NEW・日本の経営者たち〜サステイナブルな社会を作る挑戦〜

日本の職人やアーティストが世界で活躍できる土壌を作るべく、アメリカで和菓子ブランド「MISAKY.TOKYO(ミサキ・トーキョー)」を立ち上げた三木アリッサさんへのインタビュー第二弾。

アメリカではほとんど知られていなかった和菓子をどのように現地に浸透させたのか、その販売戦略とブランディングの秘訣を三木アリッサさんにインタビューした。

アメリカ人向けにローカライズした和菓子を考案

永井 「MISAKY.TOKYO」の和菓子は、一般的な和菓子とは少し見た目が違います。あのビジュアルに行きついた経緯はどのようなことだったのでしょうか。

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(画像:実際に販売している和菓子)

三木 そもそも、私が思う伝統の定義からご説明します。伝統には2種類あり、昔からの伝統をそのまま引き継ぐという伝統の考え方と、次世代につなげることこそが伝統であるという考え方です。私は、次世代に紡いでいくことを重視しています。

考え方としては、どちらが良い、悪いではなく、どちらもあるからこそ、未来に残って行けるものだと信じています。しかしアメリカへいきなり従来の和菓子を持っていっても理解されないと思いました。なぜなら和菓子は、西洋のスイーツとは見た目も味も違いすぎるがゆえに、その良さが理解されずらいからです。

いつかは「これが日本の伝統の和菓子だよ」というものを紹介していきたいと思っていますが、今はその段階ではない。それならばまずは、アメリカ人に和菓子を「これ素敵!」「これおいしそう」「食べてみたい!」と思ってもらえるようにしよう、そのあとで本当の伝統を持っていこう、という思いで始めました。

例えば昔、アメリカでは黒い紙に見えることから、海苔の良さを理解されませんでしたが、今ではカリフォルニアロールができたおかげで海苔も知れ渡るようになり、本物の寿司がどのようなものかを知っている人も増えました。ただ、ここへ来るまでに20年かかったのです。

それだけ文化を変えるということは難しいのです。それならば弊社は、カリフォルニアロールのようにカリフォルニア和菓子を販売して、まず突破口を作り、そのあとに、今の寿司のように、本当においしい伝統の和菓子を紹介していこうと思いました。

永井 現段階は、文化の下地づくりのような感じですね。

三木 まさにそうです。本当に突破口を作っているイメージです。この穴を1個開ければ、興味を持ってくれる人が増えるだろうと考えています。

実は最初、日本の和菓子職人さんにレシピ開発を依頼したんです。しかし、どうしても欧米で評価を得られそうなものが作れませんでした。きっと「伝統的な和菓子はこうあるべきだ」という固定観念を覆すことができなかったからでしょう。

アメリカで流行っているスイーツを参考に自分で作ることにしました。元となったのは「琥珀糖」と呼ばれる400年以上もの歴史がある伝統的な和菓子ですが、ジュエリーのようなビジュアルとハイビスカス、クランベリー、ラベンダーなどアメリカ人にも受け入れられるフレーバーを採用しています。見た目もそうですが、味も徹底的にアメリカ人の好みに合わせレシピを200回以上改良しています。このことが短期間での成長につながったと思います。

新商品やオリジナル商品の展開は確実にホームランを狙えるようになってから

山本 商品について今後、種類を増やしていく予定はありますか?

三木 もちろんあります。ただ、今は「MISAKY.TOKYO」のブランドのアイコン・看板商品をひたすら広めて、作っていくフェーズだと思っています。そこで熱烈なファンの数がもっと増えてから、新商品を展開したほうが、戦略としてはより効果的だと思うからです。

和菓子で世界に展開しているブランドは、多くありません。仮に、私が失敗してしまったら、日本の和菓子ブランドがグローバルに展開に二の足を踏むようになるでしょう。だからこそ、リスクを最小限にしながら、ホームランを確実に狙えるようにしています。  

バランスが重要!日本らしさの演出は2割で十分

山本 商品を作るときに、クリスタルやパワーストーンなどをイメージして作られたと思いますが、日本的な要素を入れようとは思わなかったのでしょうか?たとえば、シンプルに刀とか仏像などをデザインに取り入れれば日本らしさをアピールできたと思うのですが?

三木 確かにその議論はよくあります。しかし市場を調査をしたところ、ギフト需要においては、国の文化をアピールしすぎるものはあまり売れないということがわかったのです。日本の文化を出すということは、バランスがとても大事なのです。最終的に、全体の2割程度を日本らしさのエッセンスを加えれば、十分だということがわかりました。では、弊社がどの部分に2割のエッセンスを加えているかというと、まずはブランド名にあります。「MISAKY.TOKYO」の「MISAKY」という言葉・単語は、英語には存在しません。日本独自の名前なのです。そしてもう一つが、ロゴマークの色合いです。ロゴに使用しているグリーンとオレンジの組み合わせは、欧米のデザインにはほとんど使われることがありません。これは、日本で愛されている伝統的な組み合わせです。

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(画像:三木アリッサ氏提供)

また、商品に同封しているカードには漢字やカタカナを記載、さらに私が着物を着ている写真を加えています。これくらいが日本らしさを表現する2割だと思っています。

これ以上にすると過剰アピールとなり、これ以下では十分伝わらない。この8対2のバランスがとても大事です。

山本 このお菓子はどのようなシーンで用いられることを想定していますか。

三木 高級チョコレートと同じです。弊社のお菓子は、すごく味がはっきりしていて、なおかつ舌のうえに残るように作られています。ですから、改まったお茶会やパーティーでシャンパンとともに味わう高級チョコレートと同じような楽しみ方が可能です。

ビジネスをローカライズさせることの重要さ

三木 アメリカ進出について関心のある日本の製造者様などからお問い合わせをいただくことが多いのですが、私は日本の物をそのままアメリカに持っていくのは、単なる文化の押し付けになりかねないと思っています。というのもアメリカに進出したいのは、日本人だけに限りません。中国人もメキシコ人も、ほかのアジア圏の人々も同じです。アメリカ人ですら、アメリカ国内でビジネスをしたいわけですから。

アメリカに進出したいなら、日本製だとか、日本のブランドが良いから、という理由でそのまま持ち込むのではなく、アメリカ国内でサステナブルな形で根付いていくための努力を根気よくやっているかどうかが大切であり、それが大きな差となっていると感じます。

永井 日系企業の方々は「日本のものは品質がいいから、それをそのまま出せば売れる」と思っている部分がありますよね。

三木 考えてみれば、日本でなじみのあるカレーライスやラーメンなどの中華料理も、本場のものとはずいぶん変わり、日本向けにローカライズされています。同じことがアメリカでも言えるのではないでしょうか。

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