河端 徽岳社長(51)
河端 徽岳社長(51)(画像=ビジネスチャンス)

アース(石川県野々市市)
河端 徽岳社長

アースグループ(石川県野々市市)は北陸三県で、外食を中心に店舗展開するメガフランチャイジーだ。店舗数は45店舗にのぼり、グループ全体の年商は約25億円に達する。建築型枠業から始まった同社を、北陸を代表するメガジーに育て上げた河端徽岳社長を取材した。(※2020年10月号「メガフランチャイジーの経営哲学」より)

河端 徽岳
河端 徽岳
かわばた・きがく
昭和43年生まれ、金沢高校卒業。運送会社勤務を経て、建築業界に転身。平成元年、河端組を個人創業。平成5年、有限会社アースを設立し、代表取締役に就任。以降、フランチャイズビジネスを中心に業容を拡大し、現在に至る。

─北陸エリア一帯で、飲食業や介護、美容やクリニックなど、様々な事業を展開されています。ただ創業は、建築型枠の仕事だったそうですね。

河端 勤めていた会社で給料の未払いがあり、それで1989年に独立し、今の会社の前身である河端組を創業しました。フランチャイズに加盟したのは22年前、選んだのはコンビニでした。以降、少しずつFCビジネスの方に軸足を移してきました。

─慣れ親しんだ建築業をやめて、FCビジネスの方に切り替えたのはなぜでしょうか。

河端 建設業界には独特の風習があって、どんなにがんばって良い仕事をしても代金を満額もらえるということはほとんどありません。要は上前を撥ねられるわけです。こんな馬鹿らしいことはないですよね。性格的にどうもこれに馴染めず、いずれ業界から足を洗おうと考えていました。じゃあ何をするか。私としては人に喜んでもらえる、あるいは感謝されるようなビジネスをやりたかった。ちょうどコンビニが石川県に出店を始めた頃で競合も少なく、これなら色んな方に喜んでもらえるのではないかと思ったのです。

─しかし、現在運営されている店舗の中にはコンビニはありません。

河端 出店した当初は周りにライバル店がなかったので、売上はものすごく良かったんです。しかし2年目になると、大手のチェーンが次々に新店を出してきたため、あっという間に売上が落ちてしまった。その時に「コンビニは飯を食えるビジネスではない」と感じました。それで外食に方向転換したんです。最初に加盟したのは「かつや」。これは私自身が当時よく利用していて、非常にいいなと思っていたのです。そこから主に外食関係を中心に、店舗を増やしてきました。

─フード事業としては、「かつや」を始め、「海鮮居酒屋はなの舞」「居酒屋さかなや道場」「京都勝牛」など、様々なブランドに加盟されています。ブランド選びのポイントは何でしょうか。

河端 流行りものはやらない、これだけは徹底しています。実は昔、流行りものに手を出して大失敗したことがあるんです。スープカレーの業態だったんですが、やってみるとビジネスモデルが欠陥だらけで、全然売上が上がらない。商品を提供するまでにやたらと時間がかかってしまっていたのです。エリア本部の権利まで取得したのですが、すぐにダメになり、危うく当社も潰れかけました。今では良い経験をしたと、前向きにとらえるようにしています。

▲飲食でメガフランチャイジーへの歩みを本格化
▲飲食でメガフランチャイジーへの歩みを本格化(画像=ビジネスチャンス)

─グループ全体で45店舗を運営するまでになりました。

河端 一部、自分たちで作ったブランドもありますが、大半はフランチャイズです。私はフランチャイズに加盟することは、時間を買うことだと思っています。業態を自分たちの力で開発るのは楽しいし、やりがいのあることだとは思いますが、時間やコストがかかるばかりか、苦労して開発しても成功する保証はどこにもありません。一方でフランチャイズは、すでに成功したビジネスモデルを時間をかけずに手に入れることができる。社員を成長させるための環境をすぐに準備できるという点でも、とても優れた仕組みだと考えています。

─河端社長は「人を活かす経営」を経営方針として掲げ、社内研修やスタッフの教育にかなり力を入れているそうですね。

河端 実は個人事業主として建築の仕事を始めた翌日、交通事故に遭って 3カ月間も入院することになってしまいました。その間、病院の公衆電話を使ってひたすら営業をかけ、空いた時間は本を読み漁りました。その時に読んだナポレオン・ヒルの本から、人を活かすことの大切さを学んだのです。自分に何かがあっても、ちゃんと回る会社を作りたい。その一心から、教育に力を入れるようになりました。

─フード以外に介護やエステ、接骨院や美容室、美容メーカーや買い取りなど、様々な事業を手掛けています。

河端 グループ会社ではクリニックの経営も行っていますし、最近では不動産も始めました。

─事業の多角化は、何かあったときのリスクヘッジにもなりますね。

河端 そのつもりでうちも取り組んできたのですが、今回の新型コロナにまつわる一連の騒動で、色々な事業をやるだけではリスク分散は図れないのだということを学びました。一見、うちは色々な事業をやっているので、リスク分散ができているように見えます。フード事業も居酒屋やファストフードなど、複数の業態があります。しかし、よく見るとどれもリアル店舗がないと売上が上がらないものばかりなのです。ですから今回のように、業種業態に関係なく、店舗にお客様を入れることができないような事態が発生した場合は、軒並み売上が落ちてしまうのです。実際、4月、5月は赤字でした。

─外食業界では、新たな収益源としてデリバリーやテイクアウトに取り組む動きが盛んに見受けられます。

河端 今後はWebも含めて、色々な販売チャネルを考えていかないといけないと思っています。ただフランチャイズの場合、本部のレギュレーションがありますので、加盟店側で勝手に何かを始めることはできません。もちろん、我々の方からいろいろな意見を言わせてもらうこともありますが、基本的には本部にしっかり引っ張っていってもらいたいと思っています。

▲今後、力を入れていくという「小木曽製粉所」
▲今後、力を入れていくという「小木曽製粉所」(画像=ビジネスチャンス)

─様々なブランドを運営していますが、これから伸ばそうと考えている業態はどれですか。

河端 どのブランドもチャンスがあれば店舗を増やすつもりですが、あえて挙げるとすれば信州そばの「小木曽製粉所」です。すでにエリア権も取得しているので、これから積極的に店舗を増やしていく計画です。今はまだ年商25億円の会社ですが、いずれは1000億円を売り上げる、そんな会社にしたいと考えています。