所得税は月収いくらからかかる?年収に関するいろいろな壁
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内山 瑛
内山 瑛(うちやま・あきら)
公認会計士。名古屋大学法学部在学中に、公認会計士試験に合格。新日本有限責任監査法人に入所し、会計監査・コンサルティング業務を中心に研鑽を積む。2014年に同法人を退所し、独立。「お客様の成長のよきパートナーとなる」ことをモットーに、記帳代行・税務申告にとどまらず、お客様に総合的なサービスを提供している。近年は、銀行評価を向上させる財務コンサルティングや内部統制構築支援、内部監査の導入支援にも力を入れている。

よく、「扶養の範囲」という言葉を聞くことがある。夫婦の片方が主たる所得を稼得している場合に、もう片方は、自分が扶養されていることによる制度上のメリットを活用しながら、そのメリットを失わずにギリギリで働きたいときに考慮しなければならない所得の上限だ。

しかし、一口に「扶養の範囲」といっても、いくつかラインがあるため、何を目的とするかによって、どこにラインが引かれるかが大きく変わってくる。

今回は、我が国において大きな所得のラインである「所得税」「住民税」「社会保険」という3つの所得の壁について解説してきたい。

目次

  1. 所得税における年収の壁
    1. 年収103万円の壁
    2. 扶養控除の適用となる親族とは?
    3. 103万円の壁を超えるとどうなる?
  2. さまざまな所得種類における年収の壁
    1. 年金収入の場合
    2. 株式運用の利益について確定申告した場合
    3. 壁を超えるとどうなる?
  3. 住民税における年収の壁
  4. 社会保険における年収の壁
    1. 健康保険
    2. 厚生年金
  5. 社会保険の扶養から外れる場合とは
    1. 130万円を超えた場合
    2. 106万円を超えた場合 社会保険適用となる要件5つ
  6. 扶養の壁を超えるかどうか、働き方を検討

所得税における年収の壁

扶養の範囲内で働く者が、パートで給与所得を得るという前提で解説をしていく。

年収103万円の壁

まず、最も有名なのは、年収103万円の壁である。年収103万円をこえると、所得税がかかるようになる。103万円というのは、給与所得控除の最低額の55万円と基礎控除の48万円の合計額であり、給与収入が103万円以下であれば、所得税の課税対象となる所得が0円となり、所得税が課税されない。

また、この103万円は、扶養控除の適用を受けるための壁となっている。扶養控除とは、納税者が16歳以上の扶養親族を有する場合に、控除対象扶養親族一人につき所定の控除額が総所得金額等から控除される制度だ。

扶養控除の適用となる親族とは?

扶養控除が適用されるのは、生計を同一にしている配偶者以外の親族(6親等内の血族および3親等内の姻族)、都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子)、または市町村長から養護を委託された老人である。通常、16歳以上の就職していない子や、働いていない親が扶養家族となることが多い。

適用されていた親族が、アルバイトなどで、103万円の所得をこえてしまうと、扶養控除38万円が適用できなくなるため、思わぬ負担増となる場合がある。

103万円の壁を超えるとどうなる?

これまで、配偶者においても、年収103万円が所得税上の年収の壁といわれてきた。しかし、昨今の税制改正により、年収103万円を超えても、年収150万円までは、「配偶者特別控除」の制度適用によって、満額38万円の控除が受けられることになっている。

配偶者控除か配偶者特別控除かによって現在では大きな違いはないが、1点違うのは、配偶者の年齢が70歳以上のときは、配偶者控除の場合は控除が増加するが、配偶者特別控除の場合は、控除の増額がないということだ。

さまざまな所得種類における年収の壁

上記の所得の壁は、給与のみの場合であり、それ以外の収入の場合は事情が異なる。つまり、上記の103万円の壁については、給与所得控除が適用されているが、それ以外の場合については、前提が異なるからである。

年金収入の場合

例えば、年金収入のみの場合について、所得が48万円以下(65歳以上の場合年金収入で158万円、65歳未満の場合年金収入で108万円)であれば、所得税は課税されない。所得税や市民税・県民税の配偶者控除または扶養控除の対象外だからである。

これは、公的年金等に係る雑所得の金額を計算する過程における控除額が65歳未満の場合は60万円、65歳以上の場合は110万円であるためだ。

株式運用の利益について確定申告した場合

また、意に反して扶養の対象から外れてしまう場合としてよくあるのが、配当に関する確定申告である。上場株式などの運用に関する利益について、特定口座を利用している場合は、確定申告不要制度を利用することが可能だ。

しかし、確定申告をすることにより税金の還付を受けることができる場合があり、その制度を利用している者がいるが、注意が必要である。

つまり、確定申告をした結果、確定申告書に記載されている所得が48万円以上になると、扶養控除などの対象から外れてしまうことがある。

扶養する側の所得によっては、確定申告をして少額の還付を得た結果、逆に家族全体としての負担が増えてしまうことにもなる。確定申告にて税金の還付を受ける際は、家族全体としての負担が増えないかどうかをしっかりと検討する必要がある。

壁を超えるとどうなる?

何も考えずに確定申告をしてしまうと、所得税および住民税含めて約20万円もの負担増になる場合がある。なお、所得税の扶養控除に関しては、恒常的な所得に限らないため、仮想通貨の譲渡益や土地や建物などの不動産の譲渡益などがあった年については、その金額によっては、扶養から外れてしまう可能性があるため、注意が必要である。

住民税における年収の壁

個人住民税は大きく分けて2つあり、「所得割」と「均等割」が存在する。所得割とは、その前年の所得に応じて課税されるものであり、均等割とは、全員に均等に課せられるものである。

所得割については、100万円がその壁となる。住民税にも、所得税と同じく給与所得控除と基礎控除があり、給与所得控除の最低額は55万円、基礎控除の最低額は43万円となっている。

この合計は98万円であり、98万円以下であれば住民税上の所得もゼロとなり、住民税も課税されない。

ここまできくと、98万円をこえると住民税の所得割が課税されるのではないかと思われるが、またもう1つ特例が存在する。地方税法附則第三条の三において、所得が35万円を超えない場合には、所得割を課してはならないという決まりがあるため、98万円を超えていても、100万円を超えていなければ、住民税を課されることはない。

なお、地方税法附則第三条の三においては、家族構成などによって基準となる金額が変動するような記載となっているため、具体的に住民税が課されるどうかについては、条文をあたるか、お住まいの市町村や税理士へ確認する必要があるだろう。

社会保険における年収の壁

配偶者に限れば、社会保険に関する年収の壁が一番大きいといっても過言ではない。税制においては、昨今の幾度かの税制改正によって、年収の壁を超えると直ちに負担が大きく増えるといったことはなくなっている。

しかし、社会保険においては、扶養の範囲内かどうかということによって、負担にかなりの開きが存在する。それは、健康保険の扶養の制度と厚生年金の第三号被保険者制度によるものである。

健康保険

健康保険法上の扶養とは、健康保険上の被保険者に扶養されている者については、保険料の負担なく保険給付が受けられる制度だ。

扶養から外れてしまうと、パート先や副業などで社会保険に加入していなくても、国民健康保険の加入対象者となり、健康保険料が余分にかかってしまう。年間で数万円の負担増になる場合もあるので、注意する必要がある。

厚生年金

厚生年金の第三号被保険者制度とは、会社員の妻や夫など、第二号被保険者に扶養されている配偶者が加入する国民年金の制度である。なお、第一号被保険者とは、自営業者や学生、無職の人やその配偶者など、厚生年金に加入していない人が加入するものだ。

第二号被保険者とは、会社員や公務員など、厚生年金にも加入している人のことである。

この第二号被保険者のみ年齢要件が違い、例えば、20歳未満でも会社で厚生年金に加入していれば第二号被保険者となる。パートなどで年収が増えてしまい、第三号被保険者から外れてしまうと第一号被保険者となり、国民年金保険料、月額1万6,610円の納付義務が生じる。

年間で約20万円となり、大きな負担増となってしまう。

社会保険の扶養から外れる場合とは

では、どのような場合に社会保険の扶養から外れてしまうのだろうか。社会保険の扶養から外れる場合とは、社会保険における扶養家族または第三号被保険者の要件を満たさなくなった場合、もしくは自身が第二号被保険者となった場合である。

その壁は、実は人によって金額が異なる。実際には、130万円と106万円のラインが存在する。

なお、社会保険の扶養範囲については、所得税や住民税の扶養の範囲とは全く別物として考える必要がある。例えば、年収120万円ならば、103万円を超えているため所得税や住民税を納付しなければならないが、社会保険の扶養を外れることはない。

130万円を超えた場合

まず、130万円を超えた場合については(厳密には、超える見込みの場合については)、社会保険における扶養から例外なく外れ、パート先で社会保険に加入できない場合や副業をしている場合には、自身で国民健康保険・国民年金に加入しなければならない。

106万円を超えた場合 社会保険適用となる要件5つ

そして、106万円を超える場合について、これは従業員500人以上など一定の規模の会社でパートやアルバイト、時短勤務等で働いている者について、適用されるラインである。この106万円の収入以外にも、以下の5つの項目を満たしている場合に社会保険に加入することとなっている。

・1)労働時間が週20時間以上である

1つ目は、週の所定労働時間が20時間以上であるということである。なお、106万円の壁の条件となっている週20時間を算出する際は、残業時間を合算せずに計算する。

・2)月の収入が8万8,000円以上であることが見込まれる

2つめは、月収の基準である。年収106万円の壁といいながら、実際は年収ベースではなく、月収ベースで定められており、106万円を12ヵ月で割るとおよそ8万8,000円となるため、毎月継続して8万8,000円以上の収入を得ることが見込まれている場合に要件を満たす。

・3)勤務期間が1年以上の見込みがある

3つ目は、1年以上継続して勤務する見込みがあるということである。1年以上の継続勤務かどうかの判断は、雇用契約書に「雇用期間が1年以上」「雇用期間が1年未満である場合、雇用契約書に契約更新の可能性があると記載されている」のどちらかとなる。

・4)勤務先の従業員が501人以上である等会社が一定の条件を満たす

4つ目は、「従業員数が501人以上の企業」「従業員数が500人以下であるが、保険加入について労使の合意がある企業」のどちらかに該当する企業で就労している場合である。

・5)学生ではない

5つ目は、学生ではないことだ。大学生、高等学校や専修学校の生徒などの学生は106万円の壁の対象にならない(つまり、社会保険の強制加入の対象とならない)。ただし、「卒業前に就職して引き続き雇用される予定がある」「休学中」「夜間の大学に通学している」などは、106万円の壁の対象になる。

扶養の壁を超えるかどうか、働き方を検討

今回は、扶養の壁が複数存在していることを解説した。所得税、住民税、社会保険のそれぞれの扶養の壁を超えると、納税や社会保険料の支払いが発生する。税金の場合は、扶養の壁を越えてもいきなり大きな負担にならないが、社会保険料の場合は、負担が大きく増えることとなる。

扶養の壁を超えたとき、税金や社会保険料がどれくらいの負担になるかは所得によって異なるが、年間の収入見込み額から税金や社会保険料を差し引いても扶養内で働く時に比べてプラスとなるのは、年収が160万円を超えるあたりだ。それを踏まえて、働き方を考える必要があるだろう。

文・内山瑛(公認会計士)

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