1927年以来、エンジェルベーカリーは、エンジェル家によって運営され、世界中のパン&ペストリー愛好者の人気をさらってきました。
今や、エンジェルベーカリーはマクドナルドやドミノスピザの公式な納入業社であり、イスラエル最大の製パン業社としての位置を保ちながら、数えきれないほどの国々にそのビジネスを広げています。
今回、創業者のお孫さんにあたる現在のエンジェルベーカリー社CEO、ヤロン・エンジェル氏に、その経営手法から、家族の大切さ、イスラエルのパン事情、そして将来への展望を含たお話をお聞きすることができました。
エンジェルベーカリーの起源
エンジェルベーカリーを立ち上げる前、ヤロンの祖父はエルサレムの高校の教師でした。その高校に新しい校長が、家族と共に赴任してきたのです。そしてヤロンの祖父は、その校長の妹と恋に落ちます。
「いやね、『妹さんと結婚させて下さい』との祖父の願いに、その校長からは『ウチのお姫様を高校教師風情なぞにやるわけにはいかん!』と言われたそうなんです。」
その校長と妹さんの気を引くために、ヤロンの祖父は教師を辞め、オーストラリアからの小麦輸入などに携わる貿易商の仕事を始めます。
その取引先の一つに、経営難に陥っていたエルサレムの小さなベーカリーがありました。そのベーカリーは、立ち行かなくなった支払いの肩代わりに、そのベーカリー自体をヤロンの祖父に譲ることになったのです。
ヤロンの祖父は、家族全てをそのベーカリーの仕事に引っ張り込みました。そして急速な事業拡大にも関わらず、彼は従業員全てを、血は繋がっていなくとも、家族のように扱いました。
パンの家族
「私たちのロゴとモットーは『パンの家族』なんです。家族というものの大切さを私たちは信じていますし、従業員全てが、私たちの家族の一員であると感じて欲しいと思っているのです。」
ヤロンは、さらにこう強調します。
「家族が一緒に働くことには、時には嫌悪感があったりしますよね。でも私たちは、常に従業員に、君たちの家族も一緒に連れておいで、と奨励しているんですよ。エンジェルベーカリーには本当に様々な家族がいますし、同じ伝統を持った様々な世代の人間がいることを、私たちは誇りに思っているのですよ。」
「まあ、自分の名前を汚す苦情は、誰しもが聞きたくない事じゃないですか」と、彼は語ります。
エンジェルベーカリーの名前には、無論責任が伴います。ヤロンはすべての製品にエンジェルの姓を冠する事で、その優れた伝統がちゃんとそこに生かされるよう、努力を惜しみません。
「私たちにとって最も大切なことは、私たちのお客様、納入業社、そして従業員の全てが、出来るかぎり幸せに過ごしてくれることなんです。」
エンジェルベーカリーの歴史は長く、それはイスラエルの文化の一つになっています。お客様に毎日おいしいパンを届けることで、今やエンジェルベーカリーはイスラエル文化を奏でる一部になっているのです。
例えば、ユダヤ教徒が週末にだけ食べる伝統的なパンに、ハッラーというパンがあります。これは伝統的に手作りで作られてきたものなのですが、エンジェルベーカリーは、週末だけの従業員を雇って、このパンを伝統に完全に沿った形で作っているのです。こうやって、エンジェルベーカリーはイスラエルの伝統を現代に生かす役割を担っているのです。
海外における成長と、マクドナルドやドミノスピザの正式納品業社としての責任
イスラエルの主要製パン業社として、エンジェルベーカリーは自社製品の輸出も行っています。それは、イスラエルの伝統的なパンを世界に知ってもらいたい、という願いでもあります。
「無論、他の国々にも素晴らしいパンはたくさんあります。でも、私たちは、そのようなパンの競争相手になろうとしているわけではないんです。」
ヤロンはその代わり、イスラエルのピタパンを他の国々の人に知ってもらいたいと考えています。ニュージャージーに新たなパン工場を建設することで、ピタパン普及計画は既に動き出しています。それ以外にも、デンマーク、オランダ、オーストラリア、シンガポール、そして日本といった国々に、自社製品を輸出しています。
日本においては、輸入販売を行うファラフェルブラザーズと提携しており、コストコでの扱いのほか、様々な日本のレストランやホテルと契約を結んでいます。
また、エンジェルベーカリーは、マクドナルドとドミノスピザの正式な納入業社でもあります。イスラエルにあるマックやドミノスに行けば、それは、自動的にエンジェルベーカリーのパンを食べている事になるわけです。全世界的にも、エンジェルベーカリーは様々なレストランと契約しており、そうとは知らずにエンジェルベーカリーのピタパンを食べている、ということもあるかもしれない訳ですね。
エンジェル家の次なる挑戦
将来の展望に関してお聞きすると、ヤロンは笑顔で顔を輝かせました。
「このパンデミックの時代、将来私たちがどうなるのか、正確なところは分かりません。でも、私たちが守ってきた伝統は、しっかりとその中に残っていくことだけは確かだと思います。」
この記事を読んでいただいている読者の皆さんが、なるべく早くイスラエルを訪問して欲しいと彼は願っています。
「いや、イスラエルには絶対にいらしてもらわねばならないですね。ピタパンをはじめ、様々な素晴らしい食べ物がありますし、そんな私たちの食文化を、あなたもきっと素晴らしく気に入られることと思いますよ!」
エンジェルベーカリー
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