〈出荷頭数少なく、相場は堅調、同等級でも高値安値の差広がる〉
沖縄県を除く9都道府県の緊急事態宣言が6月20日で解除され、まん延防止等重点措置に移行したが、飲食店の時短営業や酒類提供の時間制限などの対策により、当初の期待とは裏腹に、末端需要の回復は見られず。大雨など天候不順もあり、むしろ解除後の方が需要はより悪化したとの声すらも聞かれる。
6月の平均枝肉相場(東京市場)は、和牛4~5等級の上位等級はほぼ5月並みの横ばいで、3等級が60円強下げ、交雑種B3も100円ほど下げた。乳雄(搬入)B2も30円弱下げたものの、1,051円と4ケタ台の価格を維持、「父の日」需要など、輸入品の相場高から一部でホルスを扱う動きが出たとはいえ、ヒレ・ロースの需要は低迷したままで、ホルスの出荷頭数が少ないため高値が維持された形となった。
7月は例年、月後半ごろまでは梅雨の時期が続いて需要が低迷する時期となるため、牛肉の末端消費が回復する材料は少ない。ただ、東京オリンピック・パラリンピックの関係で変則的な4連休となるため、流通各社も、前年並みの販売成績を上げるチャンスとして、産地フェアなど何らかの販促を仕掛ける動きも予想される。
そのため、7月3週目には枝肉の手当ての動きが強まる可能性もあり、さらに月後半には盆休み需要に向けた動きも予想される。実需の期待は薄いものの、手当ての動きから中旬以降、強含む可能性は高い。
〈供給見通し〉
農畜産業振興機構が6月28日に公表した牛肉需給予測によると、7月の成牛出荷頭数は8万9,700頭(前年同月比6.0%減)。このうち、和牛は4万3,200頭(同6.0%減)、交雑種1万8,800頭(8.9%減)、乳用種2万6,100頭(3.8%減)と3品種ともに前年実績を下回ると予想されているが、手当ての動きが強まる月後半から出荷頭数は緩やかに増えるとみられる。
これに対して7月の牛肉輸入量は、チルドが2万2,300t(4.1%減)、フローズンが2万6,500t(9.7%減)とこちらも少ない見込み。慢性的な入船スケジュール遅れに加えて、北米産など7月入荷玉はさらにコストが上昇しているため、引続きホルスの引合いが堅調に続くと予想される。
〈需要見通し〉
牛肉の末端需要は、5月の連休以降、低迷しており、6月はさらに悪化の傾向がみられた。外食需要やホテル関係の宴会需要が打撃を受けるなか、相場高から小売関係も思うような販売ができないでいる。例年ならば、焼材の需要も底堅く推移するが、今年は昨年よりも焼材需要は低迷しており、動いているのは切り落とし用のモモ、ウデなどのスソ物部位やミンチ材といった不振ぶりとなった。
7月に入り、ある都内の量販店の精肉売り場を見ると、週末こそ和牛のステーキ材、焼肉商材が品揃えされているが、夕方のピークを過ぎると、切り落とし商品は少なく、焼材・ステーキ関係は売れ残っているのが目立つ。仕入れコストの上昇から、1パック当たりの量目を減らしているケースも聞く。オリンピックの開催もあり、前述の通り、4連休には何らかの販促・売込みをかける動きは予想されるが、梅雨が明ける7月下旬ごろまでは厳しい状況が続きそうだ。
〈価格見通し〉
7月に入ってからも中間流通段階の買気は弱く、先週以降、都市圏の市場では地方からの買参も減っているという。とはいえ、4連休に向けて枝肉を手当てする場合、作業日を考えると3週目がポイント。このため、今月前半は横ばい、後半から小幅上げの展開と予想される。それでも同等級間でも歩留まりや瑕疵など品質・産地によって高値・安値の価格差が広がりそうだ。
このため7月の月平均相場は和牛去勢A5等級で2,750円前後、4等級で2,400~2,450円、3等級で2,200円前後、交雑種去勢B3が1,650円前後、B2で1,500円前後、乳雄B3で1,150円前後、B2で1,130円程度と予想される。
〈畜産日報2021年7月6日付〉