韓国が「G7入り」できない3つの理由
(画像=JBOY/stock.adobe.com)

2021年6月11~13日にわたり、英国で開催されたG7首脳会談に、韓国はゲスト(特別参加)国として出席した。しかし、中国のけん制を恐れ、あくまでゲスト国としての位置づけを強くアピールしている。また、仮に韓国が加盟を望んだとしても、正式なG7加盟国として迎え入れられるまでの道のりは長いとの見方が強い。それは、韓国がG7諸国と肩を並べるには、いくつかの決定的に足りない要素があるからだ。

初の「ゲスト国」参加を果たした韓国

韓国の初の参加は、開催地となった英国のボリス・ジョンソン首相に、インド、オーストラリア、南アフリカと共にゲスト国として招待される形で実現した。前年の2020年首脳会談(米国・トランプ前政権主催)にも招待されていたが、新型コロナの影響でキャンセルとなっていた。

ジョンソン首相がG7国と韓国、インド、オーストラリアで構成される「D10(民主主義10カ国)」 の構想を打ち出していたことから、今回の首脳会議を機に具体化する可能性も注目されていた。韓国政府高官は参加にあたり、「健康や気候変動問題などの差し迫った世界的課題への共同対応を策定する上で、G7におけるリーダーシップを発揮してみせる」と記者団に語った。

韓国が招待された正確な理由については明らかにされていないが、一つはG7の体制強化が目的だと推測される。前世界金融危機(2007~2010年)以降、国際的地位が弱化しているG7に、国際社会で存在感を増している国を引き入れることにより、新風を呼び込む意図があるのではないか。

ちなみに、2019年に開催されたフランス主催のG7首脳会談には、インド、南アフリカ、オーストラリアのほか、チリ、エジプト、ルワンダ、ブルキナファソ、セネガル、スペインが招待された。また、今回に関しては、「対中包囲網の枠組みを拡大する」という、米国の意図も強く影響したはずだ。米中板挟みの韓国に、くさびを打ち込む効果を狙ったものと思われる。

韓国がG7に加盟できない3つの理由

韓国の参加により、G7への正式加盟の可能性が一部で議論されているが、これについては非現実的との見方も少なくない。韓国は経済大国としてG7と肩を並べ、国際的な功績を評価されることは望んでいても、中国からの圧力を考えると正式加盟までは望んでいないのではないだろうか。

このような背景を踏まえた上で、現在の韓国がG7に加盟できない3つの理由を挙げてみよう。

1.中国に頭が上がらない 

一つ目の理由は、中国に対する平身低頭姿勢だ。

韓国にとってG7への参加は、国際的地位を誇示する絶好のチャンスである反面、友好的な韓中関係を維持する上では地雷になりかねない。5月の米韓共同声明に「台湾海峡の平和と安定」を盛り込んだことで、すでに中国からは警告を受けている。

文在寅大統領は、首脳会談に招待された事実に鼻を高くしてはいるが、あくまで招待国の立場に徹している。参加の意図については「世界のサプライチェーンおよび自由貿易強化の必要性」を挙げ、中国を刺激する内容を含むG7共同声明には同調しない意向を示すなど、参加前から予防線を張っていた。

G7国であるドイツやイタリア同様、中国は韓国にとって最大の貿易相手国であり、地理的にも隣接している。在韓米軍の防衛システムを巡る経済制裁を経験済みの韓国にとって、中国との対立は何としてでも回避すべき最優先事項だ。

2.国際的な価値観が共有できない

G7は、国際問題や世界情勢を巡る政策協調のための議論の場であり、国際的な視野から基本的価値観を共有することが必要不可欠である。このような観点に立つと、韓国は世界第12位の経済大国に成長しているものの、民主主義や自由、外交など、G7国と価値観を共有できる要素が少ない。

少なくとも文在寅政権下では、価値観の差が著しく縮小する可能性は低い。環境問題やパンデミック対策で他国と意見が一致しても、基本的価値観が一致しなければ、G7の中では機能しない。

価値観の差を象徴するエピソードが、G7首脳会談後に報じられている。韓国がG7各国首脳の集合写真で「序列」にこだわるあまり、写真を加工したというのだ。問題の写真は前列にジョンソン首相とバイデン大統領、仏マクロン大統領、そして南アフリカのラマポーザ大統領と文在寅政が並んだ一枚だった。菅首相を含め、他のG7国の首相が後列に並んでいる様子から、ゲスト国に敬意を払って撮影された配慮が読み取れる。

ところが、韓国政府はラマポーザ大統領をカットし、「1枚の写真で見る、大韓民国の地位」などと題してSNSで公開した。後に非難を受けたことから、「写真制作プロセスのミス」という苦しい言い訳で加工されていない写真に置き換えたというが、虚栄心からこのような馬鹿げた加工を行い、他国の大統領に非礼をする国が、G7に迎え入れられるとは思えない。

3.日韓関係に改善の兆しが見られない

G7国である日本との関係の悪化も、加入できない理由の一つとして挙げられる。

2020年に韓国が招待された際、反対の意を示した日本だが、今回も「不適切な条件」を理由に、韓国の参加に不服を申し立てた。米国の仲介も功を成さず、両国の関係は冷え込んだままだ。保身に走る文在寅大統領は手のひらを返したように軟化の姿勢を示しているが、日本側は頑なにこれを拒んでいる。

文在寅大統領は首脳会談場と浜辺でのバーベキューパーティーの2回にわたり、菅首相へのアプローチを試みたが、いずれも挨拶を交わすだけに終わったという。韓国側が徴用工訴訴や慰安婦問題で具体的な解決策を提示し、両国の関係改善の見通しがつかない限り、G7加盟が話題に上がることすらないだろう。

民主主義社会でリーダーシップを発揮できない韓国

今回のG7首脳会談への招待が、韓国の発展を象徴する出来事であることは間違いないが、韓国が民主主義社会でリーダーシップを発揮できる国かというと、大きな疑問符が付く。韓国がG7加盟を望む、望まないに関わらず、現状の韓国では「ゲスト国」の立場が適切ではないだろうか。

文・アレン琴子(オランダ在住のフリーライター)

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