銀座エリア最大級の商業施設「GINZA SIX」で、2021年11月8日(月)より「The Show─歩くだけで輝くクリスマス─」と題したクリスマスイベントがスタートした。

このイベントは、アート、音楽、グルメなどをテーマに行われるものだが、中でも注目したいのが、「GINZA SIX」の1Fエントランスを彩るデジタルアート、《OUR NEW WORLD》だ。こちらはアーティスト・清川あさみによる新作で「いのちと光の柱」をテーマに制作されたもの。

点灯式当日に行われたトークイベントでは、清川あさみが本作に込めた思いや見どころを語ってくれた。アーティストの言葉から、その一部をご紹介したい。

GINZA SIX 点灯セレモニーにて。写真左:アーティスト・清川あさみ/写真右:モデル・秋元梢
(画像=GINZA SIX 点灯セレモニーにて。写真左:アーティスト・清川あさみ/写真右:モデル・秋元梢)

デジタルアート新作《OUR NEW WORLD》に込めた思い

今年も世界中で色々なことがあったと思うのですが、特に今年はコロナ禍ということもあったので、「クリスマスモニュメントとして何をつくればいいのか?」というのは、結構悩みました。

でもそんな時に一度、故郷である淡路島に戻ったんですね。淡路島はとても自然豊かな場所なのですが、そこで見た朝日などにエネルギーをいただいて、改めて命の美しさや生命の尊さを感じることができました。そこで祈りと希望を込めて、「ひとつの命」というテーマで作品をつくれたらいいな、というのがありました。

そして自然から得たインスピレーションを、古代の神話の風景と親和性の感じられる風景であるここーー未来につながる銀座という都市とを、一つのストーリーで繋いでかたちにできないか?と思ったところから始まりました。

GINZA SIX 点灯セレモニーにて。
(画像=GINZA SIX 点灯セレモニーにて。)

制作にあたって、「銀座の街」からインスピレーションを受けたことは?

銀座は最先端のテクノロジーが集まってくる場所でありながらも、一方では歴史もある古典的な場所。まさに「未来と古代が見事につながる場所」だと思うので、つくりやすかったということはあります。そういう意味でも、今回は自分のコンセプトと銀座の街のイメージがうまく繋がりました。

また、この作品はベースの部分を刺繍でつくっていることもあるので、実際に見た雰囲気もちょっとざらついた手触りなど、人間の痕のようなものが見えるのではないかと思います。

今回はクリスマスツリーというよりは、光や命を感じられるようなものを意識してつくりたいと思っていたので、銀座という都市の中で自然を見れるのは面白い体験になるんじゃないかと思います。

制作過程について

こちらは元々、3メートルくらいのファブリックに刺繍を施した「あめつちのうた」という作品がベースになっています。これを二枚、合わせて6メートルにしているので、ベースづくりは結構長くて、だいたい一年くらいかかっています。

《OUR NEW WORLD》はそこから始まるストーリーで、古代から現代の街にいる都市を歩いている人々を糸で繋いでいくようなイメージでつくっています。最終的にはベースの刺繍作品をアニメーションに落とし込み、LEDで光を表現しました。

コロナ禍で生まれた変化は?

コロナ禍では、「つくりたい」という気持ちが強くなって、制作に没頭していました。淡路島で自然のエネルギーを感じたことが、やはり大きかったと思います。また、そういう時間の中で改めて原点に戻ることもでき、より表現したいことが増えました。

GINZA SIX 点灯セレモニーにて。
(画像=GINZA SIX 点灯セレモニーにて。)

《OUR NEW WORLD》というタイトルに込めた想い

《OUR NEW WORLD》には、ここからまた何かが始まる、始まったらいいなという思いを込めました。これを見ていただくことで、光や生命の息吹、希望を感じてもらえたら本当にいいですね。

これからどういう風にそれぞれの価値観をもって生活していくか?ということに向き合う一年になったと思うので、それをみんなで考えてみようじゃないですけど、この作品が新しい生活スタイルや新しい世界を考えていけるような、一つのきっかけになればいいなと思います。

制作の中で、夫・名和晃平の作品からインスピレーションを受けることは?

私は元々ファッションの世界にいて、そこからアートの世界にきていますが、名和は完全にアートの世界にいるので、そういう意味では、違った視点で作品を見ることができて、お互いものすごく刺激を受けていると思います。日常がアートと言われているので、普段生活をする中で色々な刺激を受けているのではないでしょうか。

「いのちと光の柱」
(画像=「いのちと光の柱」)

まとめ

コロナ禍で社会が不安感に包まれる中、古代から未来へとつながる希望に溢れた光の作品を制作したアーティスト、清川あさみ。今回、清川と元々親交もあり、点灯セレモニーと続くトークセッションに登場したモデルの秋元梢も「(清川)あさみさんの作品からは、凹凸だったり平面にない美しさをいつも見せてもらっている。でも今回は映像なので、凹凸や糸の素材が、また違ったかたちで温かみをもって伝わってきた」と語るように、この作品に触れることで銀座の街の中で、自然の風景の懐かしさや温もりなど、貴重な感覚がもたらされることになるだろう。

また、GINZA SIXの館内各所のクリスマスツリーに施されたオーナメントとエスカレーターの装飾も清川がプロデュースしているほか、今春より中央吹き抜けを飾る「Metamorphosis Garden(変容の庭)」は清川の夫でもある彫刻家・名和晃平の作品であり、今回、清川の新作が加わったことで、「初の夫婦によるアート作品の共演」という点にも注目が集まる。

一秒ごとに変化し、煌めく光がその度に異なる表情を見せる《OUR NEW WORLD》。アーティストがこの作品に込めた願いに思いを馳せながら、GINZA SIXであたたかなホリデーシーズンの時を感じてみてほしい。

OUR NEW WORLD

会期:2021年11月8日〜12月25日
会場:GINZA SIX 1Fエントランス
住所:東京都中央区銀座6-10-1

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取材・文:小池タカエ