矢野経済研究所
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2020年度の教育産業全体(主要15分野計)は前年度比2.7%減の2兆6,997億1,000万円

~主要15分野のうち、幼児向け通信教育、学生向け通信教育、社会人向け通信教育、幼児向け英会話教材、eラーニング、学習参考書・問題集の6分野が市場拡大~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内の教育産業市場(主要15分野)を調査し、サービス分野別の動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。

教育産業全体市場規模推移(主要15分野計)

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1.市場概況

2020年度の教育産業全体の市場規模(主要15分野計)は、事業者売上高ベースで前年度比2.7%減の2兆6,997億1,000万円となった。 少子化の進行によって需要層の減少で厳しい市場環境にある中、学生や未就学児向けの教育関連サービスは底堅い需要に支えられ、これまで市場は緩やかな拡大を継続してきた。しかし、2020年度は新型コロナウイルス感染症拡大の影響によって、多くの業界・企業にマイナス影響が及んでおり、伸長率の鈍化或いはマイナス成長に転じる市場も散見され、全体市場はマイナス成長となった。

教育産業全体市場の主要15分野のうち、2020年度において前年度より市場規模が拡大した分野は「幼児向け通信教育市場」、「学生向け通信教育市場」、「社会人向け通信教育市場」、「幼児向け英会話教材市場」、「eラーニング市場」、「学習参考書・問題集市場」の6分野であった。

2.注目トピック

コロナ禍での事業活動・サービス提供体制の確立によって教育関連市場の多くは回復基調に

コロナ禍が継続している中、コロナ禍での事業活動・サービス提供体制が確立・定着したことで、2021年度は2020年春先ほどの大きな混乱は見られず、教育関連市場の多くは回復基調となっている。とくに、対面型・集合型の教育サービス市場の多くは、2020年度は市場縮小に転じるケースが散見されたが、2021年度は、コロナ禍以前の市場規模に回復しつつある。一方、非対面型・非集合型の教育サービス市場(通信教育市場、eラーニング市場、学習参考書・問題集市場)は、コロナ禍での在宅学習下において需要が拡大し、伸長率の拡大またはプラス推移に転じるなど、コロナ禍においてプラスの影響を受けることとなった。

対面型・集合型の教育サービスの中で、最大の市場規模である学習塾・予備校市場では、休校措置等の制約がない中、学習塾事業者の多くで集客状況は好調なため、当該市場は順調な回復基調となっている。但し、進学需要よりも緊急性の薄い補習需要では一部において通塾に対する需要の回復に遅れが見られる。幼児英才教育市場については、幼児受験教育市場では2020年度に続き、2021年度も底堅い需要に支えられ堅調を維持し、知育主体型教育市場ではコロナ禍での教室運営・指導体制が確立されたことで、大きなマイナス要素は見られず、再び拡大成長が期待されている。幼児体育指導市場についても幼稚園等の活動再開に伴い回復基調となっている。

一方、非対面型・非集合型の教育サービスにおける、幼児及び学生向け通信教育市場では、2021年度においては数ヵ月間に及ぶ休校・休塾措置も見られず、また、各種教室や習い事教室も再開しているため、2020年春先に見られた大きな需要拡大は見られない。また、学習参考書・問題集市場では、2020年度は休校・休塾期間における自宅学習下での需要拡大によって市場拡大となるが、2021年度は自宅学習下にないため、大きな需要拡大が見込めない状況にある。但し、一定数の利用定着も見られ堅調な推移が予測される。

3.将来展望

2021年度の教育産業全体の市場規模(主要15分野計)は、事業者売上高ベースで前年度比5.0%増の2兆8,333億8,000万円を予測する。
2021年度は、感染対策を講じた上での事業運営およびサービス提供体制の確立、対面でのサービス提供からオンラインシフト、コロナ禍で需要拡大したサービスの需要継続などに加え、一部を除き休校措置などの活動制限の影響もほとんど見られないことから、多くの市場分野で回復または再成長するものと見込まれ、当該市場は再び拡大成長するものと予測する。

教育サービス事業者の多くでは、安定した生徒数確保等、収益性の維持・向上が引き続き課題となっている。今後においても、M&Aや業務提携などによって、サービス・事業領域の拡大、事業エリア(地域)の拡大、対象年齢の拡大、新サービスの開発等を進め、ターゲット層の拡大、さらには顧客サービス提供期間の長期化を図ることで、事業・経営の安定ならびに事業成長を目指す動きが顕著になっていく見通しである。

また、コロナ禍が契機となり、多くの教育サービスにおいてオンライン化・リモート化が進み、在宅でも教育サービスを享受できる環境が整備されつつある中、利用者・受講者に対する利便性が高まっていくとともに、教育サービス事業者間の競合関係がエリアの枠を超えて強まっていく見込みである。

調査要綱

1.調査期間: 2021年5月~8月
2.調査対象: 学習塾、予備校、通信教育事業者、資格取得学校、語学スクール、幼児教室、 体操教室、研修サービス事業者、eラーニング事業者、学習用教材会社、業界団体、管轄省庁等
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談、電話・FAX・e-mailによるヒアリング、ならびに各種文献調査併用
<教育産業市場とは>
本調査における教育産業市場とは、①学習塾・予備校、②家庭教師派遣、通信教育(③幼児向け・④学生向け・⑤社会人向け)、⑥幼児向け英会話教材、⑦資格取得学校、⑧資格・検定試験、⑨語学スクール・教室、⑩幼児受験教育、⑪知育主体型教育、⑫幼児体育指導、⑬企業向け研修サービス、⑭eラーニング、⑮学習参考書・問題集の主要15分野をさす。
<市場に含まれる商品・サービス>
学習塾・予備校、家庭教師派遣、通信教育(幼児・学生・社会人向け)、幼児向け英会話教材、資格取得学校、資格・検定試験、語学スクール・教室、幼児英才教育、企業向け研修サービス、eラーニング、学習参考書・問題集

出典資料について

資料名2021年版 教育産業白書
発刊日2021年09月10日
体裁A4 502ページ
定価165,000円 (本体価格 150,000円)

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