――この5年間を振り返って
第五期中期経営計画(2017〜2020年度)では将来に向けた基盤固めの期間と位置づけ、成長戦略、構造改革、経営基盤の強化に取り組んだ。成長戦略では高付加価値品の売上総利益に占める構成比が向上しており、引き続き拡大を図っていく。海外事業については、タイに続きマレーシアに拠点を設け、第一歩を踏み出した。
構造改革については、SKU(Stock Keeping Unit)の削減、グループ会社の統合、インドでの海外事業からの撤退やケミカル事業の譲渡などを実施した。引き続き構造改革を進め、より筋肉質な事業構造を構築していきたい。
経営基盤強化では、独立社外取締役を3名以上とするなどガバナンス体制の整備や、人事制度の改定、コーポレート部門の強化に取り組み、成果が出ている。また、2021年4月より新たな企業理念体系を制定するとともに、コーポレートブランド「JOYL(ジェイオイル)」をスタートさせた。第六期中期経営計画においてグループ一丸となり、さらなる企業価値向上に取り組んでいく。
――「ニューノーマル時代」の成長戦略は
市場の構造変化やお客さまのニーズの変化を迅速に捉える必要がある。新型コロナウイルス感染症の影響は今後も続くと考えられ、ライフスタイルや働き方の変化ということもあり、生活者の食の在りようも大きく変わっている。外食産業は依然として厳しい事業環境下に置かれている一方、これまで以上に内食の需要が拡大するものと考えられる。こうした中、生活者の健康に対する意識が今まで以上に高くなっている。また、社会課題に対する個々人の向き合い方も、今後、ますます強くなっていくと感じている。
それらを当社の事業に置き換えると、厳しい環境に置かれる外食産業のお客さまへの提案活動をより強化すべく、さまざまな油の使い方をされるお客さまに対し、当社の商品の機能を最大限発揮できるような具体的な提案を地道に取り組んでいく。
デリバリーやテイクアウトの需要が増えていく中で、出来たてのおいしさを維持するという課題に対しては、油脂に加え高付加価値のスターチ製品を有する当社ならではのアプローチでお客さまの課題解決に貢献していきたい。
〈社会課題に対し、最適解を探し続けて技術を磨いていく〉
また、社会課題に関して、企業が果たすべき責任の大きさをしっかりと受け止めていく必要がある。社会負荷をいかに低減していくかが重要な取り組みだ。長持ちする油ということでご支持いただいている業務用油脂商品「長徳」シリーズでは、今回、「長徳」キャノーラ油において、通常の菜種油との比較で20%のCO2削減効果が認められ、国際規格準拠のCFPマークを取得した。資源の有効活用では、秋冬新商品で採用した紙パック容器のように、プラスチック使用量の削減にも取り組んでいく。
絶対の解というものはなく、いかに広い視点で課題を捉え、最適解を探し続けるかが重要である。社会負荷の低減は継続して取り組んでいくべきテーマだ。お客さまの求めるものと、社会課題との交点で、しっかりと技術を磨いていくことが求められる時代だと感じている。
――歴史的な原料高騰下での外食ユーザーへの対応について
われわれ以上にお客さまは大変な思いをされている。どのような形でお役立ちができるかを引き続き考えていく一方、原料高による価格改定のお願いの難しさを感じている。この1年で世界の食用油の価格はFAO(国連食糧農業機関)のデータでも倍近くになるなど、グローバルで油の価格が高騰している。短期的な需給要因もあるが、環境問題に対応するバイオ燃料需要など、中長期的な構造的変化の可能性も踏まえ、状況をご説明しながら、メーカーとして安定供給の責任を果たしていくとともに、油の最適な使い方をお客さまにしっかりと提案していきたい。
〈高付加価値品の定着・間口拡大に継続的に取り組む〉
――第六期中期経営計画における高付加価値品の戦略を
ここ5年の動きとして、油に対する世の中の捉え方が大きく変わった。油は体にとって必要な栄養素であり、バランスよく摂ることが大事であると認識されてきた。これは業界としての地道な努力が実った成果だ。そのような追い風を一過性のブームで終わらせず、高付加価値商品を定着させ、間口を広げていくことに継続して取り組み、社会課題、顧客課題の解決に貢献していく。
生活者の健康志向やサステナブルな消費行動への関心の高まりを受け、プラントベースドフード(PBF)が注目されている。欧米では相当な規模にまで拡大しており、日本においても今後の成長が期待される。当社ではUpfield社と独占的な販売契約を結び、世界50カ国以上で販売されているプラントベースドチーズ(植物性チーズ代替品)の世界的ブランドViolife(ビオライフ)を導入した。植物がもたらす価値を捉え、商品として提供していくことで新たなカテゴリの構築をめざす。9月にまずはエリアを絞って家庭用から先行し、10月には業務用の商品を投入する。
――オリーブオイル市場の拡大をけん引してきました
オリーブオイルは25年展開してきて、累計4億本以上を売り上げた。品質が一番のポイントであり、輸入にあたり相当厳しい基準を設けている。サプライヤーの選定に関しても100以上のチェック項目を設け、厳選するとともに、輸入時には窒素充填をして酸化を防ぐなど、鮮度維持の取り組みをおこなっている。官能評価も実施しており、当社のオリーブオイル官能評価パネルはAOCS(アメリカ油化学会)オリーブオイル官能評価技能試験プログラムで1位を獲得した。日本のお客さまの敏感な舌に評価される品質を担保し、信頼されるブランドになるため緊張感をもって取り組んでいる。そのうえで、日本の食卓に合うおいしさ、使い方の提案などの情報発信をおこないながら、着実に市場を広げていきたい。
国産のオリーブオイルについても、神戸、伊豆、静岡で取り組んでいる。栽培や搾油に携わることで、改めて気づかされることも多々あり、オリーブに対する知見に広がりと深みが出ることを期待する。単にビジネスということだけでなく、地域や農業に対し何ができるのか、という事を長期的な視点で考えていきたい。今回、EC専用商品として国産オリーブオイル「JOYL ひとさじの旬」を投入した。非常に品質が良く、これからの拡大を期待している。
〈マーケティングとR&Dの強化が重要なポイント、北米での成長実現へ〉
――海外を含め高付加価値品で2030年度に売上構成比50%を掲げています
汎用油の事業が大切なことは変わらないが、前中計と同様、量的な拡大だけでなく質的に事業を成長させるため、高付加価値品の展開を一層加速していく。ニューノーマルを考えた際も、社会的な要請や、生活者のニーズの変化にいかに対応できるかが重要である。インサイトをしっかり把握し、商品に反映していくために、マーケティングとR&Dをいかに強化していくかが第六期中期経営計画の重要なポイントになる。
――SKU削減について
進捗は遅れたが、採算を改善したうえ継続することとした商品も含め、9割程度の見通しがつき、目標とした水準に到達したと考えている。1つ1つの商品の存在意義を考える上でも、大事な取り組みだった。営業や事業部だけでなく、生産部門から見た最適な製品構成の在りようなど、多様な目線で考える事が大切であり、新たな気付きを得られた。
――今後の海外展開について
第六期中期経営計画では、ASEANと北米を重点地域と位置付けている。ASEANは人口増加が見込まれるマーケットであり、製菓・製パン向けやテクスチャー素材という基盤を活用し、成長する市場をしっかりと取り込んでいきたい。北米については、今後、機会を見定めていく。当社の強みや技術を活かし、成長を実現したい。
〈大豆油糧日報2021年10月12日付〉