すでに2022年が始まって早3ヶ月。もうすぐ今年度も終わりにさしかかり、新たな門出を迎える人も多いかもしれない。
THE OWNERでは今年度にヒットした記事を振り返る特集を企画。今年度話題を呼んだ「自動車業界」の動向について振り返る記事をピックアップした。日本の自動車メーカー各社は新型コロナの感染拡大の影響で減産を余儀なくされた。
このような中で、自動車メーカーの業績や事業活動は現在どのような状況なのだろうか。
1.日産は工場停止、トヨタは生産4割減…自動車メーカー8社の悲惨な現状
(2021/09/23 配信)
コロナ禍による影響はどの自動車メーカーも免れていない。しかし、減産に踏み切るトヨタ、ビフォーコロナを上回る営業利益を出したマツダなど、自動車メーカーによって状況は三者三様だ。この記事では自動車メーカー各社の決算状況や最新状況をまとめる。
日本と海外におけるコロナ禍の状況は?
いま日本では、新型コロナウイルスの感染拡大の「第5波」が起きている。全国の感染者数の推移をみると第5波もピークを過ぎたかに思えるが、まだまだ予断を許さない状況だ。そして人々の「緊急事態宣言慣れ」もあり、第6波、第7波の懸念も消えない。
海外では、ワクチン接種が進んでいる国と進んでいない国で、顕著な差が出てきている状況となっている。欧米ではワクチン接種が進み、以前よりはコロナ禍が与える社会や経済の影響が小さくなっている。一方、東南アジアなどの新興国では、依然として状況が深刻な国も多い。
ではこのような中で、自動車メーカーの業績や事業活動は現在どのような状況なのか。
2.ゴーン事件から3年で日産、黒字転換に上方修正 修正できた3つの理由
(2022/02/12 配信)
日産自動車は2022年2月8日午後、決算発表を行った。2021年4〜12月の売上高や営業利益、純利益の数字もさることながら、今期の最終益について3回目の上方修正を発表したことにも注目したい。早速、発表内容を見てみよう。
2022年3月期第3四半期の業績は?
2021年4〜12月の累計の売上高は前年同期比15.7%増の6兆1,540億3,100万円、営業利益と経常利益と純利益は赤字から黒字に転換し、それぞれ1,912億8,700万円、2,560億3,200万円、2,013億3,500万円を計上した。
前年同期比での売上高の増加、また営業利益・経常利益・純利益の黒字転換は、第1・第2四半期の決算発表においても同様だったが、今期の通期見通しについて3回目の上方修正を行ったことは市場にとってはポジティブサプライズだった。
3.ホンダ、宇宙事業へ参入。創業者の“チャレンジ精神”を未来へつなぐ
(2021/10/08 配信)
2021年夏、地上における移動の自由が新型コロナウイルスによって奪われる中、民間による宇宙への扉が大きく開かれた。7月11日、ヴァージン創業者リチャード・ブランソン氏らを乗せた有人宇宙船「ユニティ」が試験飛行に成功した。その10日後にはアマゾン創業者ジェフ・ベゾス氏が、自らが創業した宇宙ベンチャー「ブルーオリジン」社の「ニューシェパード」に乗船、5分間の無重力を体験した。そして、先月、テスラ創業者イーロン・マスク氏の「スペースX」社が民間人のみを乗せた宇宙船「クルードラゴン」の打ち上げに成功、3日間の地球周回旅行を楽しんだ後、無事地上に帰還した。
「有人」という壁はあるものの、日本勢の可能性も大きい。ロケット、人工衛星、ソフトウェア、通信・放送、観測、デブリ除去など、製造から利用サービスまで、日本の技術は世界有数のレベルにある。そこに新たな「本命」が加わる。30日、Hondaが宇宙事業への参入を表明した。2020年代の打ち上げを目指し、小型ロケットを開発する。ロケットは低軌道向け小型人工衛星を搭載、自動運転技術で培った制御・誘導技術を活用し再利用型とする、とのことである。
また、電動化技術を応用した電動垂直離着陸機(Honda eVTOL)や分身ロボット(Hondaアバターロボット)の開発も強化する。
前者のコンセプトは、都市内移動にとどまらず都市間移動を実現することにある。そのためには長い航続距離が必要であり、これを実現すべくガスタービンとのハイブリッド方式を採用する。あくまでも実用本位で電動に拘らないあたりがホンダ的だ。独創的な設計思想で世界を驚かせたHonda Jetの技術が活かされる。後者は、言うまでもなくASIMOの技術と経験が土台となる。こちらは月面遠隔操作ロボットへの応用も想定される。
4.「下請けいじめ」の成果?コロナ禍でもトヨタ2兆円超えの黒字
(2021/05/29 配信)
大手自動車メーカーの2021年3月期決算が出揃った。特に純利益の金額では、トヨタが相変わらず突出した数字を残した。しかし、コロナ禍においても業績が堅調であることから、「下請けいじめの成果」と揶揄する声も出ている。その批判は正しいのか。
自動車メーカー各社の2021年3月期の決算概要
まず2021年3月期(2020年4月〜2021年3月)の自動車メーカー各社の決算を紹介していこう。全ての企業が売上高を落としているが、最終損益は黒字の企業と赤字の企業に分かれている。
<自動車メーカー7社の2021年3月期の売上高と最終損益>
・トヨタ自動車:コロナ禍でも増益、最終利益2兆円超
トヨタはコロナ禍でありながら、2兆円を超える純利益を確保した。売上高を落としたものの、前期より10.3%増の増益という結果だ。諸経費の低減努力で700億円のコスト削減もあり、1,500億円の増益効果を生み出している。
ちなみに今期にあたる2022年3月期の通期(2021年4月〜2022年3月)は、売上高は30兆円、最終損益は2兆3,000億円の黒字を見込んでいる。達成できれば、それぞれが過去最高の数字となる。
・日産自動車:2期連続の赤字、厳しい経営状況が続く
厳しい経営状況が続いている日産では、2018年3月期に7,469億円あった黒字が、翌期は3,191億円までしぼみ、2020年3月期には6,712億円の赤字に転落した。そして2021年3月期は4,486億円の赤字となり、2期連続で赤字を計上する結果となってしまった。
2022年3月期の通期業績も600億円の赤字を見込んでいる。
5.日産・ホンダも?日系企業が経営統合に相次いで失敗する3つの理由
(2020/09/20 配信)
英紙フィナンシャル・タイムズは2020年8月16日、日産自動車とホンダが経営統合を模索していたと報道した。2019年末に政府関係者から提案されたとのことで、両社とも事実関係についてはコメントを控えているものの、仏ルノーを筆頭株主に持つ日産の経営独立性を維持したいとする政府の思惑も見え隠れする。仮に統合が実現すれば、コロナウイルスの影響も相まって業績低迷が続く自動車業界に対して、再編の動きを投じる一手になりうるかもしれない。
このような経営統合の動きは、これまでもあらゆる業界において行われてきた歴史がある。しかし、日系企業による経営統合の議論は、得てして失敗に終わってしまうケースが多い。なぜ交渉が失敗に終わるのか、なぜ統合後の経営がうまく行かないのか。ここでは、過去の具体的な失敗事例を取り上げながら、その理由の裏にある日系企業の構造的な問題に迫りたい。
日系大手企業同士の統合や買収の失敗事例
まずは、日系企業大手の経営統合が破談、もしくは統合後に失敗に終わったケースをいくつか取り上げよう。
・三越と伊勢丹の経営統合
2008年4月、百貨店業界で当時第4位だった三越と第5位だった伊勢丹が経営統合し、三越伊勢丹ホールディングスが発足した。バブル崩壊を背景に、1990年あたりをピークに業界全体が低迷していく中で生き残りをかけた統合戦略であった。
統合後、同社は不採算店の整理や基幹店の大規模な改装によるコスト再編を行ったほか、2016年以降はエステ事業や旅行代理店事業を買収するなど積極的な構造改革を試みた。しかし、業界低迷の波に逆らうことができず、業績は低迷したままだ。2020年3月期現在、3期連続の減収となっている。
両社の経営統合は、当時の業界危機を踏まえた大胆な発表であったが、消費者ニーズの激しい変化と時代の潮流に対して、十分な経営改革が行き届かなかった結果と言わざるを得ない。長期的に見れば、この統合は成功とは言えないだろう。
いかがだっただろうか。2021年3月期は、日産とマツダ、三菱自動車の3社が赤字だったが、2022年3月期は8社とも全て黒字で着地する見通しである。
今後の懸念は、東南アジアの一部の国においてはコロナ禍の収束の見通しが全く立っていないことである。世界的な半導体不足の解消もいつになるかまだ不透明な状況を考えると、各社の事業環境が不安定な状況はまだしばらくは続くものとみられる。
文・THE OWNER編集部