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(画像=スペイン産牛肉・羊肉セミナーの様子)

スペイン大使館商務部は10月27日、東京都港区の八芳園で、2020年1月に輸入解禁となったスペイン産牛肉と羊肉のセミナーを開き、業界関係者など約60人が参加した。

当日は、新型コロナウイルス感染症の影響で来日は叶わなかったものの、スペイン産牛肉の専門職間連携団体であるPROVACUNO(プロバクーノ)のホセ・ラモン・ゴドイ国際部長、羊肉生産加工者協会INTEROVIC(インターオビック)のトマス・ロドリゲス・セラノ会長がビデオでプレゼンテーションを行い、スペイン産牛肉・羊肉の生産背景や、その優位性を紹介した。

プレゼン後には、ジョセップ・バラオナ・ビニェス氏(レ・ストゥディ シェフ)が登壇し、スペイン産牛肉・羊肉のおすすめの調理方法や、魅力を語った。リブロースと牛タンが試食提供され、参加者たちはスぺイン産牛肉の味わいを確かめた。

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(画像=試食提供されたリブロースと牛タン)

〈ゴドイ国際部長EU圏外含め輸出量伸長」厳格なヨーロッパ生産モデルを実施〉

プロバクーノは、スペイン産牛肉に携わる全産業をカバーする専門職間連携団体で、牛肉の生産部門、加工部門、流通部門といった主要な団体が統合されている。

現在のスペイン産牛肉の生産規模は、飼養頭数は650万頭、牛肉生産量は年間約70万tに上り、そのうち約22万tを輸出している。対日輸出については、2020年1月に輸出解禁となったことを受け、1~7月までですでに80t以上の牛肉が輸出されている。

スペインの肉牛業の規模は、同国の農業総産出額の6.3%、畜産総産出額の17.5%を占め、畜産分野のなかでは第2位の規模を誇る重要なセクター。EUでは第5位、世界では第18位の牛肉生産国で、牛肉輸出国としてはEUで第6位、世界では第14位となっている。

現在、スペインはBSEリスクを無視できる国(清浄国)として承認されている。2016年5月にOIEによって承認された後、16年7月にはEUによって承認され、世界各国にスペイン産牛肉を輸出するための交渉を進めることができるようになった。

2014年に12.7万tだった輸出量は、2019年には22.2万tと着実に増加傾向にある。現在90カ国に輸出しているが、主にEU圏内への輸出が多いものの、近年、EU圏外への輸出量が伸びているという。スペイン産牛肉は「ヨーロッパ生産モデル」の下で生産され、
▽アニマルウェルフェアや環境に配慮した肉牛の飼育管理
▽飼料の管理と全行程を通じたトレーサビリティ
▽食品安全性や品質管理といった加工プラントの管理
▽すべての月齢で抗生物質・ホルモンの投与禁止
――といった世界のなかでも厳格な生産モデルが実施されている。

と畜月齢に応じた多様な製品群も特徴のひとつだ。12カ月齢未満の子牛肉(テルネラ・ホーベン)、月齢12~24カ月の若牛肉(アエェホ)、約24カ月齢の成牛肉(バクーノ・マヨール)など多様な製品を展開している。

スペインには30種類以上の固有の肉牛種が存在しており、スペイン産牛肉の大半はこうした固有種および、リムーザンやシャロレーといったヨーロッパの肉用牛をかけ合わせた品種となる。スペイン産牛肉の90~95%の肉牛が穀物を飼料としたグレイン・フェッドとなる。栄養価の高いトウモロコシ、大麦、オーツ麦、小麦、大豆などを与えることで、柔らかく、低脂肪、繊細な風味な肉質も特徴という。

農場や加工プラントにおける衛生、安全管理も重要視している。農場では個体識別で牛の健康管理、動物福祉に役立てている。生産工程を通じた徹底した管理が、最終的に健康な牛と安全な食肉の生産つながっている。こうして生産されたスペイン産牛肉は、世界の市場に出回っているなかでも、最も高品質な牛肉のひとつといえる。ゴドイ部長は、「機会があったら、実際にスペイン産牛肉をぜひ味わっていただきたい」と呼びかけている。

〈畜産日報2020年9月29日付〉