食品産業新聞社
(画像=食品産業新聞社)

〈中下旬にかけて下げ相場、感染再拡大で枝の購買は慎重に〉
コロナ2年目の今回の年末年始の末端消費は、地域によって温度差がみられた。各地の量販店バイヤーや業務卸にヒアリングしたところ、地方の小売店や飲食店では帰省や旅行者が増えたことで、“2年ぶりに家族・親戚同士で良いものを食べよう”と、和牛はもちろん牛肉全体の売行きは堅調だったようだ。都心部では人出が増えたことで飲食店の販売はマズマズだが、量販店では計画(概ね前年並み)をやや下回ったようだ。

ただ、日本海側など大雪に見舞われたエリアは厳しかったほか、都心部の店舗も競合店の休業により年始は、「あらゆる商品が売れた」(GMS/総合スーパー)と好調だったところもある。商品ではカタロースを中心にスライス関係、とくにすき焼き用が好調だったほか、ローストビーフ・煮込み用のかたまり肉も堅調。寒波の影響でステーキ、焼肉関係は伸び悩んだようだ。畜種別でみても、「前回は巣ごもり需要で豚肉、鶏肉、ミンチなど日常品が大きく伸びたが、今回は和牛やローストビーフなどの高級食材が伸長した」(関東の卸筋)など、“プチ贅沢”として牛肉消費は堅調だったといえる。

では、1月はどうか――。もともと牛肉にとって不需要期に当たるが、ここにきてオミクロン株の感染拡大によって、「まん延防止等重点措置」の適用など、一転して消費面で不透明感が強まっている。下旬に再開が期待されたGoToトラベル事業も赤信号が灯っている。このため、月初の補充買いが一巡した後は、手当ては慎重にならざるを得ず、枝肉相場も弱気の展開となりそうだ。このため、1月平均では前月から200~300円程度値下がりするとみられる。

〈供給見通し〉
農畜産業振興機構の牛肉需給予測によると、1月の成牛出荷頭数は和牛が前年同月比2.1%増の3.5万頭、交雑種が同11.3%増の1.9万頭、乳用種が同5.6%減の2.5万頭と予想している。和牛は12月の相場高で前倒し出荷が多かったとみられ、その反動と1月の相場下落見込みによる出荷控えも出て、この予想よりも減少する可能性がある。輸入品はチルドが同12.7%減の1.8万t、フローズンが同4.5%増の2.4万t。チルドは外貨高で買付けが少ないうえに、工場の休暇、ワーカー不足による生産遅れ、物流不安があり、前月に続き一部ホルスに代替の引合いが続くとみられる。

〈需要見通し〉
中間流通段階での越年在庫は、すべての畜種で枝肉はほとんどなく、部分肉もほぼきれいに払しょくしたもよう。年明け後の末端の発注も一部入っているものの、コロナの状況もあり静かな状況となっている。このため問屋筋も模様眺めの対応となり、枝肉の手当ても当用買い中心となりそうだ。

末端需要は年末年始の出費増の反動で節約意識が強まるだけでなく、相次ぐ物価・食品価格の値上がりで単価の高い和牛上位等級・高級部位を中心に例年以上に苦戦を強いられそうだ。部位では切り落とし・小間切れ、煮込み用などウデ・モモの低価格部位にシフトするとみられる。「すでに3日の夕方ぐらいから精肉の売行きは、豚肉・鶏肉にシフトしている」(同)との声も。輸入牛もコスト高・物流遅延などの影響から量販店の売込みは例年以上に小さい。

〈価格見通し〉
年明け早々の枝肉取引は、和牛メス以外は高値を維持している。消費の先行き不安から様子見となり、補充買いが一巡すれば下げに転じる可能性がある。比較的堅調を維持するのがホルスとみられる。月間平均相場は和去A5で2650円前後、A4で2,250円前後、A3で2,050円前後、交雑去はB3で1800円前後、B2で1650円前後、乳去B2は1010円前後と前月から200~300円程度値下がりが予想される。

〈畜産日報2022年1月11日付〉