鹿島建設が8,300万の脱税 スーパーゼネコンの不正事実を一挙公開
(画像=pvl/stock.adobe.com)

「スーパーゼネコン」に対してどのようなイメージを持っているだろうか。高年収?上場企業?いや、中には「脱税・不正・汚職」といったマイナスイメージを持っている人もいるかもしれない。過去に何度も汚職事件などのニュースが報じられたからだ。最近でも、鹿島建設で脱税が発覚した。

最近の鹿島の脱税について振り返る

ゼネコンは「General Contractor」を略したもので、日本語では総合工事業もしくは総合建設業を営む企業のことを指す。具体的には、土木工事や建築工事を発注者から一括請負し、下請け企業の選定と発注や工事全体の進捗管理などを担っている。

ゼネコンは、一般的に売上規模などによって「スーパーゼネコン」「準大手ゼネコン」「中堅ゼネコン」などに分類できる。そしてスーパーゼネコンに数えられる企業は5社ある。鹿島建設、大林組、大成建設、清水建設、竹中工務店だ。

この5社の売上高は、それぞれ年間1兆円規模で、土木業界や建設業界において多大な影響力を持っている。各社、海外進出にも果敢に挑戦してきた歴史を有しており、海外の高層ビルや大規模インフラなどを日本のスーパーゼネコンが担当したケースは決して少なくない。

このように説明すると、スーパーゼネコン各社はまさに日本を代表する巨大企業であることが分かるが、クリーンなイメージを持たれているかは別だ。各社、過去にたびたび不正や脱税が報じられているからだ。

ここからはスーパーゼネコン各社の過去の不祥事について紹介していこう。

大林組と不祥事・不正

大林組に関しては、リニア中央新幹線の工事入札において、不正な談合が行われたことが明らかになっている。2017年末、東京地方検察庁が「偽計業務妨害」の容疑で大林組を捜索しており、その後、責任を取る形で白石達社長と土屋幸三郎副社長が辞任した。

また、過去には脱税が摘発されている。2006年のことだ。大阪国税局の税務調査の結果、11億円の申告漏れがあったことが指摘されており、国税局により課された追徴課税の額は3億5,000万円規模に上っている。

鹿島建設と不祥事・不正

続いて、冒頭でも紹介した鹿島建設だが、2021年6月、同社東北支店の元幹部が下請け業者から受け取った謝礼金を税務申告せずに脱税したとして、「所得税法違反」の罪で在宅起訴されている。東日本大震災の復興事業に絡む謝礼金で、脱税額は8,300万円に上っている。

また、先ほど大林組のリニア中央新幹線の工事入札における不正談合について紹介したが、この談合ではゼネコン4社が談合したとされ、鹿島建設の営業担当部長も「独占禁止法違反」の疑いで逮捕されている。

大成建設と不祥事・不正

大成建設に関しては2010~13年の期間に対し、東京国税局から申告漏れを指摘されている。申告漏れの金額は2億円規模に上り、そのうち6,000万円は幹部社員によるマンションを建設する費用に充てていたとされている。6,000万円は、下請け企業への虚偽発注の名目で捻出したという。

ちなみに、リニア中央新幹線の工事入札における不正談合でも、大成建設から逮捕者が出ている。具体的には、元常務執行役員の男性が逮捕され、その後に起訴されている。

清水建設と不祥事・不正

清水建設もリニア中央新幹線の建設工事の入札において、談合を行ったことを認めている。結果として清水建設は法人として起訴されることになったが、談合したことを認めなかった鹿島建設と大成建設とは異なり、清水建設の幹部は不起訴となった。

ただし、法人として起訴され、その結果として罰金1億8,000万円の有罪判決が言い渡されたことで、国土交通省関東地方整備局から2019年に120日間の営業停止処分を受けている。これにより、この期間は新たな民間の土木工事を受けられなくなった。

竹中工務店と不祥事・不正

最後に紹介するのが、竹中工務店だ。竹中工務店は、リニア中央新幹線の建設工事入札における不正談合には絡んでいなかったが、別の不祥事を過去に複数起こしている。例えば2008~2011年の3年間で、1億9,000万円の所得隠しを含む3億3,000万円の申告漏れを指摘されている。

また最近では、2021年2月に「職業安定法違反」の容疑で、竹中工務店や同社の社員が書類送検されている。業務委託先の社員に対して、同社が直接業務の指示を出す偽装請負が発覚したからだ。直接の業務の指示の回数は少なくとも60回に上っていたという。

クリーンなイメージはもはやない!?

このように、スーパーゼネコンでは複数企業を巻き込んだ大規模な不正談合が起きるなど、クリーンなイメージはあまり持たれていない。意図的な所得隠しなどが発覚するケースも少なくなく、税務当局も大手ゼネコン各社に対しては目を光らせている状況だ。

各社、不祥事を起こすたびに新たな再発防止策を掲げている。ただし、それでも今後、新たな不祥事が起きないとは限らない。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)

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