食品産業新聞社
(画像=食品産業新聞社)

〈輸入品は徐々に需要回復、輸入増加で需給はバランス〉
11月の鶏肉需給は、週を追うごとに朝晩の冷え込みが増したことで、量販店を中心とした国内生鮮品は後半にかけてモモを中心に需要増加となった。ムネやササミもそれなり需要に支えられるものの、売り場はモモにシフトし秋口のようなひっ迫は見られなかった。それでも凍結品は加工筋需要が引続き堅調で、好市況を維持した。

生産面ではことしも11月上旬から高病原性鳥インフルエンザが発生、4例目までは全て採卵鶏の発生となり、2020年のような密集地域での続発となっておらず、鶏肉供給への影響は見られない。ただし、12月に入り5例目が確認され、ことし初めて肉用鶏農場での発生となった。輸入品は夏以降、タイ産の供給が不安定だが、供給不安の底を脱しつつある。今後、安定供給が続けば国内仲間相場も落ち着くものと見られる。

需要面では、飲食店の酒類提供の制限が解除されたことも手伝い、徐々に需要回復が見られる。だが、大手外食・中食向けが中心で、中小・零細外食向けの卸ルートでは需要回復が遅れている。

11月の平均相場は、日経加重平均でモモが620円(前月603円)、ムネが333円(前月328円)と正肉合計953円、前月比22円高となった。昨対比ではモモが35円安、ムネは31円高となり、正肉合計では4円安となった。

[供給見通し]
日本食鳥協会がまとめたブロイラーの生産・処理動向調査によると、12月の生体処理羽数は前年同期比0.7%増、処理重量は0.6%減となった。それでも2021年通年では羽数0.5%増、重量1.6%増と予測しており増回傾向が維持されている。

地区別では、北海道・東北は羽数が1.6%減、重量は1.9%減とともに減少見通し。南九州では羽数が2.0%増、重量が0.2%増と羽数は増加するものの、重量はほぼ前年並みを見込んでいる。2022年1月の見通しでは全体で羽数が4.6%増、重量が3.5%増としており、北海道・東北、南九州の主要生産地での増加に支えられ、昨対増を見込んでいる。

農畜産業振興機構の鶏肉需給予測によれば、12月の国産生産量は15.8万tと前年同月比3.1%増を見込む。前月比では1.1万tの増加を見込み、10〜12月の3カ月平均予測でも2.7%増の15.1万tと、15万tを超える見通しだ。

輸入品は、タイ産は引続き、新型コロナウイルス感染症の影響で減少見込みだが、タイ産代替需要や国内在庫減少などにより、ブラジル産の輸入量増加が見込まれるため、前年同月を大幅に上回る5.2万tを見込む。前年同月比では21.7%増となる。11月に続き5万tを超える予測のため、3カ月平均予測でも5.1万t(12.4%増)と見込んでいる。出回り量に対して十分な輸入量が見込まれることから、12月末在庫は横ばいでの推移が予測される。

[需要見通し]
朝晩の冷え込みも本格化し始め、量販店ではモモや手羽元の鍋需要本番を迎える。モモは供給量が潤沢のこと、凍結在庫もそれなり確保しているため、年末需要が本格化する前の上旬は荷余り感を警戒する声も聞かれる。中旬以降はクリスマスや年末需要、一部量販店では年始の営業を取りやめる影響で、年内の前倒し需要が期待されることで、需要増加により相場も強気に推移するものと見られる。

輸入品はタイ生産が回復しているようだが、数量確保は難しく、調達コスト上昇により需給がバランスしていることもあり、相場も高値を維持するものと見られる。

[価格見通し]
国産生鮮モモの日経加重平均は12月2日に627円、ムネは340円となった。モモは年末に向け需要が高まるため、月間平均では635円前後、ムネはもちあいで340円前後と見込まれる。農水省市況ではモモが650円前後、ムネは350円前後と見込まれる。

〈畜産日報2021年12月6日付〉