食品産業新聞社
(画像=食品産業新聞社)

〈前月並みを維持、出荷頭数の谷間によっては上げる可能性も〉
2020年と同様、4都府県では緊急事態宣言下で迎えたことしのゴールデンウィーク(GW)だったが、4月の東京市場の豚枝肉相場は上物税抜き456円と前年同月比110円安となった。2020年4月は巣ごもり需要の増加から、上物500円台半ば(東京市場、税抜き)で推移していた豚価が4月21日から値上がりして、GW直前の4月28日には696円まで上昇した。

しかし、ことしのGWは3度目の緊急事態宣言が発令されたものの、飛び石だったことや2020年の1回目と違い、巣ごもり需要の極端な伸びはないとみる向きが強く、2020年と比べGWに向けた手当買いは冷静な対応だったようだ。

そのため、枝肉相場は4月の最終週に入っても500円には届かず、盛り上がりに欠ける展開となった。5月は月末まで緊急事態宣言が延長される見込みとなり、家庭内消費中心の消費動向が継続するものとみられる。

そうはいっても、2020年のような巣ごもり需要への期待は薄く、ある程度落ち着いた消費動向が予想される。上旬は連休明けの在庫補充で相場が上がるとして、その後は出荷頭数、輸入チルドポークとの兼ね合いを勘案しても相場の上げ要因は少なく、おおむね前月並みの水準を維持するものとみられる。このため、5月の東京市場の豚枝肉相場は上物税抜きで500円絡みの展開が予想される。

〈供給動向〉
農水省が4月22日に公表した肉豚生産出荷予測によると、5月の出荷頭数は132.7万頭と前年同月比で3%増加すると予測している。ことしの5月は1日を含む20日稼働で、1日当たり約6万6,000頭となる見通しだ。夏場にかけて出荷頭数が落ち込んでくる時期でもあるが、ことしはある程度、順調な出荷を維持しそうだ。しかし、3〜4月にかけて早出しの傾向が続いたことから、今後、早出しの反動で出荷の谷間が出てくる可能性も考えられる。

農畜産業振興機構の需給予測によると、5月のチルド豚肉の輸入量は前年同月比1.1%減の3万3,100tと予測。前年同月は北米の現地工場の稼働停止などで輸入量が少なかったものの、ことしは飼料価格の高騰やアジアを中心とした買い付け増加による現地高などの影響から、前年をわずかに下回る輸入量を見込んでいる。アイテムによっては引き続きタイトな状況が予想されるが、それでも3万t台のボリュームが入ってくるものとみられる。

〈需要見通し〉
4月はGW直前には強めの発注が見受けられ、連休期間中は底堅い内食需要に支えられ、量販店を中心にそれなりの売れ行きだったようだ。ただ、BBQなどの行楽需要は落ち込んだため、スペアリブやロイン系の動きは鈍かった。

5月は緊急事態宣言が延長されることとなり、引き続き内食需要は堅調に推移することが予想される。とくに連休明け以降は、消費者の節約志向から豚肉のへの需要が期待されるが、荷動きの中心は単価の安いウデ・モモといったスソ物の需要が強く、ロースやカタロースは落ち着く展開となりそうだ。一方で、輸入チルドのコストが上昇しているため、国産の相場次第では国産品に需要がシフトすることも考えられる。

〈価格見通し〉
GWが明け、関東3市場の相場が出そろった5月7日の全農建値は、上物税抜きで454円(税込み490円)となった。5月は上述の通り、量販店などの堅調な需要を背景に末端消費は底堅く推移するとみられる一方、出荷頭数や輸入チルド供給状況からみれば、相場の上げ要因は少ない。上旬は補充買いの動きから高値推移するとしても、中旬以降は末端消費が落ち着き、出荷頭数の落ち込みがなければ、4月の伸び悩みからみても大幅な上げは期待しにくい。このため、月間平均(東京市場)では上物税抜きで500円前後(税込み540円前後)と予想する。

〈畜産日報2021年5月10日付〉