かつては一つの分野を、一流の域まで極めることがビジネスマンの美徳とされていた。会社員でも「経理マン」「銀行マン」などと呼ばれたり、経営者でも「◯◯の専門家」と言われたりする人がいる。
だが、今の時代は「一つの分野で一流を目指す」というのは、複数のリスクが存在する。今回はそのリスクについて解説をしていきたい。
ビジネスの生き残りは容易ではない
変化が早く、従来の常識がアッサリ覆るスピーディな現代においては、ビジネスの寿命は圧倒的に短くなっている。もちろん、すべての分野についていえることではないが、あなたの経営する会社が10年先、20年先に残っている可能性は、そうでない可能性より圧倒的に少ないことは間違いないだろう。
さらに、一世を風靡したプロフェッショナルも、後世に追い抜かれてしまうことは大いにある。まだ確実な理論として証明されてはいないが、人類は時間の経過とともに進化していると主張する学者もいる。これをフリン効果という。
その理由は、後世世代は若い時期から先端のテクノロジーを使いこなす環境が整っており、さらに過去に比べてより多くの情報処理を余儀なくされるので必然的に脳が発達する。これを筆者は「世代間におけるリープフロッグ」と呼んでいる。つまりは、いつの時代も常に若者がもっとも優秀であるということになる。
この理屈が通っているとするならば、現役世代は現在のビジネスの需要衰退や市場縮小、さらには後輩からの突き上げにより、生き残りが容易ではないことが想像に難くない。
一つの分野の一流はリスキー
1つの分野を1流に極めること、そのものもリスキーだ。一分野の一流になるには、限られた枠を奪い合う競争に打ち勝つ必要がある。なんせ専門家として名を馳せるには、その他の専門家のイス取りゲームに勝利しなければいけない。
筆者の知人にアフィリエイトで稼いでいる人間がいる。彼は最高月収500万円以上を荒稼ぎしていた。だが、ライバルの台頭、Googleのアルゴリズムの変更などのビジネス環境の変化で、現在は同じジャンルで月収100万円を下回るところまで下がってしまった。
他にも、ITスキルの講義業をしていた知人も、取り扱っていたITスキル自体に需要がなくなってしまったことにより、大幅な収入減を余儀なくされてしまった。
このように1つの分野で稼いでいても、ビジネス環境の変化の影響を受けることで一気に稼げなくなってしまう危険性は常にある。安定していると言われる物販でも、それは変わらない。
1.5流の分野を3つ掛け合わせる
だが、一つの分野ではなく1.5流のスキルを複数掛け合わせことで希少人物になることは可能で、それは一分野で一流になるより難易度も低く、希少性の原理で生き残りも可能だ。
筆者自身もそれを活用している。筆者はフルーツギフトビジネスで起業して、現在も経営をしている。フルーツを販売する業者は、世の中にたくさんいる。大手のネットショッピングモールでフルーツ名を検索すれば、とうていそのすべてを見て回ることが不可能なくらいたくさんのショップが出てくる。
そこで筆者は差別化をするために、複数の要素を取り入れた。まずは文章を書く、ということである。具体的には影響力があり、PV数がたくさんあるネットのメガメディアに記事を寄稿するということである。
フルーツビジネスを手掛けて、尚且つビジネス記事を書く人はそうたくさんいない。さらに筆者は暗号資産へ積極投資をしており、1コインだけで数千万円分をするほど入れ込んでいる。この暗号資産投資の知識を活用して、「高級フルーツの産地偽装における、ブロックチェーン技術の有用性」について記事を書いた。
すると、この記事は大きな反響を得て、他のメディアなどでも取り上げられたり、取材依頼を頂いたりした。この場合は「フルーツ×ビジネス記事×ブロックチェーン」という3つの分野を横断したことで、希少性を発揮できた一例になるのではないだろうか。
複数の分野をかけ合わせて、希少性の高い人物を目指すことを「タグを増やす」とホリエモンこと堀江貴文氏も主張している。1流ではなく、1.5流で複数の分野を持つことが重要なのだ。
筆者はフルーツビジネスの他にも、英語学習のeラーニングプログラムも手掛けて収益化している。こちらも単に英語力だけでなく、「英語×投資」「英語×人工知能」など複数のタグをかけ合わせた記事を執筆して、ビジネスの拡大をしている。
1つの分野で1流を目指す生き方は、イチロー選手のように超プロフェッショナル枠しか許されない厳しい世界だ。天才ではない経営者は、スキルのかけ合わせで生き残りを図るのが賢明と考える。
文・黒坂岳央(水菓子 肥後庵 代表・フルーツビジネスジャーナリスト)