「カルテル」とは?事業オーナーが知っておくべきカルテルの基礎知識
(画像=AtstockProductions/stock.adobe.com)

カルテルは大企業間の問題であり、自社には関係ないと感じている経営者が多いかもしれない。しかし企業規模の大小や業種に関係がなく、事業上のあらゆる行為で起こり得る事業リスクの一つだ。悪意はなくても自社が不法行為を起こしてしまわないようカルテルに対する知識を高めておくことが必要だろう。本記事では、カルテルがどのような行為でどのような場面で起こりやすいのか見ていこう。

目次

  1. カルテルとは?
  2. カルテルの5つの種類
    1. 1. 価格カルテル
    2. 2. 数量制限カルテル
    3. 3. 顧客・販路カルテル
    4. 4. 技術カルテル
    5. 5. 雇用・賃金カルテル
  3. カルテルは目的を問わない
  4. カルテルが起こりやすい場面
  5. カルテルで独占禁止法に違反するとどうなる?
  6. カルテルへのリスク対策
  7. 知らないうちにカルテルにならないよう要注意!
  8. 事業承継・M&Aをご検討中の経営者さまへ

カルテルとは?

カルテルとは、事業者が他の事業者と共同して価格や販売・生産数量、販路などを取り決め、市場での競争を自主的に制限する行為だ。本来自社製品を「どれだけ製造するか」「いくらで販売するか」は、自社だけで自主的に決めているはずだ。消費者に選んでもらうためには、競合相手よりも良質な製品やより安い価格で提供しようとするべきである。

こういった公正な競争は、市場の活性化のためにも重要だろう。しかし現実的には複数の事業者で共同し、販売価格や企画プランに関する料率などに一定基準を設ける取り決めなどがされていることもある。このような取り決めがなされると「公正な競争」が成立しなくなり、消費者に不利益を与えることになってしまう。

このように公正な競争を減殺、競争の基盤を侵害するような行為は「不公正な取引」として独占禁止法によって禁止されている。どのような形の申し合わせかにかかわらない。事業者間で何らかの合意があり、結果的にそれぞれが同一の行動をとれば、独占禁止法で禁止されているカルテルとみなされるため注意したい。

これは、日本国内だけに限らず世界の各諸国においても同様だ。日本では、1947年7月に独占禁止法が施行され公正取引委員会によって運営されている。公正取引委員会によると当法律の目的は、以下の通りだ。

「民主主義社会を支える経済基盤を形成するための措置の一環として、多くの事業者が自由な競争を通じて事業を展開できる体制を整えること」
出典:公正取引委員会

時代とともに変化する経済や産業構造などに適するよう、独占禁止法もこれまでに繰り返し強化・改正が行われてきている。しかし自由経済社会における「公正かつ自由な競争を妨げる行為を規制する」という目的は変わらない。

カルテルの5つの種類

近年では、価格や数量に関する合意だけでなくその他の内容に関する合意などについてもカルテルにあたるとして調査、摘発されることも増えている。そこでカルテルの種類についても知っておきたい。

1. 価格カルテル

価格カルテルは企業が同業他社と話し合うなどして共同で商品の価格を取り決める行為だ。標準価格や最低販売価格だけでなく、価格算定方式や割戻し値引きなどに関する合意なども該当する。近年では、自社で価格を決める際にAI(人工知能)やアルゴリズム(計算方法)を利用している企業もあるだろう。

例えば複数の企業が共通のアルゴリズムを使って各社の価格が同調することも考えられる。しかし公正取引委員会によると「価格が同調すると認識して使っていれば価格カルテルにあたる」との指摘もあるようだ。

2. 数量制限カルテル

数量制限カルテルは、生産量や出荷量、販売量などに関する取り決めをする行為だ。例えば複数の企業で生産量を取り決め共同で市場への供給量を制限するようなケースがある。製品の数量は、価格への大きな影響力を持つ。一般的に市場への供給量が減少すれば価格が上昇し消費者に不利益を与えることになる。

3. 顧客・販路カルテル

取引先や販売地域に関する取り決めを行う行為を「顧客カルテル」「販路カルテル」などという。例えば顧客争奪の禁止や取引先の専属登録制、市場分割などの制限を取り決めるような行為だ。これらは、市場における競争を実質的に制限することになり禁止されている。

4. 技術カルテル

技術カルテルは、生産その他の事業活動に用いる技術の開発や利用を制限することを共同で取り決める行為である。技術は、提供する商品およびサービスにおいて品質や価格に大きな影響を及ぼすものだ。当然重要な競争手段であり複数の事業者間で開発・利用する技術を制限することは、市場での競争を妨げることになる。

一方で価格や数量に関するカルテルなどと異なり競争制限効果が高いとはいえず、技術をめぐるすり合わせが摘発対象となることは一般的ではない。しかし近年欧州でフォルクスワーゲンなど自動車大手による排ガスの浄化技術をめぐる合意がカルテルと認められるなど、競争政策も新たな領域に入っている傾向だ。外国の規制だからと看過することのないように注意しておこう。

5. 雇用・賃金カルテル

近年、人材獲得市場において決定されるべき取引条件を複数の事業者間で共同して人為的に決定する行為が、雇用・賃金カルテルとして問題視されている。例えば以下のような行為は注意が必要だ。

  • 他社との間で従業員の給料などの雇用条件を具体的な数値や幅で合意する
  • 福利厚生の内容について合意する
  • 従業員の勧誘や引き抜きをしないように合意するなど

米国の大手IT企業間で相互にエンジニアの引き抜きを禁止する取り決めが問題となったのを発端に、日本の公正取引委員会でも「人材と競争政策に関する検討会」の報告書を公表した。そのなかで従業員やフリーランスなどの人材獲得競争に関して引き抜き禁止の取り決めや賃金調整をした場合、独占禁止法上問題となる旨明記されている。

人事担当者間での交流や情報交換などの際には、内容に配慮が必要だろう。

カルテルは目的を問わない

独占禁止法は、事業者が互いに公正な競争を行うことで消費者に良質・廉価な商品を提供することが目的だ。そのため公正な競争を阻害する行為を禁止している。しかし企業の中には「過当競争」となって質の低下や共倒れの発生が危惧されるケースもあるだろう。質の低下や共倒れが発生すると結果的に消費者の利便性を損なう可能性もある。

このような事態を防ぐ目的として同業者間で価格などの足並みをそろえようとする行為を「防衛的カルテル」と呼ぶ。仮に防衛的カルテルだったとしても独占禁止法違反とみなされるケースはあるため、十分に注意しておきたい。また環境問題や消費者利益を考えて行った行為もカルテルとされたケースもある。

近年オランダで鶏肉の生産業者とスーパーが飼育環境に配慮した鶏肉のみを取り扱う合意をしたことが独占禁止法違反と認定された。環境や健康に配慮した製品の提供、つまり消費者利益が目的ではあるが割高な環境配慮の商品を買える消費者は限定的で公平な消費者利益とはならないという見解だ。このような事例は、日本の事業者にも起こり得ると気を引き締めておきたい。

カルテルが起こりやすい場面

気を付けたいのが「自社でカルテルをしたつもりがないのにカルテルに該当する場合もある」ということだ。例えば業界団体の懇親会などの場で以下のような話をする際は注意しておきたい。

  • 価格を上げなければやっていけない
  • ○○円くらいは値上げが必要だ

なぜなら単なる立ち話で具体的な合意、賛成が行われていなくても後日各社が同じような値上げ行動をとるようなことがあると、「暗黙の合意」として違反となる恐れがあるからだ。また業界団体に所属している場合には、業界団体の会合等で概括的な需要見通しを作成・公表したり技術動向や経営知識等に関する情報の収集・提供したりすることもあるだろう。

その際に基準価額や販売価格、生産量などに関する情報交換をするケースがあるかもしれない。しかし業界団体で行っている場合でも直近の各社における製品ごとの生産量、出荷量、販売額等を報告し合うことは危険だ。場合によっては、カルテルと認定され独占禁止法違反となるおそれがある。なにげない場面のなにげない事業上の会話によってカルテルとされないように注意しておこう。

カルテルで独占禁止法に違反するとどうなる?

万一、自社の行為がカルテルに該当し、独占禁止法違反となってしまうとどうなるのだろうか。違反すると「課徴金」を支払わなければならない。課徴金の金額は、違反行為に係る期間中の対象商品、役務の売上額、購入額に事業者の規模に応じた算定率を掛けて計算される。

過去には、中小企業でも数億円に及ぶ課徴金の支払いを命じられたケースもある。その他違反事実が認定されれば取引先や消費者からの損害賠償請求や株主からの株主代表訴訟提起など、さまざまなリスクへと飛び火してしまう。何より自社に対する信用喪失につながることが大きなリスクともいえる。

カルテルへのリスク対策

リスク対策の一環として「適用除外制度」について知っておこう。独占禁止法では、独占禁止法以外の政策目的を実現するために一定の場合に関係省庁への届け出などの必要な手続きを行うことでカルテルを認める「適用除外制度」を設けている。例えば小規模事業者の集まりである組合などによる行為、特許権等知的財産権の行使、再販売価格維持行為などだ。

また個別の法律により適用除外を定めているものもある。自社の業務の内容や行為が適用除外制度の範囲に該当するかどうか、公正取引委員会や専門家に相談することが大切だ。

知らないうちにカルテルにならないよう要注意!

事業者が他の事業者と共同して価格や販売・生産数量、販路などを取り決める行為は、カルテルとして独占禁止法で禁止されている。今回紹介したいくつかの例のように近年は、カルテルの対象が雇用や技術、環境対策などに及んだり消費者利益のための行為もカルテルとみなされたりするケースも少なくない。

思いがけず自社がカルテルに関与したと調査対象にならないようにあらためてカルテルについての知識を高め、法令遵守に努めて欲しい。

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文・續恵美子(日本FP協会認定CFP(R))

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