不名誉にも、パワハラ・セクハラ大国と言われる日本。実際この記事を読んでいる方の中にも、パワハラ・セクハラの被害者となった、もしくは目撃したことがあるという方は少なくないはずです。
近年では、パワハラやセクハラを減らしていくという意識が強くなってきました。加害者になる人を減らす対策や、被害者を救済するための、ハラスメント防止の法整備が進んでいます。さらに、コロナ禍のストレスやリモートワークによってコミュニケーション不足は増加し、それに伴って職場におけるパワハラも増大する傾向にあります。
目次
日本のパワハラ頻度 世界と比べるとどのくらい?
では、日本のパワハラは世界と比較しても多いのか見ていきましょう。
以下は、ISSPの調査に基づくパワハラの発生頻度を国際的に比較したものです。日本はインド、オーストラリア、ニュージーランドに続く第4位にランクインしてしまいました。また、男女別に見てみると、トップ3カ国と比べても、女性に対するハラスメントは男性よりもかなり多いことが分かります。
国 | パワハラを受けた人の割合(%) |
インド | 32.3 |
オーストラリア | 31.9 |
ニュージーランド | 29.6 |
日本 | 25.3 |
フランス | 24.2 |
ベルギー | 19.1 |
アイスランド | 18.3 |
フィンランド | 18 |
アメリカ | 17.3 |
デンマーク | 17.2 |
イギリス | 16 |
エストニア | 14.2 |
中国 | 14.1 |
ノルウェー | 13.8 |
スイス | 13.7 |
スウェーデン | 12.4 |
イスラエル | 11.9 |
クロアチア | 11.3 |
スロベニア | 10.7 |
チェコ | 10.5 |
ドイツ | 10.5 |
ラトビア | 10 |
ポーランド | 9.6 |
チリ | 9.6 |
スリナム | 9.4 |
南アフリカ | 9.3 |
ベネズエラ | 8.8 |
スペイン | 8.6 |
オーストリア | 8.5 |
スロバキア | 7.4 |
フィリピン | 7.4 |
リトアニア | 7.2 |
台湾 | 7.2 |
ロシア | 6.6 |
メキシコ | 6.1 |
ハンガリー | 3.8 |
ジョージア | 3.5 |
出典:https://honkawa2.sakura.ne.jp/3267.html 、https://www.gesis.org/en/issp/modules/issp-modules-by-topic/work-orientations/2015 、https://president.jp/articles/-/28602
上記のランキングで、上位の国と下位の国の違いは一体何があるのでしょうか。
実は、2019年に行われたILO(国際労働機関)の総会で職場での暴力やハラスメントを全面的に禁止するという初の国際条約が採択されました。スウェーデンやイギリス、フランス、ベルギーなど、すでにハラスメントが法制化されている欧米諸国は賛成派でしたが、アメリカやロシア、そして日本の経団連を含む経営者団体は慎重な姿勢だったようです。
また、4位のフランスは世界でもハラスメントに対する対策がいち早く進んでいる国です。1992年に法でセクハラ罪が定義されていて、罰則が設けられています。
つまり、パワハラが実際に多い国というよりは、ハラスメントに対する意識の高い国が上位にランクインしている傾向が見て取れます。もちろん、全ての国においてその通りではなく、最終的には、各国のハラスメントに対する認識や取り巻く事情が複雑に絡み合った結果と言えます。実際、1位にランクインしているインドでは、カースト制度や多様性などの文化的矛盾を抱えている一方、従業員10名以上の全てのインド企業を対象とした厳しいセクハラ防止法も制定されています。
セクハラを受けたことのある女性の割合 国際比較
次に、セクシャルハラスメントの発生状況に焦点を当ててみましょう。
最新のWIN World Surveyによると、18歳から34歳まででセクハラを受けたことのある女性の割合は日本は14%で、前段のインフォグラフィックスの数字と比べると多少低くなっていますが、先進国の中で比べると、決して低くない数字だということが分かります。
他に上位ランクインした、メキシコ、アイルランド、オーストラリア、チリ、オーストラリア以外は、「職場におけるパワハラの発生頻度 各国比較」では下位になっていました。それはハラスメントが、性別、年齢に関係なく問題となっていることを、多くの人が認識しているということではないでしょうか。
逆に言うと、この2つのインフォグラフィックスで下位になっているからといって、本当にパワハラやセクハラが起こっていないのではなく、起きていても気が付いていない可能性が多くあります。
国内での職場いじめや嫌がらせは増加傾向に
次に、国内のいじめや嫌がらせの実態を見てみましょう。
総合労働相談コーナーにおける、令和元(2019)年の総合労働相談件数は、全部で118万8,340件となり、12年連続で100万件を超えています。その中でも、「いじめ・嫌がらせ」が8年連続トップとなっており、2019年の相談件数は87,570件に上っています。
では、増え続けているいじめや嫌がらせを放置し、なんの対策もしていないという会社ばかりなのかというと、そうではないはずです。定期的に管理職との個人面談を行ったりして、悩んでいること、困っていることがないかを話せる場が設けられているという会社は少なくないでしょう。それでもいじめ・嫌がらせは減ることがないのは、面談を行う管理職たちが、パワハラやセクハラが普通の時代を過ごしてきているということが、原因の一つかもしれません。
また、被害者側も面談といってもそれは形式的なものであり、本当に困っていることを打ち明けられる場だと認識できず、面談という時間を何となくやり過ごそうと思ってしまっている人もいるはずです。
日本は、昔から労働時間が長く、自己を犠牲にしても会社のために働くという考えが根付いてしまっています。それは、管理職になるような40代、50代に多いのです。そうした年齢層はどうしてもパワハラやセクハラに対する危機感が低くなってしまい、問題解決が遠のいてしまいがちです。
ジェンダーハラスメントでは、セクハラ・マタハラが最も多い結果に
「令和元年度 都道府県労働局雇用環境・均等部(室)での法施行状況」によれば、男女雇用機会均等法の施行状況に関わる相談内容の内訳で最も多いのが、セクシュアルハラスメント、続いて婚姻、妊娠・出産等に関わるものでした。
日本では、以前に比べると男女差別は減ってきているように思えます。しかし、まだまだ問題は多く、悩んでいる人は多く存在してるのです。特に婚姻、妊娠・出産等を理由とする不利益取扱は4,769件と、セクハラに次いで多くなっています。
働く女性が増えていく中で、少子化問題はかなり深刻な問題です。しかし、そこに追い打ちをかけるように、日本の社会は働く女性たちの婚姻、妊娠・出産への対策が遅れていることがわかります。
コロナ禍でパワハラが増加?
前段では、日本のセクハラの実態について見てきましたが、次にコロナ禍で増加しているパワハラについて解説していきます。性差に関する問題が多かった日本ですが、コロナ禍によって、男性の労働相談が急増しているのです。
連合茨城によると、昨年3~12月の労働相談は女性からの相談が6割でした。しかし、昨年の11月と12月の約2か月間では男性が7割を超え、女性の割合を大きく上回っていると発表しています。
これは、初めにも述べたコミュニケーション不足が原因となっています。コロナ禍によって、リモートワークや出勤時間の調整、会社の人とオフラインでコミュニケーションをとる機会は急激に減少しました。コミュニケーションが不足し、人と話す機会が減ることで、ストレスの自己制御が難しくなっていると言われています。ストレスの自己制御ができず、パワハラをしてしまう人がいるのです。
また、「カスハラ」といった新しいハラスメントも増えています。カスハラとは、会社などに対する消費者や顧客からの理不尽で度を越したクレームをカスタマーハラスメント(いわゆる「カスハラ」)と言い、社会問題になっています。このカスハラもまた、働く人々に大きなストレスを与え、パワハラを引き起こす原因となっています。
パワーハラスメントやセクシャルハラスメントの疑いがあれば職場内調査を
上記のデータで見てきた通り、日本ではたくさんのハラスメントが毎年発生し、多くの人達が悩んでいます。あなたの会社にも、労働問題やハラスメントで悩んでいる方がいるかもしれません。
では、もし実際にあなたの身の回りでハラスメントが起きた場合、どう対応したら良いでしょうか。大切なことは、ハラスメントが起きている証拠を掴み、専門家である「弁護士や労務士に相談する」ということです。
職場内調査の問題点
ハラスメントを立証もしくは解決するためには、専門家に相談する前に、ハラスメントを受けた事実や証拠を集めなければなりません。立証できるものがないと、訴えや調停を起こすことができません。また、十分な証拠がなければ、狙い通りの結果になりません。
弁護士や社労士は、調査の専門家ではありません。訴訟準備や行政側への対応のアドバイスを受けることはできます。しかし、弁護士等からは、証拠集めの調査については、自分で証拠収集するようにアドバイスされます。
職場内調査の問題点
会社内で問題が起きた場合、現状では、パワハラを受けた本人か会社の役員が証拠集めを行うことになります。しかし、ハラスメントの証拠を集める段階で、以下の問題に直面します。
・どう証拠を集めていいか分からない。
・自分の代わりに証拠を集めてくれる人や専門機関がない。
民事的な調査の専門家は、探偵・興信所です。しかし、日本国内では、ハラスメントに関する職場内調査を専門に扱う探偵業者がないのが現状です。
海外での職場内調査の業界団体
アメリカ、カナダ、オーストラリアなどの先進国では、職場内調査の専門家が加盟する業界団体があります。業界団体には、弁護士や探偵業者やケースワーカー等が加盟しています。
特にアメリカでは探偵業が盛んで、多種多様な分野を専門とする会社が多数存在します。
一方で日本では、ハラスメントが多く発生しているのにも関わらず、職場内調査を専門とする機関が存在しません。
それゆえ、職場内調査のノウハウについてアドバイスしたり、実務調査を遂行する専門機関がない日本では、ハラスメントの当事者が、独自に調査を行うしかありませんでした。
自力調査の限界
自力での証拠集めには、時間的な面、技術的な面で困難です。会社の同僚や関係者からの幅広い証言も必要になります。通常業務をこなしながら、証拠収集を行うのは限界があるでしょう。また、自力の調査では、第三者的な公平な立場で客観的な証言を獲得することも困難です。
そこで、職場内調査では、証拠収集業務を専門に扱う探偵会社を活用するのが得策です。
探偵会社の職場内調査
探偵会社は、以下のような調査活動を得意としています。
・行動調査
・身辺調査
・特殊機材での情報収集
・事情聴取の調書作成
具体的には、職場内での監視カメラや録音機材で証拠集めをしたり、関係者への取材で準備書面をを作成したり、関係者への身辺調査を行ったりしていきます。外部(第三者機関)へ調査委託することで、公正な立場での客観的証拠収集が可能です。
JAPAN PIには、長年の実績や蓄積されたノウハウがあり、職場内調査でのサポートを専門に行っています。労働問題やハラスメントの問題でお困りの方は、是非JAPAN PIにご相談ください。