黒坂 岳央
黒坂 岳央(くろさか・たけお)
水菓子肥後庵代表。フルーツビジネスジャーナリスト。シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、東京で会社員を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。ビジネス雑誌やニュースサイトでビジネス記事を書いている。著書に『年収1億円超の起業家・投資家・自由業そしてサラリーマンが大切にしている習慣 “億超えマインド"で人生は劇的に変わる!』など。

「孤独」というと、ネガティブな響きを覚える読者もいるだろう。だが稼ぐ社長はみな、孤独は成功するための条件であるということを知っている。メディアで取り上げられる経営者は日々、華やかなパーティーや交流にいそしんでいるように見える。だが、実際はイノベーティブな発想や、大きな未来のビジョンは孤独な時間から生まれるという真理があるのだ。

経営者にとって無駄な人付き合いは最大のコスト

孤独,社長
(画像=fizkes / Shutterstock.com)

経営者にとっての、最大の経営資源は何といっても「時間」である。お金を失ってもまた稼げばいい、人脈も必要に応じてついてくる。だが時間だけはどんなことをしても取り戻すことはできない。時間とは人生における命のカケラ、切れ端なのだから文字通り命と同じくらいの価値があるといえる。

稼げない経営者はギャンブルにうつつを抜かしたり、回収できそうもない案件に資金を投じたり、そんなに好きでもないゲームやYouTubeで遊んでいたりする。本人もこうした行動は、ビジネスになんのプラスにもならないことは薄々感じているだろう。

だが、本当の問題は「無駄な人付き合い」にある。人付き合いで時間を浪費しているのに、それを自覚できている経営者は驚くほど少ない。「人脈作り」と称して、交流会に出入りし、「飲みニケーション」と称して2次会、3次会で朝まで騒ぐ。こうした時間で「仕事に生かせる交流ができてよかった」と思っているが、真の信用はビジネスの中で育まれるものであり、時間とお金を使っただけで回収できなければこうした人付き合いはすべて、不毛なコストでしかない。

経営者はまず、無駄な人付き合いを見直すところから始めるべきなのである。

多くの人が孤独を忌避する理由

多くの人は孤独を恐れる。「サバンナ幸福論」という言葉がある。細かい解説はさておき、サバンナ幸福論を端的にいえば、人は集団に身を置くことに幸福を感じるように遺伝子に刻まれていて、孤独は群れから離れる危険な状態なので不安や恐怖を感じるようになっているという意味だ。

「孤独」をどうとらえるかでその人のビジネスの成否はハッキリと明らかになると筆者は考えている。このサバンナ幸福論は「人は本質的に群れを求め、群れにいると安心を覚える」というだけではなく、「一部の知性が高い人は群れずに孤独を好む」ということも示されているのが興味深い。

成功は孤独の時間に作られる

アメリカの発明王エジソンは「最上の思考は孤独のうちになされ、最低の思考は混乱のうちになされる。」という名言を残している。彼のいう通り、最高の思考は孤独の中で作られるのだ。

経営者とは孤独な職業だ。従業員はいても、経営判断を下すのは常に自分自身しかいない。濃密で深い思考を巡らせるには、大勢に囲まれた賑やかな場所ではなく、静かな場所で集中する環境を構築する必要がある。そう、多くの人は「孤独とは結果だ」と考えるが、経営者は「孤独は作るもの」という発想を持っている。

成功する社長ほど一人の時間を作る

成功する社長ほど、一人の時間を持っている。それは成功のための必要条件だ。時間は常にトレードオフ。他人と馴れ合っている時間を持つことは、孤独に思考を巡らせる時間を捨ててしまうのと同義なのである。

経営者の中には、「本業が忙しくてなかなか一人になれない」と考える人もいるだろう。そこでおすすめしたいのは、早朝に起床するという生活習慣である。

筆者も子供が二人いる経営者だが、夜は21時、22時に寝て朝は4時、5時に起きるようにしている。子供がいて、ビジネスが忙しくても朝の4時に緊急の連絡は入ってこないし、子供もまだぐっすり寝ている。誰も自分の思考を邪魔するものはいない。一人、静かに集中して自己内観とビジネスの深淵に向き合うことができる時間となっている。筆者は早朝のゴールデンタイムに、もっとも重要度の高い仕事を持ってくるようにしている。

「孤独は辛い」と考えているうちは成功者にはなれない。「孤独を愛する」ようになるのは成功者の必要条件なのだ。

文・黒坂岳央(水菓子 肥後庵 代表・フルーツビジネスジャーナリスト)