決断力がない人は失うものを意識!決断のプロセスと鍛える方法
(画像=GLOBIS知見録)

目次

  1. 決断力とは
  2. 決断できない理由
    1. 理由①:自信がない
    2. 理由②:こだわりが強すぎる
    3. 理由③:判断軸が欠けている
    4. 理由④:影響範囲がよく分からない
  3. 決断に至るまでの3つのプロセス
    1. ステップ①:一番大事な問題を特定する
    2. ステップ②:選択肢を洗い出す
    3. ステップ③:選択肢を絞る、あるいは優先順位をつける
  4. 決断力を鍛える方法
    1. 方法①:失うものを意識する
    2. 方法②:積極的に情報収集し、未知の領域を学ぶ
    3. 方法③:判断軸と選択肢を具体化する
  5. 日常で決断力を高める即効薬
    1. コンディションを整える
    2. 頭がスッキリしている時間帯に決断するようにする
    3. 落ち着く
  6. まとめ

私たちは日々生活する中で、仕事やキャリア、プライベートなど、大小の違いはありつつも、様々な場面で決断を強いられます。 重要な局面において、スピーディかつ適切な決断ができる人もいれば、なかなか決断できずにチャンスを逃してしまう人もいます。 本記事では、決断力がある人の特徴と高めるための方法を紹介します。

決断力とは

決断力とは、「何らかの問題や課題に対して、複数ある対応策のうち、意志を持って1つを選ぶ力」のことです。
「決断する」ということは、見方を変えれば、選択したもの以外は「切り捨てる」という意味になります。
「選ぶ/選ばない」双方に何らかのリスクがあるため、伴うリスクが大きいほど、決断には大きな覚悟と責任が必要となります。

決断できない理由

本人の性格面に理由がある場合もあれば、状況による場合もあります。

理由①:自信がない

大きな決断であるほど、「腹をくくる」ための大きな覚悟が必要となります。
自分の意思決定に自信がなければ、やはり決断することに躊躇をしてしまいます。

理由②:こだわりが強すぎる

全ての条件が満たされる解決策が選択肢の中にあればよいのですが、そうではないケースも多々あります。
「あれもこれも妥協ができない」となってしまい、1つを選ぶことができなくなってしまいます。

理由③:判断軸が欠けている

選択肢の中から1つを選ぶ基準、つまり判断軸があいまいであるがゆえに決断ができないパターンです。
コロンビア大学のシーナ・アイエンガー博士による「ジャム実験」をご存じでしょうか。
スーパーマーケットのジャムの試食ブースで、24種類のジャムを並べた時と6種類だけの時を比較すると、数が少ない6種類の時の方が売れたというものです。
この研究結果から、「人は選択肢が多いほど、選べなくなる」ということが分かっています。
何かを決断する際にも、判断軸があいまいであるほど選択肢が多くなってしまうので、1つに絞ることが困難になってしまいます。

理由④:影響範囲がよく分からない

自分が下した決断が、どのくらい影響を及ぼすか分からない場合も、怖くてなかなか決断できませんよね。
例えば仕事で、「この決断は、あの人たちには関係ない」と思って決断したことが、実はいろいろな所へ関係するもので、後々「あの時、勝手に決めたせいだ」と怒られたりする場合もあります。

決断に至るまでの3つのプロセス

「決断できない」というのは、「誤った決断をするのが怖い」という気持ちの表れでもあります。
正しい決断だと自信を持てるようになるためには、まずは決断のプロセスを理解することが大事です。
決断に至るまでの3つのプロセスとポイントを紹介します。

ステップ①:一番大事な問題を特定する

決断とは、何らかの問題や課題に対してどのように対応するかと、判断し決めることです。
なので、まず始めに、「一番重要な問題を特定」しなければなりません。
意外とこのステップでつまずく人が多いです。

例えば仕事の場面で、「電話での製品の問い合わせが多く、さばききれない」という問題があった場合、「さばききれない」という目に見えている状況を問題と捉え、「電話を取る人の数を増やそう」となりがちです。
しかし、「そもそもなぜそんなに多くの問い合わせが来るのか」と、問題の本質に目を向けなければ、根本的な解決につながりません
目の前の問題に対処するという方法では、一見問題が解決したようにみえても、結果的に手間やコストが増えてしまって、効率が悪くなってしまうことも起こりえます。

問題の本質を捉えることができるようになるには、「論理的思考力」を鍛えることが有効です。
こちらの記事で、詳しい鍛え方を紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。

ステップ②:選択肢を洗い出す

問題の特定ができたら、具体的な解決策を考案しやすいように、問題の細分化をしていきます。
ここで役立つ概念が「MECE」「ロジックツリー」の2つです。

MECEとは、「全体集合として、それぞれが重複することなく、漏れがない状態で網羅されている」という意味です。
MECEができておらず、「モレ」や「ダブり」がある状態では、的外れな解決策になってしまったり、非効率な資源配分が起きてしまうため、問題の細分化をしていくうえで、重要な概念となります

MECE
(画像=MECE)

ロジックツリーは、問題の原因を深堀りしたり、解決策を具体化&特定化するときに役立つ考え方です。
MECEの考え方をベースとして、ツリー状に要素を分解&整理していきます。

ロジックツリー
(画像=ロジックツリー)

ステップ③:選択肢を絞る、あるいは優先順位をつける

ロジックツリーによって問題の細分化と解決策を洗い出したら、その中から実際に実行に移す施策を決めます。
ビジネスにおいて時間とコストは有限なので、絞り込む軸はこちらの3つです。

  • スピード(仕込みのスピード、成果が出るまでのスピード)
  • コスト(時間、費用、投下する必要のある人数)
  • インパクト(どのくらいの成果が見込めそうか)

これらの軸の掛け合わせによって優先度の高い施策に絞り込み、実際に実行に移す施策を決定していきます。

決断力を鍛える方法

決断力を高めるには、「意志力」と「積み重ね」が大事です。

方法①:失うものを意識する

「決断しない=現状維持」では、ありません。
例えば、仕事の場面でなかなか決断できずにタイミングを逃すと、「競合に負けてしまう」「メンバーの信頼を失ってしまう」など、何らかの損失が発生します。
「ここで決断しないと、何を失ってしまうのか」そんなことをしっかりと自分に問い分け、勇気を持って決断をしていくことが非常に大切です。

一方で、いろいろなことを総合的に考えた結果、「タイミング的に今ではない」と判断するのは、重要な1つの決断です。
そうした明確な理由がなく、「ちょっと今は決められないから...」と決断しないのは、単なる先延ばしです。
この2つには、大きな違いがあることにも、注意しておきましょう。

方法②:積極的に情報収集し、未知の領域を学ぶ

決断するのに情報が不十分な場合は、懸念点を洗い出し、判断材料を集めましょう。
ビジネスにおいては、AIなど急激なテクノロジーの進化によって、求められるスキルや知識はどんどん変わっています。
そのような中、今の自分の業務では追いついておらず、「よく説明してもらっても分からないんだよね...」といったこともあるかもしれません。
しかし、今までの経験や知識で判断できないというのは、単なる自分の能力不足です。
覚悟を持って、よく分からない領域の勉強もしていくようにしましょう。

方法③:判断軸と選択肢を具体化する

判断軸や選択肢が漠然としていた場合、決められないのは当然です。
具体的な判断軸を持つためには、「理想のありたい姿」を思い描き「MUST」と「WANTS」を明確にしておく必要あります。

  • MUST:ここは譲れない、もしくは絶対に押さえておきたいポイント
  • WANTS:ここはできた方がいいけど、最悪妥協してもいいというポイント

そして、考え得る選択肢の洗い出しは、先述した「MECE」や「ロジックツリー」などのフレームワークを意識していきながら、行っていきましょう。

日常で決断力を高める即効薬

決断力は、ちょっとした工夫でも高めることができます。

コンディションを整える

睡眠不足や体調不良などの場合、判断が鈍ります。
誤った決断をしてしまうこともあるので、しっかりと体調管理をしておくことが大事です。
仕事に熱心な人にありがちですが、「睡眠時間を削る」ということは絶対にやめましょう。
コンディションを整えるうえで、「睡眠」は最も重要なポイントです。

頭がスッキリしている時間帯に決断するようにする

夕方や夜など、一日の疲れがたまってきている時間帯も、やはり判断は鈍ってしまいます。
重要な決断をする際には、なるべく頭がスッキリしている午前中に意識して行うことをおすすめします。

落ち着く

焦って決断すると、誤る可能性があります。
決断までの猶予があり、「今の自分は焦っているな」と感じた場合は、落ち着いて考えられる時に仕切り直してから、決断するようにしましょう。
ただし、ここでの注意点は、単なる先延ばしにしないことです。

まとめ

これから先、AIなども含めて様々な選択肢を出してくれるツールが出てくるかもしれません。
しかし、最後の意思決定というのは、人間にしかできない能力であり、決断力というのは、絶対的に必要な能力になってくることが想定されます。
「なかなか決断できず、ついつい先送りにしがち」という方は、小さなことからで良いので、自分の意思で決断する習慣をつけるようにしていきましょう。

(執筆者:村尾 佳子)GLOBIS知見録はこちら