継承
(画像=PIXTA)

「会社を継ぐ」ことについて悩んでいる経営者は多いだろう。2代目として息子に継がせるべきか。しかし、それでうまくいくのか。修行に行かせたほうがいいのか。従業員などの他人に会社を継がせることができるのか。

この記事では、会社を継ぐ方法の選択肢とそれぞれのメリット・デメリット、後継者の選択肢と注意点、税金などについて詳しく解説していこう。

目次

  1. 会社を継ぐことは中小企業では大きな課題
  2. 会社を継ぐことに失敗するとどうなるか
  3. 中小企業の廃業数は増えている
  4. 会社を継ぐ選択肢とそれぞれのメリット・デメリット
    1. 後継者へ継ぐ
    2. 上場
    3. M&A
  5. 後継者の選択肢とそれぞれの注意点
    1. 息子や娘・親族
    2. 従業員
  6. 会社を継ぐ際の税金は?
    1. 事業承継税制(特例措置)の内容
  7. 会社を継ぐための計画は早めに立てよう

会社を継ぐことは中小企業では大きな課題

一般的に中小企業では、会社を継ぐことは大きな課題となる。大企業であれば候補者が多いため、代表取締役の交代はスムーズに行われることが多い。また、経営も代表取締役のみに依存しない体制がすでに構築されているため、代表取締役が変わっても経営が大きく変化することはあまりない。

一方で多くの中小企業では、会社の経営は代表取締役に大きく依存していることが多いだろう。社長が若い時に起業した会社なら、ワンマン経営になっているケースも多い。会社のさまざまな機能が社長なしでには動かせないようになっているため、社長の交代は会社に大きな混乱を招くことがある。

したがって、中小企業においては会社をどのように継いでいくかについて十分に検討し、慎重に実行に移していくことが必要になるだろう。経営者が倒れてしまってからでは、経営者の交代をスムーズに行うことは困難になる。経営者が元気なうちに、会社を継ぐことについて取り組んでいくことが重要だ。

会社を継ぐことに失敗するとどうなるか

会社を継ぐことに失敗する、あるいは会社を継ぐことについて取り組まなかった場合、会社は存続することができず、廃業せざるを得なくなる。廃業の際は、資産をすべて売却し、負債を支払い、清算の手続きを行うことになる。

廃業の際は、バランスシートに計上される有形の資産が失われるだけではない。技術やノウハウ、ブランドなどの無形資産も失われることになる。これは、その企業にとってだけでなく、日本全体にとっても大きな損失になる。

経営者本人にとっても、廃業は非常に大きな痛手になる。若い頃から手塩にかけて育てた会社が、なくなってしまうのだ。会社を継ぐことができないので仕方がないが、精神的なダメージは計り知れない。

中小企業の廃業数は増えている

中小企業の廃業数は増えている。下のグラフは、中小企業庁『2019年版中小企業白書』に記載されている休廃業・解散件数の推移だ。

【休廃業・解散件数の推移】

THE OWNER編集部

出典:中小企業庁『2019年版中小企業白書』

中小企業の廃業が、年々増加していることがわかる。

中小企業経営者の平均年齢も高齢化している。下のグラフは、同じく『2019年版中小企業白書』の、年代別に見た中小企業の経営者年齢の分布である。

【年代別に見た中小企業の経営者年齢の分布】

THE OWNER編集部

出典:中小企業庁『2019年版中小企業白書』

1995年は、中小企業経営者の年齢で最も多いのは「47歳」だった。それが、2018年には「69歳」になっている。

このように、中小企業経営者が高齢化することによって、廃業が増加傾向にあるのが現状だ。会社を継ぐことを真剣に考えなければいけない時代になっていると言えるだろう。

会社を継ぐ選択肢とそれぞれのメリット・デメリット

それでは、会社を継ぐ方法について詳しく見ていくことにしよう。まず、会社を継ぐ方法の選択肢と、それぞれのメリット・デメリットを紹介する。会社を継ぐ方法の選択肢は、

・後継者へ継ぐ
・上場
・M&A

の3つがある。

後継者へ継ぐ

「会社を継ぐ」という場合、「息子などの子どもに継がせる」ことを思い浮かべる人が多いだろう。実際に、会社を継ぐ選択肢として「後継者へ継ぐ」ケースが最も多い。息子などの子ども以外に、会社の役員や従業員などに継がせることも検討の余地がある。

後継者に会社を継がせる際は、

・経営者が保有している株式を後継者に譲渡する
・後継者を経営者として育成する
・引き継ぎを行う
・取引先に対して後継者を紹介し受け入れてもらう
・個人保証などの負債を引き継ぐ

などが必要になる。

・後継者へ会社を継ぐことのメリット
後継者へ会社を継ぐことのメリットは、第一に「経営者自身が安心できること」だ。よく知った子どもや親族・従業員なら、信頼できるだろう。また、「株主や役員・従業員、取引先などからの理解を得やすい」こともメリットと言える。

・後継者へ会社を継ぐことのデメリット
後継者へ会社を継ぐことのデメリットは、第一に「後継者を探すことが難しい」ことが挙げられる。近年は子どもの数自体が少ないため、子どもが後継者にならないケースは多い。適任と思われる子どもがいる場合でも、自分がやりたい仕事を自由に探すことができる昨今では、子ども自身が会社を継ぐことを希望しないことも多い。

後継者候補を探す範囲を役員・従業員まで広げれば、候補者数は増える。それでも、適任者が見当たらないこともあるだろう。とはいえ、社外の人を経営者として招くとなると、従業員などが納得しないケースもある。

子どもなどの親族以外に会社を継がせる際に問題となるのが、経営者が保有する株式の譲渡方法だ。子どもなら、贈与や相続によって株式を譲渡することができる。しかし他人が継ぐ場合は、後継者が株式を購入するための資金を用意できないケースも多い。

加えて、後継者に会社を継がせるためには、長い時間をかける必要がある。候補者を探すことや、本人の承諾を得ること、従業員や取引先に理解してもらうこと、後継者として育成すること、経営者の仕事を引き継ぐことには、それぞれに長い時間がかかる。

会社を継がせようとしている間に経営者が倒れてしまうこともあり得るため、後継者に会社を継がせようとする場合は、早めに取り組みを開始することが大切だ。

上場

会社を継ぐための選択肢には、「上場」もある。上場すれば、融資を受ける際の経営者による個人保証や、個人資産の担保提供は不要になる。また、外部から優秀な人材を集めることも、非上場の時と比較して容易になる。そのため、後継者を見つけやすくなるのだ。

ただし、上場するためには証券取引所による厳しい審査を通過しなければならない。ある程度以上の規模の会社でないと、上場は難しい。

・上場のメリット
上場のメリットは、前述のとおり後継者を広く探すことができることだ。上場企業は、就職希望者が多い。優秀な人材を中途で採用することもできる。選択肢が広がれば、その分後継者として適任な人材が見つかる可能性が高くなる。

上場を通して役員や従業員が成長し、後継者としてふさわしい能力や資質を発揮するようになることもある。上場までのプロセスでは、会社の管理体制を整備するなど多くの変更を行っていかなければならないため、会社運営に関して役員・従業員が学ぶための良い機会にもなる。

・上場のデメリット
上場のデメリットは、一定以上の規模でないと証券取引所の審査を通過できないことだ。中小企業のなかでも比較的規模が大きな企業でないと、上場は難しいだろう。

M&A

M&Aも、会社を継ぐための方法の1つと言える。M&Aとは、会社や事業を別の会社に売却することだ。子どもや従業員など身近な人間のなかから後継者を選ぶものではないので、「会社を継ぐ」ための方法としては違和感を覚えるかもしれないが、少なくともM&Aによって会社は廃業せず、存続することになる。

・M&Aのメリット
M&Aの第一のメリットは、会社を継ぐために必要となる期間が短いことだ。子どもや従業員を後継者にする場合は、後継者探しや育成、引き継ぎ、周囲の理解などのために長い時間をかけなければならない。それに対してM&Aなら、買収を希望する会社が見つかり、売却価格に双方が合意するだけで済む。一般に、M&Aに必要となる期間は3~6ヵ月程度と言われている。

M&Aによって会社を売却した場合は、売却代金が経営者に入ってくる。このことも大きなメリットと言えるだろう。手に入れたお金を、その後の自分の人生を豊かにするため使うことができるからだ。

M&Aを行うと買収された会社が大手の傘下に入り、それまでよりも発展することもある。一般的に、M&Aによって会社を買収するのは大企業だ。経営資源が豊富な大企業の子会社となることにより、業績が上向く可能性は高いのだ。従業員の給与や福利厚生が向上する可能性もある。

・M&Aのデメリット
M&Aのデメリットとして挙げられるのは、会社の買い手が見つからないケースがあることだ。業績が低迷している会社の場合、買い手はなかなか見つからない。仮に見つかったとしても、提示される売却価格が低いため合意に至らないことが多い。買い手がなかなか見つからないと、M&Aにおいても1~2年の期間がかかることがある。

また会社を売却した後に、従業員の雇用が継続される保証はない。買収する会社によっては、買収後に従業員の雇用条件を変更する可能性もある。M&Aによって会社を継ごうと思う場合は、売却後の従業員の処遇について十分配慮する必要があるだろう。

後継者の選択肢とそれぞれの注意点

次に、後継者の選択肢とそれぞれの注意点を見ていこう。

息子や娘・親族

会社を継ぐことを考える場合、後継者候補として真っ先に浮かぶのは息子や娘、あるいは親族などだろう。手塩にかけて育てた会社を、血を分けた子どもや親族などが継いでくれれば、経営者として嬉しいはずだ。また子どもや親族が後継者となる場合は、従業員や取引先などからの理解も得やすい。

・遺産相続に注意が必要
息子や娘・親族などに会社を継がせる場合は、遺産相続の問題に注意が必要だ。複数の子どもがいて、その中の1人に会社を継がせる場合は、他の兄弟姉妹と遺産相続における不公平が起こらないようにしないと、相続トラブルに発展するおそれがある。

株式や会社の株式などの事業用資産をどのように相続するかは、よく問題になる。会社のことを考えれば、会社を継ぐ子どもに事業用資産のすべてを継がせるのが理想だ。経営に関係のない兄弟姉妹に事業用資産を継がせると、会社の経営に支障をきたす可能性があるからだ。

しかし相続人が複数いる場合には、それぞれが法定相続分の遺産を相続する権利がある。兄弟姉妹が3人いる場合は、それぞれが3分の1ずつを相続する権利を持っている。したがって、事業用資産を特定の子どもに集中させようとする場合は、それなりの工夫が必要になる。

たとえば、後継者とならない子どもには無議決権株式を相続させる、あるいは個人的な預貯金や不動産などを別に用意しておくなどの方法がある。相続の方法については、遺言書にしっかり明記しておく必要がある。

従業員

会社の後継者として、従業員も有力候補となる。適任の人材がいるなら、経営者としても安心であり従業員や取引先の理解も得やすいだろう。

・従業員は株式の対価を用意できないことが多い
従業員を後継者にしようとする際に問題になるのは、従業員が譲渡される株式の対価を用意できないことだ。中小企業の後継者となるためには、多くの場合先代経営者の株式を承継することが必要になる。しかし、従業員に対して遺産を相続することはできないため、対価を支払ってもらう必要がある。この対価を、従業員は用意することができないことが多いのだ。

・個人保証や担保を変更できないことがある
中小企業の経営者の多くは、金融機関から融資を受けるため、個人保証や個人資産の担保提供をしている。個人保証や個人資産の担保提供については、会社を後継者に継ぐ場合は、後継者に変更する必要がある。

ところが、後継者が従業員の場合は金融機関が変更を認めないケースが多い。また、個人資産の担保提供をしようとしても、そもそも従業員がそのような資産を所有していないことのほうが多い。

会社を継ぐ際の税金は?

会社を継ぐ際に相続税・贈与税の猶予を行う「事業承継税制」は、2018年度に大幅に改正され、これまでの「一般措置」に加えて「特例措置」が新設された。事業承継税制(特例措置)は、猶予の条件が大幅に緩和され、後継者が会社を継ぎやすいようになっている。

事業承継税制(特例措置)の内容

事業承継税制(特例措置)の内容は、以下のとおりだ。

・納税猶予の対象
これまでの一般措置では、納税猶予の対象は株式数の3分の1まで、相続税は80%までと上限が設けられていた。それに対して特例措置では上限が撤廃され、すべての株式および相続税の100%について納税猶予が認められる。

・税制の対象
これまでの一般措置では、事業承継税制の対象は1人の先代経営者から1人の後継者への贈与・相続のみだった。それに対して特別措置では、親族外を含む複数の株主から、最大3人までの後継者への承継ができる。

・雇用確保条件
これまでの一般措置では「雇用確保条件」が定められており、「5年間で平均8割以上の雇用確保を維持」できなければ、納税猶予は打ち切りとなっていた。それに対して特別措置では、未達成でも猶予を継続することができるようになった。

・後継者が廃業や売却を行う際の条件
これまでの一般措置では、承継時の株価を基に相続税が計算されたため、過大な税負担が生じることもあった。それに対して特別措置では、廃業・売却時の株価を基に相続税が計算されることとなり、承継時の株価との差額は減免されることになった。

ただし、事業承継税制(特別措置)の適用を受けるためには、「事業承継計画」を提出することが前提となっている。

会社を継ぐための計画は早めに立てよう

会社を継ぐことは、中小企業にとっては大きな課題だ。手塩にかけて育てた会社を存続させるためには、後継者を見つける、あるいはM&Aを実施するなどの具体的な行動を起こす必要がある。

会社を継ぐ際、事業承継税制(特例措置)の利用は大きなポイントとなるだろう。会社を継ぐ計画をしっかりと策定し、実行に移していくことが重要だ。

文・THE OWNER編集部

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