コロナ禍による影響はどの自動車メーカーも免れていない。しかし、減産に踏み切るトヨタ、ビフォーコロナを上回る営業利益を出したマツダなど、自動車メーカーによって状況は三者三様だ。この記事では自動車メーカー各社の決算状況や最新状況をまとめる。
日本と海外におけるコロナ禍の状況は?
いま日本では、新型コロナウイルスの感染拡大の「第5波」が起きている。全国の感染者数の推移をみると第5波もピークを過ぎたかに思えるが、まだまだ予断を許さない状況だ。そして人々の「緊急事態宣言慣れ」もあり、第6波、第7波の懸念も消えない。
海外では、ワクチン接種が進んでいる国と進んでいない国で、顕著な差が出てきている状況となっている。欧米ではワクチン接種が進み、以前よりはコロナ禍が与える社会や経済の影響が小さくなっている。一方、東南アジアなどの新興国では、依然として状況が深刻な国も多い。
ではこのような中で、自動車メーカーの業績や事業活動は現在どのような状況なのか。
業績は自動車メーカー8社いずれも回復傾向
まずは決算状況からみていこう。以下が、自動車メーカー8社の2021年3月期(2020年4月〜2021年3月期)の純利益の実績と、2022年3月期(2021年4月〜2022年3月)の純利益の見通しだ。
<自動車メーカー8社の2021年3月期の純利益と2022年3月期の純利益の見通し>
2021年3月期は、日産とマツダ、三菱自動車の3社が赤字だったが、2022年3月期は8社とも全て黒字で着地する見通しである。そして2021年3月期に黒字だった5社は、いずれも純利益の金額が増える見込みで、自動車メーカーの業績は回復しているということになる。
自動車メーカー各社の最新ニュースは?
では続いて、自動車メーカー各社の最新ニュースをサマリー的に振り返っていこう。
トヨタ:9月、10月は世界生産が4割の減産に
トヨタは2021年8月、世界生産に関する計画について発表し、9月における世界生産を4割減らすことを明らかにした。さらに、10月も世界生産を4割減らす計画が発表された。新型コロナウイルスの感染拡大が東南アジアで収まらず、部品の供給が足りないことが主な原因だ。
日産:半導体不足で米工場を2週間休止
日産も減産を余儀なくされている。8月、米工場を2週間休止すると発表した。慢性的に続いている、世界的な半導体不足が原因だ。コロナ禍も半導体不足に拍車をかけている。
ホンダ:早期退職者募集に2,000人以上が応募
ホンダに関する最近のニュースでは、早期退職者の募集に2,000人以上が応募したことが話題となった。対象は55歳以上の社員で、電気自動車(EV)シフトを見据えて社員の世代交代を加速させることが目的だ。コロナ禍による業績不振が原因の早期退職者募集ではない。
マツダ:営業利益がビフォーコロナを上回る
マツダに関して特筆すべき点と言えば、2022年3月期第1四半期(2021年4〜6月)の決算において、営業利益がコロナ禍前の実績を上回ったことだろう。半導体不足による業績へのダメージを抑え、世界販売もこの1年で大きく回復したことが理由だ。
スバル:部品供給の遅れで群馬工場を4日間停止
スバルに関しては、2021年9月に群馬県の3工場を合計で12日間停止している。トヨタと同様、東南アジアからの部品供給に大幅な遅れが出ていることが原因だ。
三菱自動車:タイの工場で一部車種の生産を1カ月停止
三菱自動車は2021年9月に入り、生産拠点であるタイの工場において一部車種の生産を一時的に停止すると発表した。停止する期間は1ヵ月程度で、半導体不足が原因としている。この工場は三菱自動車にとって海外で最大規模の工場だ。
スズキ:一部の国内工場で生産を一時停止
スズキも2021年9月に一部の国内工場で生産を一時停止することを発表している。東南アジアでコロナ禍が拡大していることによる部品供給不足が原因だ。
ダイハツ:8〜9月で5万台規模の減産に
トヨタ自動車傘下のダイハツも厳しい状況が続く。2021年9月に入ってから国内工場などの稼働停止日を増やすことを明らかにした。コロナ禍による部品の供給不足が原因だ。また、9月に引き続き10月も生産を一時停止すると発表しており、8〜10月にかけての減産規模は少なくとも7万台に達するとみられている。
事業環境が不安定な状況が続く
このように自動車メーカー8社の直近のニュースを並べてみると、東南アジアからの部品供給の遅れや世界的な半導体不足により、減産を余儀なくされているメーカーが多いことが理解できると思う。
つまり、今期の業績は各社ともに回復する見通しではあるが、まだまだ楽観できる状況では決してないというわけだ。
そして、東南アジアの一部の国においてはコロナ禍の収束の見通しが全く立っていない。世界的な半導体不足の解消もいつになるかまだ不透明な状況を考えると、各社の事業環境が不安定な状況はまだしばらくは続くものとみられる。
文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)