矢野経済研究所
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2022年3月
主席研究員 飯塚智之

日本の食品市場において飽和状態の品目が多い中、今後も成長が期待される注目度の高い市場は、健康・機能性関連食品市場である。
健康長寿への関心が高まる中で、加齢に伴う悩みを抱える高齢層を中心に、生活習慣病や日々の生活の中で感じやすい身体上の悩み、エイジングケアへの関心が高まる中年層、将来への自分への投資として健康や美容に対する意識の高い若年層まで幅広い需要が見られ、健康・美容関連食品を成長分野として育成・強化を図る企業も多く、異業種参入も含めて活発な事業・商品展開が続いている。

錠剤・カプセル・粉末・ミニドリンク形状(サプリメント形状)の健康維持・美容を目的とした『健康食品』(サプリメント)の市場規模※は、2020年度が8,659億9,000万円(前年度対比0.4%増)、2021年度(見込)は8,880億3,000万円(同2.5%増)であり、コロナ禍における健康・免疫需要、巣ごもり需要などを背景に、市場規模は引き続き拡大基調にて推移している。また、2016年度から2021年度までの年平均成長率(CAGR)はプラスの1.6%であり、飽和感の強い加工食品市場の中では成長市場として位置づけられる。
健康・機能が期待される食品として近年市場が急成長しているのは機能性表示食品である。健康機能が表示可能な食品として活発な展開が見られ、コロナ禍においても免疫対策や、生活習慣病対策、ストレス・睡眠対策など、コロナ禍における健康問題への対策需要の中で、活発な商品展開やプロモーションが見られる。
機能性表示食品は、サプリメント形状、清涼飲料や調味料などの一般食品、生鮮食品が含まれるのが特徴であり、総市場規模は2020年度が3,044億円(前年度対比11.8%増)、2021年度見込は3,278億3,000万円(同7.6%増)であり、2021年度に入り伸長率はやや鈍化すると予想されるものの、引き続き高い成長率を保っている。
今後も健康・美容が期待される食品市場は成長が期待される。課題としては、一般食品や生鮮食品は、機能性表示食品における機能表示により手にするきっかけが得られやすい一方、嗜好面から、毎日同じ食品を摂取するという継続性が課題である。サプリメントに関しては、継続性が得られやすい一方で、トライアルをいかに獲得するかが課題である。

矢野経済研究所では、毎年、健康食品の摂取状況に関する消費者調査を実施している。サプリメントに関しては、コロナ禍において、健康意識が高い女性50代以上の摂取率が高まった一方、他の世代ではコロナ前後での大きな変化は見られず、また、長期的にみても摂取率は概ね3割前後で変化が見られない。高齢者人口の増加に伴う母数の増加がサプリメントの市場成長を支えると期待されるが、サプリメントに価値を見出さない、または摂取に不安を覚えるなど、摂取に慎重な層が一定数存在している。打開策として、長期的に、業界全体でのサプリメントの信頼性向上への取り組みを行い、消費者のサプリメントに対する安心感の醸成を図ることで、トライアルユースを獲得していくことが必須と考える。

※プレスリリース「健康食品市場に関する調査を実施(2022年)