コロナ対策で「小池百合子総理」と菅氏が揶揄される理由
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コロナ禍の収束に向けた対策が、菅総理の主導で進められている。しかし、コロナ対策においては「小池百合子総理」と、菅氏を揶揄する声も聞かれる。緊急事態宣言に関する判断において、菅氏が小池氏の顔色をうかがう状況になっているように見えたからだ。

新型コロナウイルスの感染拡大対策の現状

まず、新型コロナウイルス感染者数の推移と感染拡大対策の現状から紐解いていこう。

新型コロナウイルスの感染者数については、2020年4月に「第1波」が起き、政府は緊急事態宣言を発令した。その後、区域の変更や期間の延長などを行い、感染者数などが一定程度減少したことから、5月に緊急事態宣言を解除した。

その後、2020年7~8月にかけて、再び感染者数が増加して「第2波」が起き、全国で1日1,000人以上の感染者が確認される事態となった。しかし、9~10月には感染者数が再び減り、2度目の緊急事態宣言は見送られた。

菅首相が自民党の総裁選挙で総裁に選出され、その後の内閣総理大臣指名選挙によって総理大臣に指名されたのはこの時期だ。その後、第99代内閣総理大臣として目下の課題である新型コロナウイルス対策にあたってきた。

そして、11月に入って新型コロナウイルスの感染者数は再び増加し始め、2021年1月には1日あたりの感染者数が5,000人を超え、菅総理は1月7日に2度目の緊急事態宣言を発出した。当初、3月8日までの予定であったが、感染者数が引き続き多い状況が続いたため、さらに期間が延長された。ようやく感染者数が減ってきたことにより、この2度目の緊急事態宣言は3月21日の解除に至った。

宣言の発出・延長の背景に小池都知事の影響力?

このような流れの中で「小池百合子総理」と揶揄する声が囁かれるようになったのは、菅総理の緊急事態宣言に関する判断に、東京都知事の小池百合子氏の考え方や危機感が色濃く反映されたのでは、と推測する人が少なくないからだ。

2度目の緊急事態宣言の瀬戸際において…

たとえば、2度目の緊急事態宣言を出すか出さないかの瀬戸際では、小池知事は臨時会見において「年末年始で感染を抑えなければ、宣言の発出を国に要請せざるを得なくなる」と述べている。

その後、年が明けた1月4日には、政府が緊急事態宣言の発出の検討を始めることを受け、「早速ご対応いただいたと考えているし、今のポイントはスピードだと思う」と語った。この言葉からは、小池都知事の危機感が国を動かした、というイメージを受ける。

もちろん、小池都知事の意見だけが政府の緊急事態宣言の発令を後押ししたわけではないが、日本の首都であり最も感染者数が多い東京都側の考え方は、少なからず政府の判断に影響を与えることは確かだ。

2度目の緊急事態宣言を延長するかの瀬戸際において・・・

結局、政府は2度目の緊急事態宣言を発令することになり、感染者数もその後減少傾向に転じたが、なかなか緊急事態宣言を解除するまでの水準には至らなかった。そのような中、緊急事態宣言を延長するかどうかが次の焦点となっていった。

その状況で小池氏はどう動いていたのか。報道などによれば、小池氏は緊急事態宣言の対象となっていた神奈川県の黒岩祐治知事に対し、延長せざるを得ない旨を電話で伝えていた。政府が延長を決める前に、知事間で足並みを揃えようと水面下で動いていたわけだ。

また、黒岩知事は延長に対しては賛成を示さなかったが、その後、小池氏が千葉県知事と埼玉県知事に対して黒岩知事が賛成していると伝え、両知事の賛成にこぎ着けたことも、報道によって明らかになっている。

つまり、黒岩知事の判断について異なる事実を伝えてまで、政府に決断を迫る「土台」を整えようとしたわけだ。

小池氏のリーダーシップが際立ったことは確か

このように小池都知事が水面下で動いていたことについては、決して批判だけを受けるべきこととも言えない。

東京都知事は東京都民の命を預かり、さらには日本全国への感染拡大も防ぐ立場にいる。多少強引だとしても宣言延長につながるなら、それを「良し」と見る人も少なからずいるのも事実だろう。

いずれにしても、2度目の緊急事態宣言に関して、小池都知事は発令ならびに延長に関して大きな影響力を持った。本来であれば菅首相にもっとリーダーシップを持ってほしいという思いを込めて、「小池百合子総理」と囁いた人もいるはずだ。

今後も「小池百合子総理」の本領が発揮され続ける?

ワクチン接種が進み、新型コロナウイルスが収束すれば、これらのことも忘れられるかもしれない。しかし、仮に既存のワクチンが効かない変異種が猛威を振るうことになれば、また再び「小池百合子総理」と囁かれることが増える可能性もある。

いずれにしても、「小池百合子総理」という言葉は、菅総理のリーダーシップのなさと小池都知事のリーダーシップによって生まれ、菅総理にとってはネガティブな、小池都知事にとってはポジティブな印象を世間に与えるものとなった。

コロナ対策以外でも、総理と知事の間ではさまざまな駆け引きが行われる。今後も「小池百合子総理」の本領が発揮され続けるのか、気になるところだ。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)

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