独占インタビュー|リローネ・グリクマン(グローバル・キーノート・スピーカー)
前編ではコミュニケーションのスペシャリスト、リローネ・グリクマンさんにコミュニケーションにおける基本について話を伺いました。後編では強力なコネクションを持つことで有名なユダヤ人のネットワークについて話を掘り下げていきます。
リローネ・グリクマン
国際的に有名なスピーカーであり、グローバルビジネス開発のブティック企業のオーナー。 グローバルビジネスの成長とデジタル化された世界でのビジネス関係のエキスパートで、彼女のブティック企業は、最先端のスタートアップ企業のグローバル市場への参入を専門に支援する他、GoogleやASICSといったグローバル企業、政府、大学などを顧客に持ち、コンサルや講演を行っている。また、持続可能な開発に関する国連の外部委員会のアドバイザーであり、国連のステージで何度も講演を行っているだけでなく、起業家精神のための教育を推進している。
―――自分に合ったコミュニケーション方法をマスターするというのは大事な点ですね!異なるバックグラウンドを持つ人々と仕事をする上での秘訣は何ですか?
5大陸の人々と仕事をし、オーストラリア、イギリス、アメリカなどいくつかの国に住んだ経験から、異なるバックグラウンドを持つ人々と仕事をするための鍵は、人間同士がつながり、気持ちよくなれるものにこだわることだと考えています。
多くの研究によると、世界中の人々には人間としての基本的なニーズがあります。これに従えば、人間関係を円滑にするための素晴らしい基礎を築くことができます。
– 親しみやすさは人を安心させます。例えば、自分に関連性があることは「安全」であると思えます。したがって、いくつかの共通点を見つけて強調しましょう。
– 人は愛されたいし、愛し返したいと思っています。あなたが好きであることを相手に示しましょう。
– 人は話を聞いてもらいたいし、尊敬されたいと思っています。まずは人の話に耳を傾け、関心を持ってください。
– 人は幸せになりたいと思っています。冗談を言い合ったり、楽しんだりしましょう。
– 人は与えることで満たされます。相手があなたを助けてくれるようにしましょう。
– お互いに心を開いて話ができるような安全な環境を作りましょう。
これがコミュニケーションにおける秘訣です。これをマスターすれば、ほとんどの人と仕事ができるようになります。
―――日本では多くの人がユダヤ人のネットワークに興味を持っています。ユダヤ人ネットワークのユニークな点は何だと思いますか?
人は自分に似たものに惹かれるものです。日本人は日本人同士でいることに安心感を覚えるでしょうし、柔道家は柔道家同士でいることに安心感を覚えるでしょう。 アーティストはアーティスト同士でいることに安心感を覚えるでしょう。…. なぜなら、あなたには多くの共通点があるからです。そのため、自分とは何の関係もない見ず知らずの人を助けるのとは違い、お互いに寄り添い、支え合うことに安心感を覚えるのではないでしょうか。
ユダヤ人も同じです。加えて、生存者や狩猟民族としてのユダヤ人特有の歴史が、私たちを団結させました。また、ユダヤ教は多くの温かくもてなしやすい習慣に基づいており、ほとんどのユダヤ人は家から離れたところでもくつろぐことが出来ます。それによって、他のビジネスや個人的な関係を築くことができるのです。ドアは簡単に開くことができますが、「話をする」、「信頼を築く」、「うまくつながる」ことが必要になります。
私の経験では、「ユダヤ人のネットワーク」が私を大いに助けてくれました。私はオーストラリアに一人で引っ越し、その後ニューヨークに引っ越しましたが、地元のユダヤ人コミュニティとつながると、仕事を見つけたり、友達を作ったりする際に非常に大きなサポートを受けることができました。また、9月にはモナコに一人で行ったのですが、その日はユダヤ教の祝日であるスコットの日でした。私は社交的になりたかったので、信心深いわけではありませんが、シナゴーグに行きました。祝賀会に参加して、全く知らない人と友達になり、自分の家のように感じました。これこそが、私の言う「美しさ」なのです。二人が共有する歴史や価値観に基づいて、あなたの背中を押してくれる人たちがいる。
このコンセプトは誰にでも役立つものです。街のコミュニティ、大学の同窓生のコミュニティ、ランニングチームなどなど。それぞれのコミュニティに属していれば、たとえその街の住人全員を知らなくても、共通の基盤でつながっています。私はいつも、自分が属しているコミュニティを活用することを勧めています。
―――ユダヤ人ネットワークというと何か秘密がありそうなイメージでしたが、実はとても人間らしく温かいコミュニティなのですね。リローネさんは日本を訪れ、日本の起業家達とも話をした経験があります。その経験から、日本人とイスラエル人は互いに何を学ぶことができるでしょうか?
2018年に東京を訪れたことは忘れられない経験となりました。スポーツにおけるイノベーションとアントレプレナーシップをテーマにした東南アジアの会議に招かれて講演を行い、オリンピック委員会の主催で柔道のナショナルトレーニングセンターを訪問し、日本の起業家とも話しました。
また、日本人とイスラエル人の文化の違いについて多くのことを学び、「イスラエルのビジネス文化」という本を元に研究した結果、非常に興味深い知見を得ることができました。それは、イスラエル人と日本人の文化は、世界の他のすべての文化から限りなく遠いところにあります。世界中の他の文化とはかなりかけ離れているのです。これこそイスラエルと日本が違いに多くを学び合える理由だと考えています。
例えば、イスラエル人は非常にオープンで外向的、日本人は保守的で表現力に乏しいと言われています。イスラエル人はカジュアルで上下関係がなく、それを尊重します。一方で、日本人はフォーマルで上下関係を重視します。他にもイスラエル人は「スピード重視」で、仕事に時間をかけない。一方、日本は細部まで丁寧に仕事を行うことに重きを起きます。
しかし、どちらの文化にも共通していることがあります。それは信頼感です。信頼関係を築くには時間がかかりますが、一度形成された信頼関係は長期的に定着し、尊重されます。
―――私もイスラエルに住んでいた経験がありますが、日本とイスラエルはまさに対極だと感じました。一般的に、日本人はグローバルビジネスの世界での外交やネットワーキングが苦手だと言われています。日本人の読者にどのようなアドバイスをしますか?
人は、自分とつながりがあり、心地よく感じる人とビジネスをするものです。日本の文化はとても豊かで美しく、独自の社会規範を持ち、それを何世代にもわたって維持することができました。一般的なグローバルビジネスの世界、つまり「西洋」のビジネスの世界では、異なるルールがあり、それを埋め合わせる必要があることもあります。
私ができる最善のアドバイスは、準備をすること、相手の背景やビジネスコードを学ぶことです。また、欧米のビジネスオンラインコース(Coursera、udemy、米国の大学のオンラインコースなど)に参加して異文化に浸り、そのようなスキルを高めることも役立ちます。また、コミュニケーションをとる際には、先ほど述べた「人とのつながり」の基本に立ち返ってください。そして、これらのコミュニケーションスキルを身につけるための練習をすることが大切です。
私たちはついつい強力なネットワークが全てを解決してくれるようなイメージを持ちがちですが、そのネットワークを支えるのはとても基本的なコミュニケーションスキルであることがリローネさんの話を通して伝わってきます。また、彼女のアドバイスは誰でも実行することが出来る基本的なものばかりです。是非皆さんも試してみてはいかがでしょうか?