相模屋食料・鳥越淳司社長
(画像=相模屋食料・鳥越淳司社長)

〈ロボット活用で事業拡大の可能性、出来立てのおいしさ実現〉
食品向けロボット・IoT・AI展「フードテックジャパン」が11月25日~11月27日に幕張メッセで開催され、相模屋食料の鳥越淳司社長が「豆腐でもできるロボット活用!~多湿な水物現場での事例~」と題し、講演を行った。鳥越社長は、ロボットの導入は単に生産性の向上だけではなく、事業拡大の可能性につながることを強調した。

始めに、鳥越社長は「豆腐は伝統的な食品であり、業界ではロボット活用などより、何とか今までのものを守ることに陥ってしまっている。ロボットの活用は大手企業のやることだと思われているが、中小企業でもやれることがある。当社は、伝統食の豆腐を進化させることに取り組んでいる」と述べた。

この17年で売上高を約10倍に伸ばした同社だが、その成長の礎と、ロボット導入の経緯について鳥越社長は、「当たり前のことだが、おいしい豆腐を作ることだ。おいしい豆腐を軸に、新しいマーケットを広げること、破綻メーカーの救済・再建の取り組みを進めている。豆腐は平安時代からあるもので、ずっと改良が重ねられ、やりつくしたと言われることが多いが、その木綿、絹をおいしくしようと、出来立て、熱々でパックすることを考えた。そこでロボットを活用した」と話す。

そして、「豆腐は、熱々の状態で調整する。味が一番わかりやすいためだ。生産現場は、出来立ての豆腐がおいしいことを知っているが、消費者には、ボイル殺菌工程を経て、冷却したものが届く。ロボットを導入したのは、生産効率の視点ではなく、出来立てを実現したいと考えたからだ」とする。

しかし、ロボット導入を開始した約15年前は、ドライ状態ではなく多湿で、温度も高めである豆腐の工場の特性上、豆腐の製造ラインでロボットを導入することは困難だとされていた。しかし、「諦めずに、やりたいこと(出来立て、熱々の状態でパッキングすること)にロボットを合わせることで実現した」という。

通常、豆腐は凝固成形した後、切る、水さらし、パック詰め、ボイル殺菌、冷却――の工程を経る。

「豆腐は柔らかく、手作業でパック詰めする。そのため、豆腐をしめるという効果もあるが、熱さを冷ますために水にさらす。手で作業するために豆腐の温度を下げているのであって、ここでロボットを活用すれば、豆腐の温度を下げる必要はない」との発想で、豆腐を水にさらさずに、並べた豆腐の上からロボットがパックを被せる工程を実現した。

〈日持ち向上し全国供給が可能に、生産数は約5倍にアップ〉
それにより、出来立てのおいしさを実現できたといい、「食べてもらうとおいしいという声をいただく。一番大きな成果だ」という。加えて、時間当たりの生産数の向上(従来の約5倍にアップ)、省人化、ロス(われかけ)の削減――につながったという。

また、想定外の効果として、一般生菌が繁殖しにくい温度帯、従来の約5倍速いスピードでパックできるようになったため、雑菌が繁殖する時間が大きく低減されたことで、必然的に日持ちが向上したという。「現在は賞味期限を15日に設定しているが、180日まで伸ばすことも出来る」と話す。

さらに、日持ちが向上したことで、事業の広域化につながり、全国に供給できるようになった。合わせて、在庫期間の需給予測の必要性が一層増したため、日本気象協会との取り組みで、気象データを活用した需給予測を行うことで、ロス削減につなげていることを紹介した。

相模屋食料では、SDGsの活動として、ロス削減以外にも取り組みを推進しているとし、2020年6月には国連ニューヨーク本部で、スピーチを行ったことを報告した。

〈大豆油糧日報2020年12月1日付〉