事業部制とは?メリットとデメリットをくわしく解説!
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会社を経営するにあたって決めるべき項目の一つが組織形態だ。組織形態には「機能別組織」「事業部制」「カンパニー制」などがあり、どの形態を導入するかによって得られるメリットやデメリットは異なる。今回の記事では、事業部制にフォーカスしてメリットとデメリットを解説していく。機能別組織やカンパニー制との違いを知りたい人はぜひ参考にしてほしい。

目次

  1. 事業部制とは
    1. 事業部制の意味
    2. 事業部制の種類3つ
    3. カンパニー制との違い
    4. 機能別組織との違い
  2. 事業部制のメリット4つ
    1. 現場における迅速な意思決定や行動の実現
    2. 本部は全社的な経営に集中可能
    3. 責任の所在を明確化できる
    4. 経営に必要な視点を持つ人材の育成がしやすい
  3. 事業部制のデメリット3つ
    1. 各事業部において経営資源の無駄が生じやすい
    2. 各事業部の間で壁が生まれる
    3. 短期的な利益の追求につながる
  4. 事業部制の導入は慎重に

事業部制とは

まずは、事業部制に関して最低限知っておくべきポイント(意味や種類、他の組織形態との違い)を解説する。

事業部制の意味

事業部制とは、事業ごとに分けられた部署を本社部門の下に配置する組織形態でこの形態により構成された組織は「事業部制組織」と呼ばれている。事業部制が持つ最大の特徴は、事業部ごとに「生産」「購買」「営業」「マーケティング」といった事業の遂行に必要な機能を有している点だ。日々のビジネスにおいて他の事業部や本社部門との連携は不要だ。

各事業部が自己完結的に事業活動を行っている。また事業運営に必要な権限が各事業部門に移譲されている点も事業部制が持つ大きな特徴の一つだ。事業部制の仕組みは、1920年代のアメリカにおいてデュポンやGMといった大手企業が導入したのがはじまりと言われている。一方で日本では、1930年代に松下電器産業がはじめて国内企業で事業部制を取り入れた。今では多くの企業で事業部制の形態が導入されている。

事業部制の種類3つ

事業部制は、分け方によって以下の3つの種類に大別することが可能だ。

・製品別事業部制
取り扱う商品・サービスによって各事業部を構成する仕組み。例えば「カフェ事業」「居酒屋事業」「レストラン事業」といった形で分けるのが製品別事業部制に該当する。各製品について熟知したプロを育成できるため、事業部制の中では最もポピュラー。

・地域別事業部制
地域によって各事業部を切り分ける仕組み。例えば「関東地方」「関西地方」「九州地方」といった形で分けるのが地域別事業部制に該当する。全国展開や海外進出を図っている企業にとっては、製品別よりもスムーズかつ迅速に事業を行いやすい。

・顧客別事業部制
顧客の特性によって各事業部を構成する仕組み。例えば「収入が低い若者をターゲットとする事業部」「収入が多い中年層をターゲットとする事業部」に分けるケースが該当する。他にもライフスタイルや性別などによって分けることが可能だ。

カンパニー制との違い

事業部制とカンパニー制は、権限を各部署に移譲する点で非常に類似している組織形態だ。その違いは「各部署の独立性の度合い」にある。

・事業部制
あくまで一つの事業に関する運営を各部署に任せる組織形態。生産や営業といった活動は各部署の判断で行うものの「人事や経営戦略」「新規事業への投資」などに関する意思決定は、本部の意向に従う。また各事業部の売り上げや費用は本社で計上する。

・カンパニー制
各部門を1つの会社とみなす組織形態。人事や経営戦略なども含めてほぼすべての決定権が移譲されるうえに売り上げや費用の計上もおのおので行うことが必要だ。そのため事業部制と比べるとカンパニー制は独立性が高い組織形態といえる。

機能別組織との違い

事業部制と機能別組織は、根本的な構造がまったく異なる組織形態である。機能別組織とは、「営業」や「人事」といった機能ごとに各部署を配置する組織形態だ。営業部署では営業、人事部署では人事といった形で、それぞれの部署では担当する仕事のみを専門的に行うのが特徴。そのため事業部制と比べて各機能の専門性を高めやすい点がメリットだ。

ただし部署間の調整に時間や労力を要するため、相対的に経営陣の負担は重くなる傾向がある。また各部署は自身の仕事のみに知識や責任を持つため、部門間の連携がとりにくくなる点は大きなリスクだろう。つまり事業部制と機能別組織では、得られるメリットや注意すべきデメリットがまったく異なる。それぞれの組織形態が適している企業も異なるため、以下に挙げた事業部制のメリット・デメリットを考慮したうえでどの組織形態を取り入れるかを判断したい。

事業部制のメリット4つ

機能別組織やカンパニー制と比較すると事業部制には以下に挙げる4つのメリットがある。

現場における迅速な意思決定や行動の実現

事業部制を導入する最大のメリットは、迅速な意思決定や行動を実現できる点だ。事業部制組織では、各部署に権限が付与されているため、事業に関する決定に際して上層部に都度確認をとる必要がない。そのため本部に権限が集中している機能別組織と比較して迅速に意思決定や行動ができる。迅速な意思決定が可能となるため、市場の急速な変化にも対応できるようになるのだ。

結果的に事業が衰退するリスク軽減にもつながるだろう。

本部は全社的な経営に集中可能

2つ目のメリットは、本社部門が全社的な経営に集中できる点である。機能別組織の場合、本部が各部署に関する権限を担うため、経営陣の負担は重くなる傾向。一方で事業部制では、各事業部に権限の大半が移譲されているため、経営陣の負担は相対的に軽い。各事業部の業務に対する負担が軽くなることで本社部門では全社的な意思決定(全社戦略の策定や新規事業や撤退企業の選定など)に集中できるようになる。

つまり細かな部分を現場に任せて経営陣は本来やるべき業務のみを行えるわけだ。経営陣が全社的な意思決定に集中できれば市場の変化や競合の戦略にも対応しやすくなるだろう。

責任の所在を明確化できる

責任の所在を明らかにできる点も事業部制を導入するメリットの一つである。機能別に部門が分かれている組織では、各部門では自分たちの業務にしか責任を負わないため、ある事業で業績が悪化してもどの部門に問題があったかを判断しにくい。一方で事業部制では、事業部ごとに業績(収支)が数字で出てくるため、各事業部の責任が明らかとなる。

業績が悪い事業部には、主体的な改善を期待できる一方で業績が良い事業部には昇進や報酬の付与といったインセンティブを付与することが可能。言い換えると責任が明らかにされることで各事業部の競争を促進できるわけだ。各事業部が競争を繰り広げることで結果的に会社全体の業績底上げ効果も期待できるだろう。

経営に必要な視点を持つ人材の育成がしやすい

事業部制を導入する4つ目のメリットは、経営者的な視点を持つ人材を育成しやすい点である。機能別組織では「営業なら営業」「生産なら生産」といった形で自分たちの業務のみに特化するため、経営に必要な「全体最適の視点」で業務を捉えられる人材が育ちにくい傾向だ。一方で事業部制では、営業や生産などすべての機能を総合的に考慮して事業部の業績向上を目指す能力が求められる。

事業全体の業績を管理する経験を積ませるからこそ事業部制では全体最適の視点を持った人材が育ちやすいのだ。

事業部制のデメリット3つ

一見すると万能な組織形態に見えるものの事業部制には以下に挙げたようなデメリットもある。事業部制の導入にあたっては、デメリットにも十分注意したい。

各事業部において経営資源の無駄が生じやすい

事業部制が持つ最大のデメリットは、事業部間で経営資源の無駄が生じやすい点である。前述したように事業部制では事業の遂行に必要な機能(営業や人事、生産など)を各事業部が持つ。言い換えると事業部の間で機能の重複ができてしまうわけだ。例えば生産機能は、小規模であれば一つの工場を保有しその工場を複数の事業部で共有するのがコスト面でベストな選択肢となる。

しかし事業部制では、たとえそれぞれが小規模な生産を行う場合でも別々に工場を保有することになるため、工場の建設費用や毎月の運用コストに無駄ができてしまう。

各事業部の間で壁が生まれる

各事業部の間に壁が生じることであらゆる弊害が生まれる点も事業部制で注意すべきデメリットだ。事業部制では、各事業部の中で業務が完結するため、他の事業部との間に物理的・心理的な壁が生まれやすい。交流や連携を図る動機や必要性が低くなるため、新製品開発や新規事業の立ち上げといった全社一丸となる必要性が高いプロジェクトは達成しにくくなる。

また予算配分の際に業績が好調な事業部と不調な事業の間で格差が生じそれが理由で対立に発展するリスクもあるだろう。事業部間で対立が生じた結果、社員のモチベーション低下や離職にもつながりかねないので注意が必要だ。

短期的な利益の追求につながる

意外と見落とされがちだが短期的な利益の追求により長期的な利益を軽視しやすくなる点にも注意が必要だ。前述したように事業部制ではそれぞれの事業部の収支が明らかになる。今年度の収支に基づいて来年度以降の予算配分や事業部長の待遇が決まるような企業の場合、各事業部は短期的に利益を残せるような施策に注力する傾向だ。

一見すると問題ないように思えるが短期の利益ばかりを追求すると「短期的には利益につながるが長期的には損失となる取り組み(人材育成など)」がおろそかとなりかねない。

事業部制の導入は慎重に

事業部制は「現場における迅速な意思決定」と「経営陣による全社的な経営への集中」を両立できる点で優れた組織形態である。ただし部門間の対立リスクや経営資源の無駄が生じやすいなどのデメリットもあるため、他の組織形態も含めて慎重に事業部制を導入するかどうかを検討するのが好ましい。

文・鈴木 裕太(中小企業診断士)

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