ドコモ
(画像=yu-photo/stock.adobe.com)

NTTドコモが2020年12月に発表した格安料金プラン「ahamo(アハモ)」。手続きなどをオンラインのみとするなど低価格を実現するための工夫が話題になったが、このahamoがNTTドコモの今後の業績に強烈なダメージを与える可能性が、ささやかれ始めている。

国が通信各社にかけた圧力とは?

そもそもなぜNTTドコモは格安料金プランを発表したのか。背景には、2020年9月に発足した菅政権が、通信各社に対して料金引き下げの圧力を強めたことがある。

通信料金の引き下げは、菅政権の目玉政策だ。日本では携帯通信料の家計に占める比率が年々高まっており、国際的にみても欧州の先進各国と比べると料金水準が高い。一方で携帯各社の利益率は20%程度と高水準で、菅氏は以前から通信料金に問題意識を持っていた。

最終的に、このような圧力にNTTドコモなどの通信各社が折れ、NTTドコモはahamoを格安料金プランとして2021年3月から提供することを決めたわけだ。

NTTドコモのahamoの概要

それではNTTドコモが発表したahamoとはどのようなプランなのだろうか。

NTTドコモのプレスリリースによると、ahamoは「月間データ容量20GBを月額2,980円(税抜)で利用できる新たな料金プラン」で、新規契約事務手数料を無くし、細かい割引の条件なども極力減らしたという。NTTドコモがahamoを格安で提供できる理由の1つに、サービスの利用受付や問い合わせをオンライン対応のみにしたことがある。ドコモショップの維持費をahamoの料金設定の前提としないことで、料金を安くできたわけだ。

ahamoのターゲット層は20代の若者であることから、利用申し込みやお問い合わせなどもオンラインのみにしても大きな問題にはならないと、NTTドコモは見込んでいるようだ。

ahamoのユーザー拡大でドコモショップが消えていく?

NTTドコモが、低価格の通信プランを実現するためにこのような工夫をしたことは、菅政権にも評価される点であろう。しかし、ahamoがドコモショップの維持費を料金設定の前提としないようにしたことは、場合によってはNTTドコモを今後苦しめることにもつながる。

NTTドコモのこれまでの料金プランには、当然、ドコモショップの維持費なども含まれていた。しかし、もしahamoの利用者が20代のみならず30代以上の層にも広がれば、結果として現在のドコモショップを維持するための費用が足りなくなっていく。

そしてもしドコモショップが減っていけば、ウェブではなく実店舗で申し込みをしたい人のニーズを受け止めきれなくなり、これまでの高価格帯の料金プランの申込者が減る可能性が出てくる。これらの点がNTTドコモの業績を圧迫するかもしれないわけだ。

ahamoによる減収をほかの事業で補えるかにも注目

ほかにも、格安料金プランの提供による経営上の懸念点がある。格安料金プランの提供でNTTドコモの利益率は一定程度下がることが考えられるが、利益率が下がった分をほかの事業で補えるのかは不透明だ。

NTTドコモはスマートライフ事業にも注力しており、音楽や動画の配信やライフサポート、決済や保険に関わるサービスも提供しているが、このような領域ではライバルがすでにひしめいている。国内企業だけではなく、海外の巨大企業とも戦わなければならない。

そして先ほども触れたが、ahamoの利用者が広がれば広がるほどドコモショップの維持が難しくなっていくように、利益率の面でもahamoのユーザーが増えるほどNTTドコモの業績が圧迫されていく。NTTドコモの経営陣がいま、どのような心境かは分からないが、もしかするとあまり格安料金プランのユーザーが増えないでほしいと思っているのかもしれない。

利益が連続して落ち続けているNTTドコモ

NTTドコモの利益は、連続して減少している。2017年度は7,908億円、2018年度は6,636億円、そして2019年度は5,915億円まで落ち込んだ。つまり、2年間で約2,000億円も最終利益が減少した格好で、赤字経営ではないものの決して順風満帆な状況とは言えない。

そのような状況で、ahamoがNTTドコモにどのような影響を与えることになるか、今後注目が集まる。ユーザー数がどのように推移していくかは、ふたを開けてみなければ分からないが、思った以上に支持が広がれば、逆にNTTドコモを苦しめる結果となるかもしれない。

ちなみに、NTTドコモのライバルであるソフトバンクとKDDIも、2021年1月までにすでに格安料金プランを発表している。ソフトバンクもKDDIもデータ容量はNTTドコモと同じ20GBだが、KDDIは料金が2,480円と、3社の中で1社だけ500円安い。

NTTドコモの今後の業績のほか、3社による市場シェアがどのように変化していくのかについても、注目すべき点であると言えそうだ。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)

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