金融トラブルを避けるためには「金融リテラシー」を身に付けておくことが重要だ。お金に関する知識や判断力があれば、無理な投資やローンなどによる悩みを抱えにくくなる。この記事では、金融トラブルの経験者が各都道府県でどのくらいの割合でいるのか紹介する。
金融トラブル経験者が最も多い県は高知県
日本銀行が事務局を務める金融広報中央委員会は、大規模調査として実施した「金融リテラシー調査 2019年」の結果を2019年7月に公表している。その中で各都道府県に金融トラブル経験者がどのくらいの割合でいるのかが紹介されている。
ちなみに金融トラブル経験者の割合は「金融トラブルに巻き込まれたことがある」と回答した人の割合で、全体の平均は6.7%となっている。
<金融トラブル経験者が多い都道府県ランキング>
1位 | 高知県(11.3%) |
2位 | 佐賀県(10.1%) |
3位 | 沖縄県(10.0%) |
4位 | 鳥取県(9.2%) |
4位 | 島根県(9.2%) |
6位 | 秋田県(9.0%) |
7位 | 岩手県(8.8%) |
7位 | 徳島県(8.8%) |
9位 | 新潟県(8.6%) |
10位 | 群馬県(8.3%) |
※出典:金融リテラシー調査 2019年
金融広報中央委員会による調査の結果、最も金融トラブル経験者の割合が多い都道府県は、高知県で11.3%だった。つづいて佐賀県が10.1%、沖縄県が10.0%とそれぞれ2桁%台となっており、4位は鳥取県と島根県でそれぞれ9.2%となっている。
ちなみに地域別でみると、金融トラブル経験者の割合が最も多かったのは「四国」で平均8.2%だった。
金融トラブル経験者が最も少ない県は奈良県
<金融トラブル経験者が少ない都道府県ランキング>
1位 | 奈良県(3.7%) |
2位 | 滋賀県(4.0%) |
3位 | 埼玉県(5.1%) |
3位 | 岐阜県(5.1%) |
5位 | 栃木県(5.4%) |
5位 | 千葉県(5.4%) |
7位 | 山梨県(5.6%) |
8位 | 兵庫県(5.7%) |
9位 | 和歌山県(5.8%) |
10位 | 熊本県(5.8%) |
※出典:金融リテラシー調査 2019年
金融トラブル経験者の割合が最も少なかったのは奈良県で、3.7%にとどまっている。つづいて、滋賀県が4.0%、埼玉県と岐阜県がそれぞれ5.1%という結果だ。地域別では「関東」が6.0%で最も金融トラブル経験者が少なくなっている。
金融トラブルが多くなる理由は?
ランキングでは高知県が最も金融トラブル経験者の割合が多い結果となった。なぜだろうか。
高知県のデータを詳しくみると、「商品性を理解せずに投資信託を購入した人の割合」が全国平均(31.3%)よりも8.7%高いほか、「消費者ローンを利用している人の割合」も全国平均(4.8%)の倍近い8.5%となっている。
こうした結果から、消費者ローンの利用や安易な投資によって金融トラブルに巻き込まれる人が多くなっていることが分かる。また「学校等で金融教育を受けた人の割合」も高知県は全国平均(7.2%)に比べて低く、高知県で実践されている金融教育にも課題がありそうだ。
金融トラブルが少ない人の特徴は?
では逆に金融トラブルが少ない人には、どのような特徴があるのだろうか。金融広報中央委員会は金融トラブルが少ない人の行動特性や考え方として、「情報を頻繁にみている」「家計管理がしっかりとしている」「調査している」など、以下の特徴を挙げている。
・情報を頻繁にみている
・家計管理がしっかりしている
・計画をたてている
・他の商品と比較している
・調査している
・相談している
・商品性を理解したうえで購入
・緊急時の備えを持っている
・損失回避傾向が弱い
こうした特徴を持った人は、消費者ローンの利用が少なめであるという傾向もある。金融トラブルを避けるためには、こうした点を意識しておくことが重要だといえそうだ。
ちなみに最も金融トラブル経験者が少なかった奈良県では、「老後の生活費について資金計画をたてている人の割合」が全国平均(34.9%)よりも3.5%高かったほか、「借入れ時に他の商品と比較した人の割合」も全国平均(54.0%)を4.1%上回っている。
金融リテラシーをしっかりと身に付けよう
将来的に「人生100年時代」を迎えるといわれている中、老後の生活費を確保するために資産運用を始めようという人も多い。しかし、許容できるリスクを超える可能性がある投資に手を出したり、詐欺被害にあったりすると、老後の生活に黄信号が灯る。
最初にも述べたが、こうした金融トラブルを回避するためには、金融リテラシーを身に付けることが何より重要だ。
金融リテラシーを高めるためには、金融に関する書籍を読んだり、金融に関するニュースをチェックしたり、資産運用の初心者向けセミナーに参加したりと、さまざまな方法がある。自ら能動的に動き、将来のためにしっかりと金融リテラシーを身に着けておこう。
文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)