コロナ禍で航空業界に異変!? AIRDOとソラシドエアの経営統合は氷山の一角か
(画像=VanderWolfImages/stock.adobe.com)

新型コロナウイルスの感染拡大は、航空業界に大きなダメージを与えた。乗客数が激減し、各社、大きな赤字を計上するに至った。そのような状況で、航空会社の経営統合や共同運航に関するニュースが報じられている。コロナ禍で航空業界の業界地図は大きく変わるのか。

北海道のAIRDOと九州のソラシドエアが経営統合へ

北海道が地盤の航空会社であるAIRDO(エア・ドゥ)は2021年5月31日、九州を拠点とするソラシドエアと、共同持株会社を設立することに関する基本合意書を締結したことを発表した。AIRDOとソラシドエアのブランドはそれぞれ残すが、実質的な経営統合だ。

経営統合に踏み切ったのには、両社が有する人材や技術、施設などを効率的に活用した上で、経営統合によるスケールメリットを最大限発揮させ、コロナ禍でダメージを受けた財務基盤を早期に回復させる狙いがある。

報道発表では、「両社を取り巻く経営環境は、新型コロナウイルス感染症の拡大で一変し、航空需要が大幅に減少するなど、かつて経験したことのない極めて厳しい状況に直面しております」と悲鳴にも近い一文が書かれており、このような苦境を経営統合で何とか打開したい考えだ。

ちなみに、両社の大株主にはともにANAホールディングスがいることが共通点だ。

ANAはLCCのピーチ・アビエーションと共同運航便

AIRDOとソラシドエアの実質的経営統合はコロナ禍に端を発するものだが、ANA(全日本空輸)とピーチ・アビエーションの共同運航便開始の発表にも、似たような背景がある。

これまでANAは、積極的に国内路線の拡充を進めてきた。しかし、コロナ禍ではそれがあだとなり、大きな赤字を抱えることになった。2021年3月期の連結業績(2020年4月〜2021年3月)は、4,046億円の赤字に陥っている。この赤字額は同社としては過去最大だ。

そんな中、ANAとピーチ・アビエーションはピーチの一部路線で、共同運航(コードシェア)を2021年8月から開始することで合意した。ANAとしては、ピーチの航空機・路線を使った共同運航を増やすことで、経費の削減につなげたい考えがあるとみられる。

しかし、ANAにとっては苦渋の決断だったはずだ。ANAだと思って共同運航便に乗った人が、LCC(格安航空)であるピーチの機体の狭さにがっかりするケースが少なからず出てくるからだ。そのため今回の共同運航は、ANAのブランド価値を下げかねない。

なお、ピーチ・アビエーションはANAホールディングスの子会社であることから、共同運航の開始は比較的スムーズに決まったようだ。当面は、国内線の成田発着3路線と名古屋発着2路線で共同運航を行うが、早期に共同運航路線を拡大していくことも十分に考えられそうだ。

経営統合や共同運航、将来は吉と出るか凶と出るか

コロナ禍をきっかけとした経営統合や共同運航が進められている。このようなことは、各社にとって将来、吉となるのだろうか、それとも凶と出るのだろうか。結論から言えば、結果は現時点では分からない。しかし、吉と出る可能性は十分にある。

経営統合や共同運航によって、事業コストを削減することができる。事業コストを削減できれば、その分を新機材の購入や機内サービスの拡充などに充てることも可能になる。航空運賃の引き下げによって利用客を増やすことも狙える。

また、事業コストを下げれば、再びコロナ禍のような事態が起きたときに、ダメージが少なく済むこともメリットと言える。経営統合や共同運航によって各社・各ブランドのサービスの独自色は薄まってしまうが、デメリットばかりではないのだ。

しかも、経営統合や共同運航といった思い切った取り組みは、平時ではなかなか踏み出せないものだ。コロナ禍による苦渋の策だったとはいえ、結果的に事業コストの削減が一気に進むのなら、将来振り返るときに「コロナ禍は良いきっかけだった」と思えるかもしれない。

一方のJALは?傘下のLCCと共同運航はあり得るのか

AIRDOとソラシドエアの経営統合、そしてANAとピーチの共同運航という2つのニュースは、いずれもANAが絡む話だ。一方で、JAL(日本航空)では似たような動きはないのだろうか。結論から言えば、今のところそのようなニュースは出てきていない。

ただし今後、JALが同社傘下のLCCであるZIP AIR(ジップエア)と共同運航を開始することは十分に考えられそうだ。現に、JALとZIP AIRは貨物便で共同運航をしており、コスト削減に向けた取り組みとして、旅客便での共同運航も十分に考えられるだろう。

ワクチン接種が進んでコロナ禍が収束に向かいそうではあるが、ワクチンが全く効かない変異株が猛威を振るうようなことがあれば、さらに業界でさまざまな動きが起きるはずだ。しばらくはコロナ禍の状況はもちろん、航空業界のニュースから目が離せない。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)

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