7月1日から始まった「M&A LIVE!」。さまざまなゲストをお迎えしながら中小企業を取り巻く現状とM&Aの有効性について考えるセミナーです。8日に第2回が開催され、1部では「中堅・中小企業のM&A戦略~正しい知識と早めの準備~」と題して、当社 ダイレクトマーケティング部長 竹賀勇人が現状をわかりやすく解説しました。本コラムではその内容の一部をご紹介します。
少ない人口で世界のニーズに対応しなければならないという日本の未来予測
2015年を100%としたときに、2040年までに国内企業の27%(106.9万社)が減少するという中小企業庁のデータがあります。原因は高齢化もありますが、大きいのが人口減少です。人口が減少すれば、当然、生産労働人口も減少します。
そして、維持できなくなって企業数も減っていく。国内の深刻な未来とは裏腹に、グローバル社会になって世界的なニーズは変わらず、少ない人口で供給していかなければいけないという課題を日本は抱えているのです。
廃業理由に共通するのは「自社のリソースのみで考えている」ということ
足元の現状はどうでしょうか。2020年、休廃業・解散件数が4万9,698件にのぼっています。さらに、そのうちの61.5%は黒字です(東京商工リサーチ)。黒字にもかかわらず休廃業をしなければならないのです。一体、何が起きているのでしょうか。
ここでまた、中小企業庁のデータを一つご紹介します。廃業した理由を調査したアンケート結果です。
1位 経営者の高齢化、健康(体力・気力)の問題
2位 事業の先行きに対する不安
3位 主要な販売先との取引終了
4位 経営者の家族の問題
5位 事業経営の更なる悪化の回避
共通しているのは、「自社のリソースのみで考えている」ということです。
M&Aは本来、経営戦略の選択肢に入れなければいけないもの
一方、M&Aの件数は公表されているだけでも2011年以降、大きく増加しています。2019年には4,000件を超えました。未公表案件も含めれば倍近い成約件数があると推定されます。昨年はコロナ禍による資金面の不安から少し件数を下げましたが、現在は再び増えています。それは決してコロナ禍で経営が悪化したという理由ばかりではありません。コロナ禍を機に経営に対する考え方が変わり、M&Aに関する情報収集をしようと考える経営者さんが増えているのです。
「M&Aは本来、経営戦略の選択肢に入れなければいけないもの」と竹賀は主張します。実際に会社を譲渡した経営者に聞いたアンケート結果からも、経営戦略としてM&Aがいかに有効に働いているかがわかります。
M&Aを選んだ理由
1位 若くてやる気のある経営者と出会えたから
2位 事業の継続を期待できる
3位 会社の成長を期待できる
4位 一族会社からの脱却
5位 社員の育成環境が整っている
(当社・譲渡オーナー対象アンケート「会社を譲渡した理由」より)
M&Aを選んだ理由に共通するのは、自社だけでは解決できない課題をお相手が解決してくれる、という点です。こうして見てみると、休廃業とM&Aの意思決定理由は対照的です。
今、一番気を付けるべきことはM&Aに関する「正しい知識」
長引くコロナ下の今、「M&Aをしないほうがリスクなのではないか」と竹賀は問いかけます。冒頭にも示した通り、近年は企業数の縮小によって需要に応えきれず、“供給の穴”が開いてきています。こうした時代の変化に対応するために、事業のカバー範囲を広げる必要があり、そこでM&Aという選択肢が有効的に働くのです。
今、一番気を付けるべきことはM&Aに関する「正しい知識」です。M&Aは安くて簡単、すぐ決まると言われますが、情報収集を含めた正しい知識がなければ難しいです。
セミナーではほかにも、①M&Aをすることによる見える効果と見えない効果、②時代の変化とともに変化する顧客のニーズ、③あるべき事業拡大の3つの実現方法とM&Aの有効性、④M&Aを決断した場合の適切な相手の見つけ方、⑤お相手選びの業種の傾向、⑥日本M&Aセンターの強み、といったテーマで実際のM&A事例も交えながらわかりやすく解説しています。
大阪市立大学卒業後、約10年間大手専門商社にて国内外のバリューチェーン、サプライチェーンの提案営業に従事。2016年日本M&Aセンター入社以降、金融法人部にてM&A業務に従事。2020年4月より現職。