都内を中心に店舗を展開するGlobridge(グロブリッジ)。最近では、飲食店のキッチンを利用したオンラインデリバリーの仕組み「ご近所キッチン」に力を入れている。自社ブランド「東京からあげ専門店あげたて」などに加えて、「赤から」など有名飲食店ブランドもあり、加盟店は累計で1,000店舗以上になるなど、高い注目を集める。「東京からあげ専門店あげたて」の創業に携わった平石貴大氏に聞いた。
――ゴーストレストランの現状は。
確実に店舗数は増えたと感じています。コロナ禍に入ってからはなおさらです。飲食店も始めはいずれ戻るだろうという意識だったと思いますが、2度目の緊急事態宣言の発令ぐらいからは、当面続くのではという見方に変わったと感じます。ゴーストレストランは、終息の出口が見えない中で多くの飲食店が取り組み始めたのではと思います。
――質に力を注ぐところがある一方で、あまり良くないところもあるように感じます。
事実として、そうした所もあります。競合が増える中で、選ばれるために専門店を名乗るしかないところも少なくないです。品質の良くないところもある一方で、ちゃんと取り組んでいる店舗も多くあります。他の企業とも話すのですが、ネットでの戦いは良い部分も悪い部分もすぐに出ます。同じ価格の似た商品でも、評価の高い商品が選ばれる。しっかり取り組んでいるところと、そうでないところの差ははっきりと出るんです。売るだけでなく、ブランドを育てることも大切です。
――「ご近所キッチン」の加盟店は。
まだオープンしていない店舗もありますが、現在(2021年7月末取材時点)の加盟店は1,000店を突破しました。加盟店それぞれに合った業態を提案し、負担にならないような形も目指しています。もし、居酒屋をやっている人がイタリアンを作るとなると、オペレーションを理解できず、上手く進められないと思います。他の企業のブランドも扱っているので、ブランドを棄損しないようにも心掛けてます。
――「東京からあげ専門店あげたて」創業のきっかけは。
元々、飲食店の店長を務めていて、その時に新たな売り上げにつながる取り組みとして色々試す中で、から揚げのデリバリーにたどり着きました。居酒屋の店名で唐揚げのデリバリーを始めたところ、初月の売上はデリバリーだけで120万円で、それがイートインの売上に上乗せされる形になったのです。
ただ、実際に届いた時の状態を検証すべく、時間を置いてから箱詰めした商品を食べると、食感は失われていて、店とは全く違うから揚げになっていました。そこでデリバリーに特化した商品開発が必要だと思い知り、衣や味付けなどのレシピはもちろん、油の温度や揚げ時間の研究、デリバリー用の包材の選定を行い、デリバリーに合ったから揚げが完成しました。そして19年に「東京からあげ専門店あげたて」をオープンしました。また、「居酒屋を営業しながら、デリバリーで唐揚げを売る」仕組みとして、「既存の厨房を借りて取り組む」形にたどり着き、今の形での展開を行っています。イートインと違って、デリバリーは、「温かさ・スピード・3分以内での調理」が重要と考えています。注文を受けてから5分以内に料理を配送できるよう取り組んでいます。
――手掛けるうえで力を入れていることは。
力を入れているのは運営品質とブランド強化です。様々な事業者が参入する中で、どのように囲い込むかが課題だと思います。エンドユーザーも、どのデリバリープラットフォームなら良い店があるか、という点に敏感になっています。注文した商品が届くのは当たり前で、欠損が少ない、温かい、美味しいということを大切に取り組んでいます。
また、接客を行えないので、全商品にスタッフからのメッセージを同封して感謝を伝えています。これは、バイトさんの提案から始まりました。
ただ、やはり新規で利用される方にとってハードルは高くもあります。ブランド力向上のために、SNS やメディア戦略などで認知向上に努めています。
――イートインとの大きな違いは。
店内の場合、もしミスがあってもサービスなどでフォローできることもあります。しかしデリバリーは一度の失敗のせいで2度と注文されなくなってしまいます。デリバリーで注文される方すぐに食べたいから注文していて、もし何らかの失敗があればフォローも難しいため致命的になります。私たちはメイクミスを注文数の1%以下になるよう厳格なルールを定め、作った料理は写真に収めて確認し、商品が間違っていないかチェックしています。
また、デリバリーは商圏が狭く、注文される絶対数も決まっています。悪い評価を受けたら頼まれなくなるだけでなく、口コミにも悪影響が出てしまい、他の注文にも影響しかねません。まだまだ完璧な状態ではありませんが、揚げたての状態を届けるべく、改善を進めていきます。
――今後の取り組みは。
揚げたての味を各地に届けたいです。デリバリーの商圏は狭く、揚げたてを届けられるとすると、拠点から3~5キロほどとなります。揚げたての味を楽しんでもらうべく、色々取り組んでいきます。また、大手企業とも業務提携をしており、作った商品の保温を高める食材などを共同で開発し、包材の選定にも力を入れ、一番良い状態で料理を届けられる調理時間で収まるよう研究を進めています。
この取り組みは日本の飲食店を救おう、というテーマでも取り組んでいます。緊急事態宣言が明けたと思えばまん延防止、そして再び緊急事態宣言といった状態で、非常に不安定な状況に苦しんでいる店舗も多いと思います。私たちもこの取り組みで飲食店の売上に貢献できる場にしてきたいと思います。
〈冷食日報2021年9月2日付〉