矢野経済研究所
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2020年のクラウド基盤サービス市場は、前年比123.2%の8,500億円

~DXなど変化に迅速に対応できるシステム環境の構築などに対する需要が拡大し、市場は順調に成長~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越 孝)は、国内のクラウド基盤(IaaS/PaaS)サービス市場を調査し、市場規模推移・予測、クラウドベンダ動向、新サービス普及状況等を明らかにした。

クラウド基盤サービス(IaaS/PaaS)市場規模推移と予測

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1.市場概況

2020年のクラウド基盤サービス市場は新型コロナウイルス感染症の影響を受け、サービス分野によっては一時的に成長が鈍化したものもあった。但し、従来市場を牽引してきた基幹系システムなどのクラウドへのリフト&シフトは、長期的かつ大規模な案件のため停止や延期になったものもあるが、予算の確保が出来ていた企業等では予定通りに進み、市場への大きな影響はなかったとみる。
一年を通してみると、リモートワークの進展や、DXなど変化に迅速に対応できるシステム環境の構築、動画サイトやECサイトのトラフィック急増によるオーケストリング機能への需要増加などにより、2020年のクラウド基盤(IaaS/PaaS)サービス市場規模(事業者売上高ベース)は、前年比123.2%の8,500億円になったと推計する。

クラウド基盤サービス市場は、今後もDXへの投資の活発化や、データ利活用のプラットフォームとして、またハイブリッドクラウド環境の容易な構築、BCP(Business Continuity Planning)などユーザ企業の災害対策意識の向上を背景として、順調に成長していくと予測する。

2.注目トピック

好調/不調が分かれるビジネス~クラウドマネージドサービス市場

本調査では別途クラウド関連のITアウトソーシングについても調査しており、SIerやコンサルティング事業者などがユーザ企業のクラウド内での設計・構築・移行・監視・運用(導入/活用支援を含む)業務を受託するアウトソーシングサービス、クラウドマネージドサービスの市場動向をとりまとめた。
クラウド化が進む一方、アップデートの頻度が増え、新機能・新サービスの追加サイクルが短くなることで、進化に合わせた構築・運用が負担になっているユーザ企業が増加基調にある。こうした負担を低減するため、クラウドマネージドサービスの導入や導入検討を進めるユーザ企業が大手企業や製造業を中心に拡大している。
DXの推進やセキュリティに対する需要が増え、クラウド利用が進展することなどから、クラウドマネージドサービス市場は順調に成長し、2025年には7,850億円に達すると予測する。

クラウド基盤サービス市場では、こうしたクラウドマネージドサービス市場の成長に対し、「自社ビジネスも順調に成長している」という事業者と、「期待ほどには成長していない」という事業者とに二分される。この差の要因のひとつはサービスメニューにあり、トータルでサービス提供できるかが、好不調の分かれ目のひとつになっている。
また、市場の成長に伴い、新サービスを投入する事業者、新規参入事業者も増えているが、こうした事業者の共通点はマルチベンダ対応である。もっとも、マルチベンダ対応とは言っても、多くの事業者がAmazon Web Services(以下、AWS)、Microsoft Azure、Google Cloud Platformの3大クラウドに対応できれば十分と考えており、これらサービスの新機能、新サービスに追随できるスキル、知見を蓄えていくことが他社との差異化につながると考える。

3.将来展望

既存インフラをIaaSに移行するケースはさらに増えていくと考えるが、今後、市場成長の鍵となるのがDXと公共分野における利用の拡大である。
2020年10月に総務省による第二期政府共通プラットフォームがAWS上で運用開始されることが発表され、公共系クラウドサービス導入はAWSが他社よりも前進している印象である。しかし、中央省庁をはじめ、公共分野におけるホワイトスペース(クラウドに移行する事業領域)は大きく、今後他社クラウドサービスの導入も進む可能性は極めて大きい。

また、市場がめまぐるしく変化する中、競争力の維持・向上のため、民間企業はDXに取組むことが急務になっている。もっとも、DXは一度取組んで終わりではなく、ビジネス環境や自社の状況に合わせて継続的に行っていくものである。しかし、社内情報システムの複雑化などを理由にDXが思うように進められないユーザ企業等も多い。そのため、クラウド関連ベンダには情報システムの在り方について上流工程から伴走できる力が求められており、それが可能な大手SIerやコンサルティング企業と協業を進めるクラウドベンダもある。こうしたSIerやコンサルティング企業との協業が、クラウド基盤サービス市場の成長加速に貢献していくと考える。

調査要綱

1.調査期間: 2021年2月~8月
2.調査対象: 国内クラウド関連ベンダ(パブリッククラウド及びその周辺サービス提供事業者)、第三者保守ベンダ、iPaaS(Integration Platform as a Service)関連事業者、国内民間企業等
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話・e-mailによるヒアリング調査、郵送による法人アンケート調査併用
<クラウド基盤(IaaS/PaaS)サービスとは>
本調査における IaaS(Infrastructure as a Service)、PaaS(Platform as a Service)とは、いずれもパブリッククラウド(サービス提供事業者のクラウド基盤)を利用し、インターネット経由で提供される仮想化技術、自動化技術等を施したクラウドコンピューティング環境をさす。
クラウド基盤サービス市場規模は、クラウドベンダ(サービス提供事業者)の事業者売上高ベースにて算出した。なお SaaS(Software as a Service)は含まない。
<市場に含まれる商品・サービス>
IaaS、PaaS、クラウドマネージドサービス、iPaaS、第三者保守サービス

出典資料について

資料名2021 クラウド・ITアウトソーシング市場の現状と展望
発刊日2021年08月27日
体裁A4 244ページ
定価198,000円 (本体価格 180,000円)

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