日産自動車は2022年2月8日午後、決算発表を行った。2021年4〜12月の売上高や営業利益、純利益の数字もさることながら、今期の最終益について3回目の上方修正を発表したことにも注目したい。早速、発表内容を見てみよう。
2022年3月期第3四半期の業績は?
2021年4〜12月の累計の売上高は前年同期比15.7%増の6兆1,540億3,100万円、営業利益と経常利益と純利益は赤字から黒字に転換し、それぞれ1,912億8,700万円、2,560億3,200万円、2,013億3,500万円を計上した。
前年同期比での売上高の増加、また営業利益・経常利益・純利益の黒字転換は、第1・第2四半期の決算発表においても同様だったが、今期の通期見通しについて3回目の上方修正を行ったことは市場にとってはポジティブサプライズだった。
業績見通しを上方修正した3つの理由
通期業績の3回目の上方修正では、営業利益の見通しを1,800億円から2,100億円に、純利益の見通しを1,800億円から2,050億円に引き上げた。
上方修正できた理由としては、「販売の質の向上やコスト管理の徹底によるパフォーマンス改善」「円安の進行」「原材料価格上昇影響の見直し」が挙げられている。
コスト管理の徹底について内田誠CEO(最高経営責任者)は自信を示しており、「2021年度は、計画的な新車投入や販売の質の向上、財務規律の徹底に継続して取り組むことにより、第3四半期まで着実に業績を改善してきました」と述べた。
日産の過去10年の業績推移は?
最後に日産の過去10年の業績推移を紹介しておこう。以下の表を見ると、2020年3月期に赤字転落し、翌年度も赤字を計上していることがわかる。
2020年3月期の赤字は、リーマンショックによってダメージを受けた2009年3月期以来だ。新型コロナウイルス感染拡大の影響で販売台数が減ったことや、経営再建のための費用を計上したことなどが主な理由だ。
「過去最高益7,468億円」は遠い
前期、前々期と連続で赤字を計上した日産。今回は最終損益が黒字転換することがほぼ確実であることを考えると、日産は復活基調にあるといえそうだ。しかし、純利益の見通しは2,000億円程度であり、2018年3月期の「過去最高益7,468億円」ははるか遠い。
日産は、欧州向けのガソリン車用エンジンの新規開発をやめる方針を明らかにしたことや、日本でのEVシフトに向けた動きも注目を浴びている。決算発表で明らかにされた数字だけでなく、このような動向にも注目したい。
文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)