DAIZ 落合取締役
(画像=DAIZ 落合取締役)

熊本発の植物肉ベンチャー、DAIZの落合孝次取締役研究開発部長兼生産管理部長が同社開発の植物肉の原料「ミラクルミート」の最前線を明らかにした。

落合取締役は植物肉市場について、「プロテインクライシス(たん白危機)という意味では、豚肉が最初に影響が出てくるだろう。ASF(アフリカ豚熱)により、豚の数を増やせない状況となっている。そういう意味では、豚肉に代わる植物肉をおいしく食べられることはとても大事なこと」と強調する。

「ミラクルミート」は、「大豆の油かすを使っていない。大豆を丸ごと使い、工場で一旦発芽させて味を調える。肉のような味になるような環境で発芽させてから、肉の繊維などを再現していく。こうしたプロセスの違いが、油かすを使った代替肉の欠点を解決している」とする。

発芽する際は、酸素や二酸化炭素、水、温度などを変えてやることで、牛肉、豚肉、鶏肉、牛乳、卵などに近い栄養素性にすることが可能なのだという。

「茹でた鶏肉に近づける実験をやり、噛み応えなどほぼ茹でた鶏肉に近づけることに成功している」としており、肉の硬さは、ビーフジャーキーなどの硬いものからポップコーンなどの柔らかいものまで再現が可能だとしている。

〈AIを活用して最適な素材で植物肉を、しゃぶしゃぶなどが可能な一枚肉にも挑戦〉
また、落合取締役は、「おいしさは、肉質や味に関わる成分の複合で判断していく。それぞれ700成分ぐらいあり、すべてデータを取っている。発芽したもの、発芽してないもの、鶏肉も生のもの、焼いたもの、蒸したもの、茹でたものなども分析している。発芽した穀物のグループと、肉を調理した各部位のデータを用意して、それを比較して、鶏肉を茹でたものを作ろうとしたら、どのような発芽のパターン、どのような大豆の種類、その他の穀物をどの程度混ぜていくと鶏肉の味や香りに近くなるかという研究を行っている。現在そういったデータを分析して貯めているところだ。大豆以外の穀物も研究所レベルで1,000種類くらい集めることができる。大豆は国内だけでも100品種ほど手に入れることができる。それらを発芽させて分析し、肉との関係性を調べてデータを貯めている」と明かす。

将来的には、AIを活用して、膨大な分析により得たデータから、例えば、三元豚が欲しいと言われたら、茹でたもの、焼いたもの、または焼き鳥肉に使う、ステーキに使うといった細かいオーダーにも応えた植物肉の提供を行えるようにしたいとしている。

世界には500社以上の企業が植物肉市場に参入しており、3Dプリンターや培養肉を使って植物肉を作る企業も現れている。また、植物由来のチーズや牛乳を手掛ける企業も増えているとし、日本が遅れてはいけない技術として、「植物由来の卵を作る技術の開発は取り組まなければならない。それから、牛乳も植物性で再現することができれば、これまでの牛乳のインフラが使える」と述べる。

さらに、「ヨーロッパでは、養殖の魚を食べることを推奨していることなどから、100%植物由来の魚を開発することにも取り組んでいきたい」とし、本当の意味でのSDGs、たん白危機に備えていく意向を示している。

さらに、「粒状のたん白質は開発されているが、一枚肉はまだ発展途上である。それが可能になると、焼肉やしゃぶしゃぶ、肉巻きおにぎりなどもできるようになってくる。この難しい課題にも挑戦しており、現在、良い状態のものを開発するまでになっている」とした。

〈大豆油糧日報2021年9月1日付〉