気候変動によってコーヒーの栽培地が大幅に減少し、収穫量の減少や品質の低下、生産者不足などによって“おいしいコーヒー”が現在の価格帯では飲めなくなることなどが懸念されている「コーヒーの2050年問題」。
カフェチェーン大手のスターバックスによると、世界の1年のコーヒー消費量は5000億杯。日本は世界4位のコーヒー消費国で、1週間の1人あたり消費量は11.53杯。この先、需要は約3倍になる見込みだという。一方、コーヒーの生産に関しては、世界70以上の国や地域で作られ、生産者数は2500万人にのぼる。このうち、スターバックスが取引するコーヒー生産者数は45万人だという。
コーヒーの生産には、「標高」や「寒暖差」に加え、温度・日射量・降水量などの「微気候」といった環境要素が重要だ。主な生産地は赤道を挟んで北緯25度から南緯25度までの一帯で、通称「コーヒーベルト」と呼ばれ、ラテンアメリカ・アフリカ・アジア/太平洋が3大生産地となっている。
しかし、気候変動が進めば従来のコーヒーベルトでは生産が難しくなる。コーヒー栽培に適した土地が大幅に減ることが予想され、2050年までにアラビカ種のコーヒー栽培に適した土地が現在の50%に減少するといわれている。なお、アラビカ種はコーヒー豆の3大原種の1つで、全コーヒー生産量の70~80%を占める、世界で最も生産されているコーヒー豆だ。
気候変動を要因としたコーヒー生産の具体的なリスクには、「寒暖差の減少」「降雨量のばらつき」「多湿」「病害や害虫の増加」が挙げられる。これらは品質の低下や生産量の減少につながるため、生産者の経済的苦境を引き起こし、栽培の中断や放棄、生産者の減少などが懸念されている。
スターバックスでは気候変動対策につながる活動として、南米コスタリカにあるスターバックス唯一の自社農園「ハシエンダ アルサシア」において、常駐する農学者が、気候変動などがもたらす病害虫に耐えうる品種の開発や、小規模農家が高品質で効率的なコーヒー栽培が可能となる研究に取り組んでいる。なお、ここで開発した品種や栽培方法などは、世界中のコーヒー生産者に無償提供している。
上記で紹介した取り組みをはじめ、スターバックスでは“スターバックスのコーヒーを買うたびに、地球がより良くなるとしたら?”をキーワードに、地球環境や社会課題の解決に向けて、コーヒー生産者や生産地域との関係を構築しながら、長期的に高品質なコーヒー豆の生産をサポートするための“エシカル(倫理的)な調達100%”を推進している。
生活者にできる「コーヒーの2050年問題」対策として、スターバックス コーヒー ジャパンのコーヒースペシャリスト若林茜氏は「まずは、ストーリーを知ることがエシカルな選択をする一歩になるのでは」と話す。確かに、日頃自身が消費する商品がどのような工程をたどり、その産業がどういった課題に直面しているのかを知ることは、我々生活者の消費マインドに今後深く関わってきそうだ。