最近、結果を出す経営者の共通点を見つけたいと考えていたところ、『経営者になるためのノート』に出会いました。
これは、ユニクロブランドを世に送り出したファーストリテイリング会長兼社長である柳井正氏の著書です。
この本に書かれている内容は、識学の考え方と深く通じるものがあります。
ユニクロと識学
私はユニクロが大のお気に入りです。私が20代だった20年前と比べると、商品のクオリティが明らかに向上し、驚嘆するレベルにまで進化しています。
現在ユニクロを傘下に持つファーストリテイリングの売上高は2兆円を超えています。
時価総額は一時10兆円を突破し、スペイン発祥のZARAと業界首位を争っています。
そんな圧倒的な成長を続けるファーストリテイリングの秘密に興味が引かれないはずはありません。代表の柳井正氏に答えありと確信し、この本を購入して早速読んでみました。
読了後、「識学か!」と思わず叫びそうになるほど、本書の中身は識学と通じるものがあります。内容はとてもシンプルで分かりやすく、識学を受講した経営者の方が本書を読むと、識学をより多面的に理解できるようになるはずです。
シンプルに行動する
まず、序章第一項「経営者とは」で冒頭に書かれていることを引用します。
経営者とは、一言でいえば「成果をあげる人」です。
これが私の考える経営者の定義です。経営者に求められているのは「成果をあげること」。これに尽きます。
成果とは「約束したこと」です。
『経営者になるためのノート』より
ここまで冒頭のたった三行。識学で最も重要なことを言い切っています。うなるほどシンプルです。
私の知る経営者の方でも、識学を使いこなす方ほどシンプルに行動しています。
自らの役割を明確に設定できていると、思考や判断基準が絞り込めるため、結果としてシンプルに動けるのです。
シンプルゆえに最短で動けますから、すぐに結果が出ることになり、修正も早いのです。
やはり急成長する企業は原理原則を押さえ、目の前のことを言い訳にして逃げることをしません。本書は、まさにそれを体現し着実に成長しているのがファーストリテイリングだということを実感させるくれる内容になっています。
高い基準の重要性
本書は、随所に識学のエッセンスを読み取ることができます。
識学受講者の方には共感いただけると思います。私は本書を読み、高い基準の重要性が再確認できました。
高い基準を設定し、責任と権限、そして評価を明確にすることで、人の力を引き出しているのが柳井流です。
一緒に働いたら非常に厳しくつらいけれども、成長を強く実感でき、次はさらに挑戦してしまう、ファーストリテイリングはそんな環境なのだと思います。
ファーストリテイリングは、基準を「世界一」に設定しています。
これを自らに当てはめようとすると、いきなり世界なんて、と考えてしまうのが当然ですが、読みながら感じたのは「これはやるしかない環境だな」ということです。言い訳をしている暇などない環境ということです。実はこれが免責を排除します。
目標が最初から手に届きそうだとどうでしょうか。
今の自分を変えずに達成する方法を考えることができるかもしれません。
一方で、高い基準は自分を変えざるを得ないため、言い訳をしにくくなります。
位置が重要
柳井氏の考え方は、識学では「位置」、「目標」と呼んでいるものです。
特に位置は最も重要で、最初に時間を割き、詳しく説明します。
位置とは各人の役割のことです。この認識がずれていると、どんなに一生懸命やっても、どんなに結果を出しても、それは本来求められていることではなく、意味がないという結論になります。
経営者が自らの役割を誤って認識すれば、その言動によりその下の管理職やメンバーの認識もずれることになり、組織全体が本来の役割を果たすことができずに機能不全に陥ってしまいます。
一方で、設定された役割を正しく認識し、正しい言動ができていれば、組織の歪みは修正されていきます。
この方法を理論として押さえ、逸脱しない行動をとっていただくことがシンプルな組織運営に繋がります。
本書の最後の解説のページに、この本はファーストリテイリング社の経営者教育のために「経営者になるためのノート」として一人一人のシリアルナンバーをふって社外秘で運用していたものがベースになっていることが紹介されています。
識学を受講された方にぜひ読んでいただきたい一冊です。