガの原因となるからだ。

もし、札幌市側がこのようなフィールドの問題を解消しようと、球団、そして選手に寄り添った対応をしていれば、移転の話はもう少し先送りになっていたかもしれない。

札幌ドームの今後の経営に暗雲が立ちこめる状況

日本ハムが新球場の建設を検討しているという話は、地元メディアの報道によって2016年に表面化した。札幌ドームを運営する札幌市はその報道に焦り、新球場の候補地を複数提案するものの、結局は日本ハム側に突っぱねられてしまった。

札幌ドームでは現在、日本ハムファイターズとプロサッカークラブの北海道コンサドーレ札幌が本拠地を置いているが、2023年には日本ハムが去る。このことにより、札幌市が享受してきた経済効果を失うだけでなく、札幌ドームの経営自体にも暗雲が立ちこめる状況となっている。

日本ハムが札幌ドームに支払っていた使用料を穴埋めするほどの収入を獲得するのはそう簡単なことではない。経営が悪化し、赤字を垂れ流す状況となれば、市政に対する市民の批判は一層高まることになりそうだ。

現在の札幌市長の任期は2023年5月1日で切れる。 札幌ドームに関する市側の失策もあり、次の市長選は白熱の選挙になるかもしれない。選挙戦で各候補がどのようなことを語るのか、注目したいところだ。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)

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